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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
四章 学園祭編
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十話 絶望の一秒間に見た景色


『このまま行けば、得点制度によって白組の逆転勝利となりますがさて赤チームはどうするんでしょうかー。

解説の風夜さーん』


最後の一言で緊迫感はガラリと崩れたが、赤チームにとってまずい状況であることは変わらずだ。

それに続く、またもや巻き込まれた風夜先輩の解説に、気を紛らわせる意味も込めて私、月乃玲明は耳を傾けた。というか峰先輩も懲りないなぁ……。


『……先ほどは白チーム目線での話をしましたが、そうですね……赤チームがこの局面から勝利に持ち込むには黄色チームが四位に落ち、尚且つ赤チームが一位に上がる。もしくは赤チームが一位に、黄色チームが二位に上がる』

『あれ?黄色チームが三位から動かないとどちらにしろ勝ち目がない?』

『そうなりますね。白チームの制度が使える状態だと黄色チームが三位から動かない限り勝利の道はありません』


風夜先輩も、もう諦めたようで大人しく巻き込まれてた。風夜先輩には是非強く生きてほしい。


『とまぁ、黄色チームが鍵を握ってるそうなので、是非二位目指してほしいねー。両チーム頑張ってー!』


……保護者が居ず、先生たちもあまりいないからといってはっちゃけすぎてる気がしなくもなくもない。これでいいのか生徒会!といいたくなるけど意外と平常運転だった。尚、これが平常運転でいいのかというツッコミは受け付けない。


とりあえず、一時期時間を稼ぐという意味でならばなかなかいい感じに気を逸らせたが、もう二十八番中二十五番目まで来てしまっている。

そろそろしっかり現実を見なくてはいけないのだが、見たくない……。


「そろそろ二十七番目の方、こちらへ!」


そんな私の希望は担当生徒のなんてことない声で砕かれた。……やはり、二十七番目の生徒は来ていないため私が二回走ることになるのだろう。


さらに追い打ちをかけるかのような絶望的な状況……トップの青チームを除き、赤、黄色、白チームがほぼ横並びなのである。


上手くいけば最高で二位に躍り出ることの出来るいい状況でもあるが、耐久戦でもあるため二回走るこちらは少し分が悪い。


いっそのこと四位まで落ちて、白チームの四位を妨害するのもいいかも……と一瞬考えたが、この状況下だと白チームが二位に出て、一位二位を白チームの総取りという結果にならない確証もないため、やはりある程度順位が確定するまでは全力で走った方が良さそうだ。


「……はいっ!」


そうこうしているうちにトップを走る青チームのバトンが二十七番目の走者に渡る。


「赤チーム、黄色チーム!!頑張れよー!」

「青ーそのまま走り抜けてー!!」


あちこちから声援を受けながら、ついに私の手にもバトンが渡る。


「頑張れ!!」


名前も知らないご令嬢だが、声援を送ってくれた。


「はい!」


元気に返事をして、黄色のバトンを掴み取ると、一気に土を蹴った。


(ほぼ横に白チーム、少し後ろに黄色チーム)


遠目から見たのでは分からない、細かな距離を感じ取りながらどう動くべきかを考えた。


(黄色チームが四位だとするなら、私が二位まで行けば同点に持ち込める)


足を動かしながら、頭で一人作戦会議をした私は、覚悟を決めてより、足に力を込めて土を蹴る。


「……っち!」


私が僅かにだが、前に出たことに気づいた白チームの代表生徒が必死に追いつこうと足を動かす。


だが、そんなに簡単には譲れない。


「……っ!!」


さらに距離を開くべく、さらに足に力を込めようとした時――違和感に気づいた。


「いっ!?」


右足首の内側から、灼熱の痛みが走った。

しかし、ここで走るのをやめて仕舞えば、赤チームの敗北が確定してしまう。


必死に頬の内側を噛み、気を紛らわせると足に力を込めて走る。

それでも痛みによる一瞬の遅れにより、僅かに造った差も、ほぼゼロというところまで来てしまっていた。


(なんで急に……)


そう考え、ふと思い出す。


(あの時の!!)


――数週間前。

賑やかな夜のあの日、ハロウィンに起こった事件の産物たる足の怪我がちょうど、この位置だったではないか。


『れい、処置はしたけど、ちゃんと診てもらった方が……』

『いえ。診てもらおうとすれば、今日の夜のことがバレます。きっと専門的な人が見たら日常でする怪我ではないことに気づいてしまうでしょう』


そう言って、結局自分達の手による処置だけで済ませたのだ。

その判断が一番無難であり、後悔はしていないが、まさかこんなところでその影響を受けてしまうとは。


(でも、止まれない)


折角、みんなが応援して、ワクワクしながら見てくれているのだ。私は、私に与えられた役割をやり遂げないと。


足は痛むながらも、そう決意した私は、相も変わらず白チームと競いながらコーナーに入る。

曲がった道で少しだけ速度は落ちるながらも、なんとか今までと同じ距離を保ちつつ、見えてきたバトンパスのゾーン。


このままいけば、バトンパスがない分、こちら(黄色)チームがリード出来るかもしれない!と希望が見え始めた。


――が、そう簡単にはいかないものなのである。


白チームと、私たち黄色チームがバトンパスのゾーンに入った、その瞬間、足に今までの比ではないような痛みが走った。


……そこから、スローモーションのように時は進んだ。


咄嗟に走る、二度目の痛みには耐えられず、私の体は、半円を描くように前方に倒れていく。


視界の端には、私と争っていた白チームの、アンカーだったらしき、のあが目を見開く顔が映る。


〇、一秒。


反射で駆け寄ろうとしていたが、今は競技中。

ぎゅっと顔を顰めて走り出すことを選ぶ。


〇、三秒。


白チームは勝利を確信し、赤チームは敗北を悟る。


〇、五秒。


私の手から、バトンがこぼれ落ち、地に着く――


「すみませんねぇ〜」


その瞬間。何処からともなく現れた、すらりとした手と、言葉が、地に着く前のバトンを攫い、持ち去る。


「――後は、お任せくださいな」


一秒。

一秒の間に何処からともなく現れたその人は、数週間前にも見た特徴的な紺の髪と、話し方で――言葉を宙に放ったまま駆け出した。


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