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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
四章 学園祭編
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十三話 不思議少女の身の上話


にこにことしたライは、私、月乃玲明や隣に居るのあに向かって語りだした。


「まずは、ライという名前についてですかねぇ。

名字がないの、不思議に思ったでしょう?」


私やのあはこくりと頷き肯定の意を示した。自己紹介の際にも引っかかったのはその点だ。


この国では皆名字を持つ。

孤児であろうとも孤児施設に引き取られれば、その孤児施設に与えられている名字で戸籍の登録をするのだ。

そんな中、名字を持たない人がこの国に居るとするならば――


「――ライは、他国の方ですか?」

「ご明察です」


ライは肯定を示した。だが、その言葉が意味することは危ういものもある。


「華道さん……んーなんか呼びにくいので呼び捨てにしちゃっていいですかぁ?学年そのまま受け取るならば多分同い年ですし」

「留年も飛び級もしてないから恐らく同い年。呼び名はご自由にどうぞ」


なんか凄くのあの機嫌が急降下してる。まぁ元々不信感を持っていたのあだから先ほどの発言で拍車がかかったとしても不思議ではないだろう。


「のあが恐らく考えていることも、わからなくはないですよぅ。別の国の人間が他国のそれなりに闇が深い問題に足を突っ込んでいた、尚且つそれに自分達が巻き込まれたとあっては怪しいことこの上ないですしねぇー」


ライは呑気に、しかし美しく前菜を食べながら話しているが言葉の内容はなかなかえげつない。


「……自分でもわかってるんだね」

「まぁ、それは誰でも怪しいと思いますよねー。さて、じゃあここから弁明させていただくとしましょう。

気になること、疑問点、なんでも聞いてください」


その声を聞くなりのあが早速疑問を投げかけた。


「何故ここにいるのか。まずはそれが知りたい」


疑問というよりは咎めるかの様な声であったが、そんな声も、ライはものともせず、相変わらずの楽しそうな声音で答えた。


「はい、早速来ましたねぇ。じゃあライちゃんがお答えしましょう。それはズバリ、留学です」

『留学?』


思っていたより普通の答えが返ってきて、二人でオウムの様に言葉を返した。


「そうなんですよぉ。びっくりするくらい普通でしょう?先ほどちゃんとこの学園の生徒だと自己紹介しましたが、それが原点といいますか……留学して魔術を学ぶことが目的で他国に来てるんですよぅ」


その言葉にそうなんだ、と納得しかけ、ふと引っかかる点に気づく。


「ライ、質問いいでしょうか」

「はいどうぞ〜お嬢様……じゃなくて」

「あ、普通に玲明でいいですよ」

「ありがとうございます〜。で、玲明からの質問は?」


ライから問い返され、私は自分の頭の中から知識を掘り返す。きっと、私の抱いた疑問は正しいはず。


「他国でも、普通は名字が付きますよね」

「ん?そうですねぇ」

「ただし、その例外として親を持たない方……孤児である方なんかは名字を持たない、と聞いたことがあるのですが……」


この推測が正しいのだとしたらライは――


「そうですよぅ。お察しの通り、私は孤児です」


私が濁しながら言ったのにも関わらず、ライはなんてことないように言葉を返した。


「そんなに気を遣わなくとも大丈夫ですってー。対してなんとも思っていないのでぇ」


ライの様子からして、強がりでもなんでもなく、本当にそう思っていることが見て取れた。

そして、ライからその肯定が返ってきたことで、私の中の疑問は確固たる形を持った。


「それならば――ライは何故この学園へ?」


私の言葉の意図を、ライならば汲むだろう。私の疑問は先ほどのあが聞いた「目的」、意図ではなく「手段」だ。


「あぁ、そうですねぇ。それは疑問になりますよねぇ」


ライも納得、という声を上げる。

……この学園は、国内屈指の名門校であり、上流階級用の学校である。

ライは、優秀なのだろう、この学園へ入れるほどに。話していて、言葉の節々からその賢さを感じる。


だが、どれだけ優秀であっても、そう簡単に身分の垣根を越えてここに来ることはできない。

優秀な者が報われてほしいと、どれだけ願ったところで平民は平民のまま一生を終えてしまうことが現実なのである。


「私が留学できた訳。私の後見人として立ってくれた人がいたんです」


ライは、フォークを動かす手を止めて、口を開いた。


「――ルーメルト公爵。その人が運良く私を見つけ、後見人となってくれました」


しかし、時にそれを覆すほどの「運」を持つ人がいる。

ライはその類に入るのだろう。


「ルーメルト公爵様……ですか」

「ここに公爵は居ないんですから様つけるのやめません?一々面倒くさいといいますかぁー」


そんなすごい人が後見人であってもやっぱりライはライだった。


「じゃあ敬称は省略でルーメルト公爵と。

……そのルーメルト公爵って名は聞いたことがあるような気がするんですがどんな方なんでしょう……」


そこまで話し切った所で今まで聞き役に徹していたのあから説明が入る。


「このレティア国の北部側に隣接するメリト国の大貴族。五本の指に入るどころかメリト国の貴族と言われたら一番に名が上がるほど知名度の高い貴族であり、当代の公爵は、ルーメルト家の中で歴代三人目の女性公爵にあたる方」


「……あぁ、思い出しました。社会学で少しだけ触れてましたよね。

ルーメルト公爵家といえば、メリト国の王族だけでなく他国の王族や有力貴族とも血縁関係があったり、割とどこの国の王族をとってもルーメルトの名を聞いたので印象深かったんです。あと、容姿の特徴があるとか……」


ん?

そこまで話していてふと気づく。ルーメルト公爵家の者が持つ容姿の最大の特徴は……。


「……紺の、髪」

「あはー。よく覚えてましたねー」


相変わらずの笑み。だが今のその笑みには真意を悟らせない不気味さがあるような気がした。


「私、一応ルーメルトの末端らしいんですよ」

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