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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第4章 偽物

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4-7.陸上部のマネージャー

 声の主が男なのは、男子の制服を着ているからわかる。

 ネクタイの色から三年生なのもわかった。


 しかし、決めつけるのは早計かもしれない。男装している女子なのかもしれない。一応、ここの校則には異性の制服を着るのを禁じる項目はない。


 そんな考えが頭によぎるほど、先輩は美人だった。

 ロン毛の髪はサラサラで、切れ長の目も小さめな口も、淑やかな印象を与えてくる。


 さっき遥に声をかけたのも、先輩として優しく嗜めるといったものだった。それに合わせた柔らかな笑みも、かなり女っぽい。

 体格も全体的にほっそりとしていて、柔らかそうだ。


 性別がわからない。容姿からも態度からも声からも、判別がつかない。

 胸は平らだな。それでも、ごく身近に信じられないくらいの貧乳がいるし、判別の手段にはできない。


「遥。この人は」

「陸上部のマネージャーの岩渕(いわぶち)先輩」

「陸上部?」


 見たことないな。俺も陸上部に出入りしてるから、マネージャーでも顔は覚えているはずだけど。


「両親の都合で、しばらく海外にいたらしいよ。悠馬が陸上部に来だしたのと、ちょうど入れ替わりなタイミングだったかな」

「ふうん」


 タイミングについてはそういうものとして、両親の都合で海外ってどういうことなんだろう。


「はじめまして。陸上部の岩渕(つよし)です」

「あ。はじめまして。双里悠馬です。二年の」


 岩渕先輩が手を差し伸べたため、手を握り返した。

 ゴツゴツして筋張った手は男らしかった。あと名前も、イメージの問題だけど男らしいな。


「先輩。悠馬はわたしの彼氏なんです!」

「おい」

「へえ。本当に?」

「あー。はい。そうです。そうなってます……」


 その方が、魔法少女関係で連携を取るため、学内で一緒にいるのに便利。そういう理屈を他人である剛先輩に話すわけにはいかないから、対外的に俺たちは普通に恋愛して付き合ってる関係にしか見えない。

 この陸上部の性別不明の先輩が魔法少女絡みの身内になれば話は別だけど、ないだろうな。陸上部の部長や生徒会長といった、他の先輩方と同じような関係になるはず。


「なるほどね。男女でお付き合いをするのはいいけど、羽目をはずなさいようにね。飲酒なんてもっての他だ」


 笑顔を見せられると、もう完全に女なんだよな。言い方も優しげだし口調は中性的。


「もー。先輩違いますよ。悠馬のお姉さんの話です。毎日頑張ってるし、お酒プレゼントしたら喜ぶだろうけど、さすがに買えないよねってだけの」


 なんでもない話題にごまかす遥。こういうの、うまいんだよな。


「そうか。それは悪かったね。先輩として、後輩が非行に走るのは止めないといけないんだよ」

「さすがです先輩! そういう姿勢、立派だと思います! ちなみに先輩は彼女とかいますか!? 女性を喜ばせる方法に心当たりはないですか!?」

「テンションが高すぎる」

「ははっ。神箸さんはこういう子だから。悠馬くん。この子をよろしくね」

「あ、はい」

「よろしくされます! それで先輩、女性を喜ばせる方法ですけど!」

「すまないね。僕には恋人はいないし、乙女心もよくわからないんだ」

「そ、そうですか……」

「ふたりとも、頑張ってね」


 ヒラヒラと手を振りながら、岩渕先輩は校舎の方まで歩いていく。俺たちも教室へ向かうわけで、それを追いかける形になるのだけど。


「なあ遥。あの人って」

「男子だよ」

「そうか……」


 俺が質問を全部言い切る前に、遥は察して教えてくれた。


「気になるよねー。すっごい美人。同学年からモテてるらしいよ。男子から」

「そういうの、ありなのか……」

「けど、本人は自分が男だってよくわかってるよ。合宿とかでも普通に男湯に入るし。他の男子の部屋と同じでも特に問題はない」

「なるほどな。けどマネージャーか」

「うん。家が忙しいらしくて、選手としてずっとトレーニングするのが難しいらしくて。大会の時に行けないとかになると、周りにも迷惑かかるじゃん? リレーとかの団体競技もあるし」

「そうか。だから身を引くのか」

「体力自体はあるらしいんだけどねー」

「家が忙しいって、なにやってるんだ?」

「詳しくは知らないけど、お金持ち。それも海外展開してる種類の」

「なるほど」


 大企業の社長か重役か。製造業が盛んなこの街には、海外に拠点を持つ会社もいくつも存在している。

 岩渕先輩も、将来的に立場を継ぐことを期待されているんだろう。だから今のうちに、世界中のビジネスパートナーたちと交流を持つために動いているとかだ。


 しばらく海外にいたっていうのも、親の都合の営業活動なんだろう。


「おもしろい人だよねー」

「そうだな」

「でさ。愛奈さんにお酒買う計画はどうしよう」

「却下だ。俺たちには無理だ。やるなら大人の誰かにお願いしろ」


 樋口も澁谷も麻美も、頼めばやってくれそうな雰囲気はある。

 あの、駄目人間の姉の機嫌を取るために、比較的まともな大人が無駄な努力をするというのもひどい話だ。


「じゃあ、後で連絡しよっか。それはそうとして、他に愛奈さんはどんなことで喜ぶ?」

「……わからない」


 一緒に住んでるのに。


「休日は、いつも部屋に籠もって寝てるから」

「そっかー」


 その光景を、遥も用意に想像できたらしい。

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