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春に躍れ
「3月10日。私は君を殺せなかった。」
『3月10日。俺はあいつを殺した。』
「君の顔を見ながら、首を絞めた。」
『あいつの顔を見ながら、包丁を刺した。』
「君は優しい目をして笑っていた。」
『あいつは悲しそうな目をして泣いていた。』
「私達は間違ってなかった…。そうでしょ?」
『俺達には道がなかった。そうだろ?』
「ねぇ、教えてよ。」『なぁ、聞かせろよ。』
「天国はどう?」『天国ってやつは、どんなんだ?』
「明るい?」
『苦しいか?』
「楽しい?」
『生き辛いか?』
「私は生き辛いよ。」
『俺は楽しいぜ。』
「君のいない世界を生きる価値を見つけられないんだ。」
『俺に縛られないお前にやっと出来たからな。』
「だから、当たり前だよ。」
『だから、ありがとうな。』
「君を殺せない私を許さないことなんて。」
『お前を殺した俺を罰してくて。』
「私達は正しかった。」
『俺達は間違ってた。』
「これしかなかった。」
『この道以外にもあったんだろう。』
「その一言で、私は」
『その一言で、俺は』
どうしようもなく、消えたくなるんだ。