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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
四章 学園祭編
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九話 制度をうまく使ってくれて某不良は大満足なようです

一章って九話にならずに纏めてたんですね……

良し悪しは置いておいてなんかもう、一度長くやってしまうと止められない……

また長くなるかもですけど出来るだけ纏められるように頑張ります。


『バン!!!』


最終決戦の始まりに相応しい、高らかな音が秋空に響き、第一走者たちは走り出す。

その光景を前に、私、月乃玲明は所属の黄色チームで来たる自分の順番を静かに待って――いたかった。


「居たか!?」

「いえ、それらしき人は居ませんでしたわ!!」


たった今入場してきたばかりの第一入場口の方から聞こえる喧騒に私はこれ以上ないほど焦っていた。

その理由は――


『月乃。お前の前……アンカーの一つ前の走者が来ない』


……私の一つ前の走者がどこにも居ないそうなのだ。

それだけならば、まだ「そうなんですね……」で流せた、と思う。

だが、続けて一条先輩は言った。


『このまま、そいつが来なかった場合は月乃に二回走ってもらうことになる』


……ん?今なんて……と、実際に聞き返してしまった。ルールにより、競技の出場メンバー自体を変更することはできないため、元々決まっている第四競技のメンバー内でどうにかするしかない。

しかし、この第四競技は軽く運動を経験してみたいという未経験の人が多い。

そんな人達に二回目を任せるのはなかなか辛いだろう。……という訳で消去法で私しか居ないのだそう。


今まで準備係だった人たちは、もう最終競技も始まったということで手が空いたため、例の人を探す方に回ってくれているらしいがやっぱり見つからないらしい。


(このまま、私が二回走ることになるのかな……)


正直に言うのなら、だいぶ心配である。

特権としてバトンパスは省略出来るものの、二回走るともなればかなり体力を使うだろうし、そこで追い抜かれる可能性もある。


出来ることなら、私の前までで、大差をつけてくれたら楽だな……と期待しつつ、顔を上げ、現在の状況を確認する。


……まぁ、やっぱり現実はそう上手くいかない。

現状は、大混戦であり、パッと見た感じだと赤と青が一位を争い、そのすぐ後ろから、黄色と白が三位を争うような形だ。

現在、二十八人いる中の第五走者が走っている。


まだまだ、私の順番である二十七、二十八番目までは遠いが、じわじわと迫ってくる何かがあり、穏やかに見ているのは到底無理そうである。


それからも、ぼーっと走りゆく人々を眺めていたが、特にこれという変化はないまま、中盤まで差し掛かった時、何か気を紛らわせるようなものはないかとキョロキョロしていたら、次走る人たちの待機列にミアがいた。


こちらに気づいたらしく、ミアが手を振ってくれた。

癒しである。


……そう思っていた時期が私にもあった。


* * *


「……うわぁ」


思わず、声が漏れてしまった。主にミアに対する恐怖のような何かで。


ミアは、特段早いわけではなかった。

早いわけではなかったのだが……ただただ体力がちゃんとあった。一方は運動初心者なのだろう、前半にペースを飛ばし、今はよろよろしながらミアの後ろについている。


――そう、現在トップはミアの青チーム。赤チームは二位に落ちてしまっていた。


現在はまだ、すぐ後ろで白チームと黄色チームが三位争いをしている……が、もし白チームが今の状況に気づいたら()()()順位を下げるかもしれない。


これを、きっと一条先輩のような性質(たち)の人は「面白い状況」と笑えるのだろう。

一条先輩が面白さのために入れた制度が上手く活きている。


現在の状況のままゴールするならば、白チームが一位と、三位または四位、赤チームが二位と三位、または四位という状況だ。


白チームは一位と三位を取れば同点になれるため、相変わらず三位を目指す……と思いきや四位に落ちてかつ下克上制度を狙えば、勝利を狙えてしまうのだ。


『おっと、これは白チームにも逆転勝利の道が見えてきましたねー。解説の風夜さん如何でしょう?』

『えっ…………こほん、そうですね。この第四競技のみ、下克上制度と呼ばれる特別な配点基準が設けられていますので、白チーム勝利はその制度を使うことが鍵ですかね』


さらに焦り始めたところで、急な実況、もとい峰先輩のお遊びが入り、尚且つ風夜先輩がそれに巻き込まれる現場を目にして(耳にして)強制的に意識がそちらに引っ張られた。


『……返答返ってこないかもと思ってたのによく咄嗟に返せたねー。さっすが会長』

『仕事に集中してください』

『ごめんって』


あと、先輩方、マイクに音声入っているので気をつけた方がいいですよ。

無論、走る人たちを応援している歓声の中であの声を聞き取ったのは私くらいなものだとは思うが。

そうこうしているうちに二十番目の走者まで差し迫ってきている。


白チーム、二十番目の走者が並ぶ前に、周りの白チームの人たちとヒソヒソ話していたかと思えば、案の定バトンが渡った瞬間、ワンテンポの遅れを見せた。


『あっ!?』


不思議なその様子に、気づいた赤、黄色チームの面々も一定数いるようで焦りに声を上げていた。


……そう、青チームが一位を勝ちとり、四位に白チーム、そして尚且つこのままミスゼロを保てば、白チームの勝利である。


わざと四位に落ちるなんて行動、褒められたものではないが戦略は戦略だし、あのくらいならばまだ咎められる範囲でもない。


(……結構、まずい事になってきたかも)


心をジリジリ炙られるような、そんな感覚に似た焦りを感じながら走る生徒たちを食い入るように、じっと見た。

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