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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第4章 偽物

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4-8.俺と愛奈でデート

「趣味は?」

「飲酒とテレビを見ること。あとサブスクで映画見ることも多い」

「無趣味みたいなものだねー」

「そうだな」

「美人なのにもったいない。彼氏でも作ればいいのに」

「それは……そうだな」


 姉ちゃんは俺から離れたがらないから、望めないことだとは思うけど。


「よし! 悠馬! 愛奈さんをデートに連れていきなさい!」

「なんでそうなるんだよ」


 話が見えない。脈絡もない。けど、遥にとっては繋がったことらしい。

 いつの間にか車椅子は教室に着いているけれど、遥は話を切り上げる気はないらしい。


「愛奈さんに外に出る楽しみを知ってもらうの! それには不本意だけど、悠馬とデートするのが一番」

「なんでだ」

「わかるでしょ? 愛奈さんが悠馬のこと、大好きなの」

「……ああ。わかるよ」


 俺も遥と同じ気持ちだ。大変不本意ながら。


「姉と弟で付き合うとかはありえないけど、デートくらいなら普通だから。だから悠馬、今夜早速誘ってみてよ。悠馬相手ならオッケーするだろうから! 不本意だけど!」

「そうか? いきなり誘って了承取れるか?」

「取れる! いきなりでもないし! ふたりの間には、姉弟っていう深い関係があるから! 不本意だけど!」


 さっきから不本意が多い。


 というか、魔法少女のふりをした窃盗団から、なんで姉ちゃんのデートに話がいくんだ。


「そしてデートを楽しんだ愛奈さんに、その対価としてテレビに出て呼びかけの撮影に応じなさいって言うの!」


 遥の中では繋がったことなんだな。めちゃくちゃ飛躍してる気はするけど、他に愛奈のやる気を引き出す方法を思いつくわけではない。


「やってみるか。世界と市民の平和のためだ」

「そう! みんなのためなの! けっして愛奈さんのためじゃないから!」

「強調するなあ」

「ふふん。デートは完璧にするとして、悠馬のことだから、どこに行けばいいとかは考えてないでしょう?」

「得意げな顔をするな。ムカつく」

「えへへー。仕方ないなー。わたしがデートのやり方をしっかり教えてあげます。師匠と呼んでいいよ!」

「親指を立てるな。ムカつく」


 遥の言う通りではあるけど。デートなんて経験、俺にはほとんどない。


「それに、下見も必要だよねー。仕方ないな。わたしと悠馬で事前に行くしかないね。不本意だけど、愛奈さんを楽しませるためには、わたしと悠馬でデートするしかないんだよね。不本意だけど」


 なんて嬉しそうな不本意なのだろう。というか、それが目的か。

 問い正そうとしたところ、始業が近いことを告げるチャイムが鳴った。やむを得ず俺は遥を席まで運び、自身も席に着いて担任の登場を待つのだった。



 姉ちゃんとデートか。となれば、やっぱり俺がエスコートするんだろうな。愛奈にはそんなの無理だからな。

 俺にも無理なんだけど。この前、遥とデートとみたいなのをした時も、俺は連れ回されるだけだった。

 今回は、愛奈が喜ぶ場所に俺が連れて行かなきゃいけない。


「困っているね、悠馬」

「ああ。めちゃくちゃ困ってる。師匠に教えてもらうしかないのか……」

「頑張れ」


 ラフィオが鞄から、こっそり話しかけてきた。他人事だと思って余裕そうに。


「ラフィオも一緒に学ぶんだぞ。今後のために」

「今後? 僕が、誰とデートすると言うんだい?」

「つむぎ」

「そ、そんなこと……」


 否定の言葉を最後まで言うこともできず、鞄の中で震え始めた。

 俺の憂鬱がわかったか。必要以上に恐ろしい想像をしてしまってるようだけど。



「そうだよねー。悠馬は愛奈さんを完璧にエスコートして、常に機嫌を取らないといけないの」

「面倒だな」

「うん。わたしも同じ意見。けど、女の子はこういうので喜ぶから、実践してね!」


 昼休み。見も蓋もないことを言う俺に、同じく率直すぎる意見を返した遥は得意げに親指を立てる。


「まずはわたしを褒めてみましょうか!」

「え。なんだよ急に」

「練習だと思って!」

「ええっと……遥はかわいい……よな?」

「僕に意見を求めるな」

「こら悠馬! わたしを褒めるの! ラフィオに向けて言わない!」

「そんなこと言われても。恥ずかしいし……遥のいい所か。前向きだし、元気だし、明るい。あと魔法少女になると強い」

「うんうん」

「あとは……料理がうまい」


 今日も昼食は、遥が作ってくれた弁当。

 白飯の代わりに、俺の好物であるピラフが敷き詰められている。ちゃんと、冷めてもうまいように作られていた。


「いつもありがとうな」

「あ……うん……」


 遥は顔を赤して、少しうつむいた。

 本当に少しだけだった。


「くぅー。それ。それだよ!」


 なにか、己を抱きしめるように両腕を組んで身悶えたと思ったら、満面の笑みになった。動作がいちいちうるさいんだよな。


「今の! ふとした瞬間に出る純粋な褒め言葉! 嘘偽りなしのやつ! それが出ればデートは完璧! さあ悠馬! もっと言って!」

「今の説明を聞くに、意図的に言うのは無理だろ」

「そうだけど! だから貴重なの! 今みたいなの、わたし以外に言っちゃ駄目だからね!」

「愛奈とのデートは」

「てきとーに喜ばせておけばいいよ」

「話が違う」

「愛奈さんには、養殖ものの褒め言葉でもくれてやればいいの」

「養殖の褒め言葉!?」

「愛奈さん鈍いから、天然と養殖の区別もつかないよ」

「区別なんてあるのか!? 確かに姉ちゃんは違いわからなさそうだけど」

「ふたりして失礼なんだよな」


 ラフィオが呆れていた。

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