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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第4章 偽物

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4-12.初めてのコスプレ

 少し後、店内は悲鳴に包まれることになった。


 フィアイーターが黒い集団、サブイーターを展開して、周囲の人間や商品に襲いかかったから。


 店内にいるのは、普段からあまり鍛えてなさそうな女がほとんど。怪物に攻撃されれば大怪我は間違いない。


 誰もが避難に走る中で、キエラとティアラは衣装を手に店の隅の目立たない所に移動した。

 そして、今着ている服を脱ぎ始める。探せば更衣スペースもあるのだろうけど、面倒だ。


 どうせすぐに魔法少女たちが来る。ラフィオもだ。それまでに早く着替えて、この格好を見せないと。


「ふふっ」


 下着姿のティアラが小さく笑った。


「どうしたの?」

「友達とこんなことするなんて、初めてだから」

「そう。ティアラが楽しそうでよかったわ」

「ねえ。キエラの下着、すごくかわいい」

「そう? 普通だと思うけど……」


 そう言うティアラの身に着けているのは、安物の真っ白な下着。それも洗濯を繰り返してヨレヨレになっている。


「ティアラもおしゃれしないとね。いつか下着も手に入れましょう。コスプレするのだもの。中身も綺麗にしないと」

「ええ。ええ!」


 ティアラが嬉しそうな顔をしながら頷くのを見て、キエラも笑顔になる。

 友達の笑顔は最高だ。周りの破壊や悲鳴なんかよりも、ずっと価値がある。



――――



「悠馬さーん! 見てください! モッフィーのぬいぐるみです!」

「買ったのか?」

「はい! ラフィオと一緒にモフモフします!」

「僕としてはやめてほしいんだけどな」

「もー。ラフィオってば照れてるの?」

「違う。単純に嫌だ――」


 うんざりしたような顔のラフィオだけど、話している途中で表情が変わった。


「フィアイーターだ。そんなに離れてない」

「本当か? 遥、樋口に連絡してくれ。車椅子を隠すから。あと、そのでかいぬいぐるみも」

「モッフィーだよ」

「そう。モッフィーのぬいぐるみも隠す。ラフィオとつむぎは先に現場に行ってくれ」

「あー。モッフィーまた後でね! 悠馬さんちゃんと隠してくださいね!」

「ああわかってる」

「つむぎちゃんまたねウサー」


 モッフィーを遥の膝の上に置いたところ、遥はその手を持ってつむぎに向けて振る。あとモッフィーの声真似もする。

 呑気だな。


 車椅子を押して隠し場所を探す。どこがいいだろう。周りでもスマホの警報システムがあちこちで鳴っていて、市民たちが出現位置の近さに驚いて逃げ始めてるところだ。


「あそこ。バリアフリートイレがあるから、そこに隠そう」

「わかった」


 障害者や高齢者でも使いやすい、広くて配慮の行き届いたトイレ。男女兼用だから、緊急時に俺と遥が揃って入ってもそんなに気が引けない。違和感はあるけど。


「樋口さんより澁谷さんの方が早く着くって。テレもふもふの本社、この近くらしいよ。車で十数分くらい」

「そうか。じゃあお願いしよう。姉ちゃんは?」

「まだ仕事中。できるだけ早く向かうって」


 トイレの中に車椅子を入れて、そこにモッフィーのぬいぐるみを座らせる。俺たちの荷物も側に置いた。車椅子のパーツに偽装したナイフも取り外してポケットに入れる。

 車椅子に本来座るはずの遥は、俺の肩を借りながら一緒にトイレから出た。


「じゃあねモッフィー。澁谷さんっていうアナウンサーが連れて行ってくれるから、待っててね。わかったウサー」

「ひとりでぬいぐるみと喋るな。自分で返事までするな」

「なんかやりたくなっちゃって。モッフィーかわいいし」

「女児のハートを掴むためのデザインだからな」


 遥は対象年齢じゃないけど。


「傍から見たら、ウサギのぬいぐるみに話しかけるヤバい奴だぞ」

「華の女子高生だから、ギリギリ可愛いって思われないかな?」

「ちょっと厳しいな」

「そっかー。あ、ちなみにモッフィーはウサギのぬいぐるみに取り憑いた姿をしてるんだけど、モッフィー本人は自分はモッフィーっていう生き物だって認識なんだって。だからウサギって言われると怒る」

「マジかよ。面倒な設定だな。てか語尾がウサなのに」

「わたしも、前につむぎちゃんから設定聞いたときは同じこと思った。けどいいよね。見た目がどうでも、自分は自分って言い切れるの」


 それは確かに格好いい。


「よし! じゃあわたしたちも行きますか。ダッシュ! シャイニーライナー!」


 人々は逃げ出して、周りに人はいない。遥は身を屈め、アンクレットとして身に着けている宝石に触れながら叫ぶ。

 彼女の体が光に包まれる。傍から見れば変身は一瞬で終わる。

 足の生えた遥、魔法少女シャイニーライナーがそこにいた。


「じゃあ悠馬。運んであげるね!」

「頼む」


 変身の間に、俺も覆面を被った。そしてライナーに背負われて現場に向かう。



――――



 その女は、コスプレショップで怪物が暴れていることに、誰よりも早く気がついた。


 ――魔法少女の格好のクオリティもっと上げろよ。偽物だって気がつかれたら終わりだ。


 そんな理不尽な命令を受けて、衣装を改善するためにコスプレショップへ足を運んでいた最中のことだ。クオリティか。最近知った言葉を得意げに使っていた。


 彼は今夜も決行すると言っていた。二日連続でコンビニに押し入って罪を犯し、まだ続けるという。

 ニュースで事件が広まって世間が警戒する前に、できるだけ稼ぐ方針らしい。


 そっちはいいよな。覆面で顔を隠せるんだから。こっちは素顔を晒して、コスプレをして犯罪をするのに。


 その女は、またコンビニへ窃盗に入ることにため息をつきながら、クオリティアップのために何をするべきか店内で考えていた。

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