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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第4章 偽物

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4-5.セイバーになれるのは愛奈だけ

「わたしほど美人じゃないのは確かね」


 愛奈が、画面を見ながら真剣そものもな表情で言う。内容は空虚だけど。


「魔法少女名乗るなら、もっと美人でいなさいな」

「はいはい。わかったから。樋口、上からのお達しで、またなんか動画を作ってくれってことだろ?」

「ええ。魔法少女が出演したやつをね」

「やだー! わたしそんな面倒なことしたくない!」

「わたしが出ようか?」

「いいえ。セイバーの格好が犯罪に使われたのだから、セイバーが出るべきよ」

「そんなこと言われたってー。疲れてるしー。ねえ悠馬、なんとかならない?」

「なんとかって?」

「悠馬がセイバーのコスプレするとか」

「馬鹿なことを言うな」


 こいつは。何を言い出すかと思ったら。


「コスプレ衣装とか、どうせ探せば出てくるでしょ!?」

「ほんとだ。あった」


 昨夜と同じく、遥がスマホの画面を見せてくる。


 手作りの凝ったものから、量販店で千数百円で売ってるようなペラい宴会用衣装まで、クオリティの差はありつつ、コスプレ衣装は手に入れることができるらしい。

 実際に身に着けて画像をアップしているコスプレイヤーも大勢いた。


「何よこいつら!? わたしの格好で、いいね大量にもらったり褒められるコメント送られたり!」

「じゃあ姉ちゃんもやるか? 本物は人気出るぞ」

「嫌です! そんなの恥ずかしい! けど他人が褒められてるのはなんかムカつく!」


 なんて浅ましい人間だろう。


「そんなのだから、わたしが啓蒙動画に出るとか無理です! つむぎちゃんでも、遥ちゃんでもいいから! わたしのコスプレして!」

「えっと。わたしが変身せずに、衣装だけ模してお姉さんのふりをするってことですか?」

「そう! お姉さんじゃないけど!」

「無理ですよ。つむぎちゃんは背が足りない。わたしは足が足りない」


 確かにな。遥の自虐が過ぎる気はするけど、無理があるよな。


「じ、じゃあ! 他の大人にお願いするとか! 樋口さんやってよ! それか澁谷さんとか、麻美とか!」

「無理ね」


 樋口がきっぱりと言い切った。


「並の女が愛奈のコスプレをするのは無理よ。胸の膨らみを隠せない」

「むぎょー!?」


 大きくのけぞって、椅子に体をもたれかけさせて放心したように天井を見つめて何も言わなくなった。

 どんな悲鳴なんだろう。


「ひ、樋口さん! 言っていいことと悪いことがあります! お姉さん、貧乳なの気にしてるんですから! いくら膨らみの無いまな板だとしても、本当のことを言っちゃいけな痛い」


 俺が遥の脳天に軽くチョップを叩き込んだことで、ようやく止まった。


「姉ちゃんの傷を深めてどうする」

「えへへ。つい」

「こいつわざと言ったのか」


 なんて奴だ。


 とにかく、樋口の上の人間の要望はわかった。


「樋口。見ての通り姉ちゃんはこんなのだ」

「ええ。簡単には行きそうにないわね」

「今度、テレビ局でちゃんとした形で声明を出す。それまでに姉ちゃんを説得する。それでいいか?」

「それが落としどころね。悠馬。あなたにばかりお願いして、悪いと思うわ」

「なに。一番苦労してるのは姉ちゃんだよ」

「もあー」


 放心状態は続いていて、よくわからないうめき声をあげ続けている愛奈が、一番の功労者なのは確実だ。

 毎日、やりたくもない仕事をして俺を養って、そして魔法少女なんて。


「姉ちゃん。酒飲んでいいぞ」

「うあー」

「ほら。注いでやるから」

「ついでに、夜は一緒に寝てほしいなー」

「それは断る」


 だんだん回復しつつあるな。よかった。


「悠馬って、愛奈に甘いわよね」

「ですよねー。わたしが付け入る隙がないというか」

「あんた、相当なものだと思うわよ」

「そこ。なに話してるんだよ」

「んー。悠馬ってすごいなーって話」

「本当かよ……」


 とにかく、その日はこれでお開きとなった。


 近いうちに澁谷と連絡をとって、スタジオを使って映像を撮る。それまでに愛奈の機嫌を取る。こうするしかないか。


「ねえ、悠馬」

「どうした?」

「澁谷の局で撮影する時、有給取って会社休んでもいいかな」

「……いいぞ。それまで、ちゃんと働いていてくれるならな」

「やったー! その週五日間の有給取って、長期休暇に」

「それは駄目」

「うぎょあー」


 再度放心のポーズを取る愛奈。


 これ、説得は難しそうだな。



――――



「ねえキエラ。これ見て。覆面男が強盗したって」

「へえ。奴ら金に困って……いるわけじゃないようね」


 キエラとティアラがいるエデルードの世界。人間の世界の様子を見ることができる魔法の鏡には、テレビの画面が映っていた。


 ティアラには、魔法というものがよくわからない。けどこの鏡で、テレビを見ることもできるし、ネットにも繋がるらしい。


 便利なこの道具で、ティアラはミラクルフォースの過去作品を延々と見る生活を送っていた。


 これで、キエラの大切な人を探せないのかと訊いたことはあるけど、それは無理らしい。

 外の世界を見ることはできても、特定の相手の位置を検索して見ることはできない。しらみ潰しに探すことは可能だけど、それができるほどキエラは気の長い性格ではない。


 会いたいなら、フィアイーターを作れば向こうから来てくれる。だから構わないそうだ。

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