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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第4章 偽物

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4-1.深夜のコンビニ窃盗事件

 深夜。模布市内のとある駅前にあるコンビニには、この時間特有のゆったりとした雰囲気が流れていた。

 既に終電も過ぎ、始発には間がある。電車が通っている時間は忙しいコンビニだけど、深夜は暇になるもの。

 ごく少数の店員が朝のラッシュの時間帯に向けた品出しや店内の掃除をしていた。


 そこに、ひとりの女性客が来店。大きなマスクと、夜なのに大きなサングラスをかけた髪の長い女だ。

 店員たちは特に不審に思うこともなく、彼女がレジの前に立つかどうかを意識しながら各々の仕事を進めていた。


 瞬間、店内にけたたましい警報音が鳴り響いた。


 しばらく前に運用が開始された、模布市限定の緊急速報メール。これが鳴った場合、市内のどこかに怪物が出たということになる。


 直後、店内に新たな人物が駆け込んできた。

 ニュースなどで見慣れている、市内のある高校の男子制服を纏った、おそらく男性。彼の頭には、やはりニュースで報道されたことのある覆面。


「この近くに怪物が出た! 早く避難しろ!」


 店員たちは立ち上がって顔を見合わせた。


「本当よ! ほらこれ! 見てください!」


 先に来ていた女性客が、スマホの画面を見せる。市民には最近見慣れてきた画面が映し出されていた。


「なにやってるんだ! 早く逃げろ! 死にたいのか!?」


 顔が見えない男の必死の剣幕に、店員たちは揃って店外へ逃げていった。



――――



「という手口の強盗というか、窃盗があったわ。昨日のの夜……深夜だから正確には今日ね」


 樋口がタブレットの画面を見せながら、俺たちにため息混じりで説明した。


 コンビニの監視カメラの映像らしく、俺と同じような格好をした男が、顔がよく見えない女と協力してレジを破壊して金を奪い取っていた。



 俺が覆面を被ることで、タオルを顔に巻くのに比べて手間は随分と減った。あと解ける心配もなくなった。

 それはいいとして、樋口から覆面を手渡された時に言われた懸念が現実になった。


 模倣もしやすい格好だ。そして、俺を騙って武器を携行する悪人が出るかも。

 今回はその手の悪人ではなかった。けど他の悪事を働いている。


「女が見せたスマホの画面は、過去の警報の時のスクショ。その時の警報音も録音して、スピーカーで音量大きめに流したのね。そうやって店員の混乱と焦りを誘い、自分のスマホを確認する暇も与えず追い出した」

「へー。悪いこと考える人もいるものねー。あ、樋口さん夕飯食べて行く? ビールもあるけど」

「職務中よ」

「もー。公安はお堅いんだからー。私たちと仲良くすることも仕事のうちでしょー?」

「まったく……一杯だけね」

「やったー! ラフィオ! ビールと早く出せるおつまみ持ってきて!」

「今手が離せない!」

「えへへー。ラフィオモフモフさせてー」


 キッチンから年少組の声。ラフィオはつむぎに抱きつかれて、なんとかモフモフに変えようとする彼女と攻防を繰り広げながら夕飯の用意をしているらしい。

 そりゃ手は離せないな。


「仕方ない。遥ちゃんは」

「わたしも夕飯作ってる所です! お姉さんお酒なら自分で用意してください!」

「お姉さんじゃありません!」


 あまり動けないラフィオの代わりに、遥が今夜の夕飯をメインで作っているらしい。


 当たり前のように遥とつむぎが家にいることについては、もはや疑問でもなんでもない。


 さらに言えば樋口も、それを見越して俺の家を訪問したのだろう。

 直接伝えるべきことがある場に、魔法少女三人と妖精と覆面男という主要メンバーが揃っている瞬間を狙った。

 ちょうど姉ちゃんが帰宅する時間に来たのは、公安の調査能力の賜物か。


 そして彼女は昨夜起こった重大案件に関して俺に説明してくれたというわけだ。


「樋口さん。ビールは自分で持ってきて貰えますでしょうか!?」

「家長自ら持ってくるつもりはないのね」

「ないです! 仕事で疲れているので!」

「後輩ちゃんに面倒な仕事を随分任せてるらしいじゃない?」

「な、なんでそれを!? い、いいもんね! わたし先輩だし! そういうのは新入りに任せるものなの!」

「あまり麻美のこと、こき使うなよ」

「こき使ってないですー! というか悠馬! なんでお姉ちゃんより他の女の心配をするのよ!?」

「姉ちゃんに呆れてるからかな」

「ちょっと聞いた樋口さん!?」

「ねえ。話の続きをしてもいいかしら。あなたの偽物が現れた件」

「ああ。頼む」

「その前にビールを!」

「自分で取りにいけ」

「悠馬お願い!」

「まったく」


 隣に座る俺にすがりつくようにして頼む愛奈。樋口がうんざりして、飲まなきゃやってられないと考えるのもわかる。


 本当なら公安は、監視対象から施しを受けてはいけないのに。これは相当なことだぞ。


 そして俺は、なんだかんだ姉には甘いらしい。

 冷蔵庫からビールを六缶ほど掴んでテーブルまで持っていく。そんな俺をラフィオが横目で見て。


「つむぎ。小松菜のおひたし出来たから持っていってやれ」

「えー」

「僕は、こういうお手伝いができる女が好きだ」

「えへへ。そっかー。ラフィオがそう言うなら、お手伝いするしかないよねー」


 つむぎがラフィオの背中から離れて、ラフィオが小鉢に盛り付けていった料理をこっちに運んでくる。

 そして一瞬でラフィオの背後に戻ってしまった。動きが早いな。

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