表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第4章 偽物

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

168/746

4-13.あるコスプレイヤーの死

 魔法少女シャイニーフォースの特設コーナーには、既製品ながら高価で出来のいい衣装が置かれている。手作りの今の衣装と何が違うのか観察していたところ、高校生くらいの女の子が近づいてきた。

 その子は、高校生には手が出ないような値段の衣装を手に取った。買うのだろうかと訝しんだ瞬間に、怪物の咆哮が聞こえた。


 悲鳴と破壊の音。避難を呼びかけるアナウンス。


 逃げないと。本当に怪物が出るなんて。しかもこんな近くに。どうして? わたしが悪いことをしたから?

 ありえないと自分に言い聞かせながら、自身が犯した罪と怪物の出現に関連があるのではとの疑念が心にこびりついた。


 それから、よぎった思いはもうひとつ。


 本物の魔法少女が来てくれる。それを観察すれば、わたしの衣装のクオリティも上げられるかも。


 逃げないといけないのは理解しつつ、足は自然と怪物の方に向かっていった。

 だって。仕方ない。言うとおりにしないと。衣装のことでなにか成果をあげないと、彼は殴るのだもの。


 怪物は奇妙なものだった。手足がついていて、ポーズを取れるタイプのマネキン。顔は元々のっぺらぼうだけど、そこに怪物の顔が浮かび上がっていた。

 着ているのは、彼女も少しは知っているスマホゲームのキャラの衣装だ。女性向けの、イケメンがたくさん出てくるやつ。


 格好いい王子様キャラの服を着た怪物は、黒いタイツの集団をけしかけて逃げ遅れた人間を探させ、自身は気の向くままに店内を破壊していて。


「あ――」


 おそらく怪物は、彼女の存在に気づいてすらいなかった。

 ただ、怪物が力強く振った腕がトルソー、つまり胴体のみの簡易的なマネキンに当たった。


 知らないアニメの知らない女子制服を纏ったそれが彼女の頭部に直撃。その勢いのまま首を折り、彼女は死んだ。



――――



「ねえラフィオ! こいつら数多いんだだけど!」

「これまでと変わらないと思うけどな!」

「じゃあ! なんでわたし倒すのに苦労してるのかな!?」

「弓で一体一体倒していくのが面倒だからだ!」

「そっかー!」


 ラフィオは店内の少し背の高いハンガーラックの上に飛び乗ってバランスを取りながら、自身の上に乗せているハンターに黒タイツどもを射抜かせていた。


 弓使いの仕事というのは、こうやって敵兵を一体ずつちまちま殺していくことなんだろうけど、ハンターの性格からすれば退屈極まりないだろう。

 豪快というか、勢いで生きてる子だし。フィアイーターに止めを刺すことも多い。それも、仲間たちがコアを探すというアシストあってのことだけど。


「ねえ! フィアイーターはどこ!?」

「こっちの方だ!」

「見えない!」

「棚の向こう! それより目の前の敵をなんとかしろ! ライナーたちもすぐ来るから!」

「うん! ねえラフィオ! なんかあそこに、わたしのと同じ服があるんだけど!」

「だから! 余所見しない!」


 黒タイツたちは、こちらを脅威とみなして排除を試みようとしていた。具体的には、ラフィオが乗っているラックを倒すか登るかを試みていた。


 ここはコスプレというものを趣味にしている人に向けての店だ。魔法少女のコスプレをする趣味の人間もいるだろう。

 例の窃盗団みたいな輩がコスプレをするのは勘弁してほしいが、善人たちが憧れの念を抱いて格好を真似するなら、魔法少女への好感の表れとして歓迎すべき。


 だからこういう店は守らないといけないのに、なぜだかキエラはここを襲った。


「フィー!」

「ああくそ。邪魔だ!」


 上に登ってきた黒タイツを蹴落とした瞬間、足元がぐらついた。他の黒タイツが複数人でラックを押し倒そうとしたからだ。


「ハンター! 跳ぶぞ!」

「うん!」

「あとお前は黒タイツをさっさと全滅させろ!」

「でもー! 数が多いんだもん! フィアイーター殺せばこれも全部消えるよね!?」

「そうだけどな!」


 別のラックに乗り移りながら会話する。


 ハンターは跳んでいる途中のラフィオの上で弓を放つ。たまたまふたり重なった位置に立っていた黒タイツを、まとめて射抜いて殺した。

 そうとも。ハンターは頑張ってる。


「とりあえずフィアイーターの所まで行くか! 足止めくらいはできるはず!」

「うん! ボスが危なくなったら黒タイツたちも集まってくるよね!」

「それはそれで困るけどね!」


 囲まれたら、ラフィオとハンターでは苦戦するから。


 棚の上を次々に飛び移り、フィアイーターの方に接近していく。ラフィオはフィアイーターの気配を察知できるから、方向は間違っていない。棚で隠れているけれど、そこに確かにいる。

 じゃあ、ラフィオがするべきことはなにかと言えば。


「潰れろフィアイーター!」


 そいつが隠れている棚に飛び移りながら、大きく蹴る。できれば棚ごと倒したかったけれど、床に固定されているために無理だった。その代わり、棚に置かれているコスプレ用の小物がバラバラとフィアイーターに落ちてきて、刺さる。


「フィアアアアァァァアァァ!?」


 焦ったようなフィアイーターの声。なんか、王族みたいな高そうな格好を着たマネキンが、今回のフィアイーターか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ