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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
四章 学園祭編
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二十五話 何も知らない

正月番外編は一度削除→番外編に移動しました。

『姫は、王子が訪ねてくるも、断り続け、ずっと一人で過ごしました。会いたいという願は勿論ありましたが、それよりも王子との思い出を綺麗なままで終わらせたかったのです。……気を遣われるだけの苦い思い出なんて、姫は欲しくはなかったのです』


私、月乃玲明(メリア)の心情を、ナレーションがそのまま読み上げた。私は、ただただ明るいだけの、照明を勝手に夜空に変換し、見上げながら自分の感情のままに呟く。


『王子は今、何をしているのかしら。お夕食?それともまだ、読書をしているのかしら……?もう寝てしまっている可能性も……』


会わなくなって、王子が何をしているか、よく考えるようになった。

辛い思いはしていないだろうか。寒い思いはしていないだろうか。王子なのだから、そんな基本的な何かに悩むことはないと分かっているのに、どうしても案じてしまう。遠く、離れているのに目をはなすことが、出来ない。


『何を、しているんでしょう……』


ここのところずうっとそんなことを考えてばっかりだ。いっそのこと出会わなければ、知らなければ良かった、とすら思ってしまう。


あの人に、会わないことを選んだのは私なのに。


後悔や、本当の願いは私の心を知らずして、ただ、降り積もる。


『……――』


時は、あっという間に去り、場面と呼ばれるそれは幾度も転換した。王と、王妃が王子と対話をする時間、私が心の内を語る時間、医師からの診察を受ける時間。


しかし、どんな時間を過ごそうとも、状況がいいほうへと傾くことはなかった。私の身体は日を追うごとに動かなくなり、遂に残りの命が一ヶ月というところで寝台から動くことすらできなくなる。


王子との関係性も、変わらないままであった。

王子は、相も変わらずよく訪ねてきて、会いたい、と言ってくれたが私はそれを全て拒否した。


ある時、遂に私たちの婚約が正式に破棄される話が、王子の国の使節団によって持ち込まれる。


端的に言えば、私の病気を聞き、いろいろ考慮した結果、結婚よりまずは療養に専念してほしいということになったため「病気が治るまで」婚約を一度破棄しておこうという話であった。


ただ、これは名目上の話。


私に病気が治るときなど来ないし、きっとあちらあの国は私が死んだあと、世継ぎのために「仕方なく」別の誰かと王子を婚約させるのだろう。


こちらの国はそれを打開するすべなど持つわけもなく、できるだけ引き延ばしはして一、二週間は持ちこたえたものの、遂に明日私や王子の立会いのもと、書類に印が押され、婚約破棄が成り立つこととなった。


『そんな、明日に正式な婚約破棄を控えた夜のこと――』


また、ナレーションが今の状況を、言葉にした。


けれど、(メリア)はそれを知らないし、気にも留めない。


『もう、遂に明日が……』


寝台から、動けないまま私はそっと呟く。

私には、明日のことも気がかりだったが、今現在起こっている「気がかりなこと」もあった。


王子が、今日は訪ねてこなかったのだ。


婚約破棄のために、この王宮で、使節団とともに寝泊まりしていた王子。物理的距離も相まってこの二週間ほどはずっと、訪ねてきてくれていた。


正式に婚約破棄をする手筈が整ったことで、もう私に構うことはやめる覚悟が決まったのだろうか。


だとするのなら、それは私が望んでいたことであり、正しいことだ。


『………………最後くらい、素直になっても、許されるかしら』


向こうに見える窓の、さらに奥でぽたぽたと、雨が降り出した。


『……ちゃんと、会って、お話しして。幸せになって、とだけでも伝えればよかったなぁ』


きっと。明日会う婚約破棄のその時が、最後のお別れだ。


『ううん。やっぱり、私が隣で、一緒に生きていたかった。

後は、そうだなぁ……この前できなかった遠出、王子と一緒にしたかったな。

ただ、街をめぐって、おいしそうなものを食べて、この前は花畑に行ったから、今度は海とか……』


ここも、室内なのに、なぜか、暖かい雨が降りだした。


『……ルト王子と、一緒にいたかったな』


ぽつ、とひときわ大きい雨粒が落ちた、その時。

窓のほうから声が降った。


『その願い、叶えましょうか?姫』


* * *


私が、作り出したはずなのに、メリアはそう思えないくらいに完璧な「普通の女の子」だった。


愛することを知っていて、愛されることを知っていて、人を大切に想える心が、最初から備わっていて。

噓をつくことに、罪悪感を覚え、でも可愛い我儘のために、噓をつき通して。


死ぬことが怖くて、愛する人と一緒に生きていたい、普通の女の子。


こうして、考えれば考えるほど、私が何も持っていないことを、思い起こさせる。


愛することも、愛されることも、知れた気になっていたのに、結局は何もわかっていなくて。

噓をつく理由も、噓そのものも、何も、ない。


死ぬことなんて、仕方ないとしか思えなくて、愛する人も、何もいない。


どこから浮かんでくるのかわからない思考もあったが、結局は、これが()だ。


……もう、これならいっそのこと、このままメリアでいいんじゃないかなぁ、とすら思う。










…………なんで、こんな私なの。

本日だけで、200pv超えました。


……えぇぇぇぇ?てな感じで綾取本当に驚きました。開いた口が塞がらないってこういうことなんですね。()


まさか、綾取のような超ド底辺なやつの作品を、1日で、200回(目次見ただけかもしれないけど)色んな人がクリックしてくれたのだと思うと凄く感慨深いです。


なろうの中じゃ、ド底辺ですけども、何げに200って凄い数字じゃないですか???

この感覚を忘れないように、数字一つ一つを大切に、今後もやっていきたいと思います。

皆様、本当にありがとうございます。そして、これからもどうぞよろしくお願いします。


追記:ん?300?




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