四十五話 保護者verオールテンション×天才ポンコツ少女=ブレーキ不在
宣言通りちゃんと20時に投稿出来ました……よかったー。
待っていてくださった方ありがとうごさいました。
あと1話で三章(登場人物紹介とまとめは抜かす)本編が完結いたします。
どうぞよろしくお願いします。
ハロウィン騒動を終え、一旦寮に帰り簡単に湯浴みをしたり、朝食をとったりと支度を終え、僕、華道のあは寮を出た。
結局一睡もしないままだが、なんだか妙に頭は冴え渡っている。
徹夜をすると一周回ってハイテンションになったり、頭が冴え渡るという現象があったりなかったりするそうだが、今の僕はそれだろうか。
――ただ、冴え渡った頭で僕は猛烈に後悔の言葉を吐き出していた。
(ヤバい、れいになんて言おうぅぅぅっ!!)
あの時は妙にハイテンションだったから?正気を失っていたから?
(ダメだぁぁぁっ!!言い訳にしかならないっ!!)
そう、僕が今頭を悩ませるのは明け方、生きていることにホッとしたやら、捨て身覚悟の手段に怒ったやら色々な感情がごった返して勢いで抱きついたことに対してこれでもか、というほど頭を抱えていた。
(れいの記憶がぶっ飛ぶならこのタイミングであってほしかった……いや、凄く不謹慎だけども)
普段じゃ絶対に考えないようなことを考え、時を巻き戻せないかと考えだすくらいにはなかなか追い詰められている。
(いや、でも後半の方はれいも抱きついてきたし……いやぁぁぁ待って本当どうしよう)
そう考えながらも、足はいつもと同じく、れいを迎えに行こうと女子寮への道を順調に進んでしまっている。
(ヤバいって、流石にヤバいよ、勢いでれいに抱きついちゃうとか……あぁぁぁ、もう誰か埋めてくれ)
「どうしたんですか?」
「いやーね、もういっそのこと埋めてくれと」
「そうなんですか……埋め、えっ!?」
僕はその当時、声がかかったことにも気づかず、そのまま自分の思考をポロポロと語り出してしまった。
「もしくは何処かの池に沈めてほしい。あ、なんならそこの噴水に沈んでこようかな」
「沈めるっ!?」
うん?この声は誰だろうか。
「のあ、早まらないでくださいぃっ!!」と涙目で訴えてくるのは黒髪に特徴的な紅い瞳、それはさっきから再三頭のなかに上がっていた僕の幼馴染、月乃玲明だった。
『ザッ』
「のあぁぁぁぁっ!?」
その存在に気づくなり、僕は三つ指ついて土下座した。
尚、ここは外であり、他生徒も多数通る大通りである。
「のあっ、のあぁっ!!先立つ不幸をお許しくださいとか言いませんよねぇっ!言わないでくださいぃぃっ!!」
今の状況を一旦整理しよう。
比較的ブレーキを担っている僕がオールテンション、そしてもう一人は微妙にズレた思考力の持ち主。
そう、つまり何が言いたいかというと――
ブレーキが不在だった。
* * *
「で、弁明は?」
朝からそんな騒動を起こした僕たち二人は今、生徒会室で風夜先輩から静かな圧をかけられていた。
まずは、朝に遡ろう。
『死なないでくださいのあぁぁぁ!』
『本当にごめんなさいぃぃぃ!!』
と、全く違うことを言っているのに、二つセットにすると自殺しようとしている生徒と、それを止めようとする生徒の構図が出来上がった。
さらにそれをみた周りの生徒が只事じゃないと騒ぎ出し、近くを通った風夜先輩がとりあえずは現場を収集させ、放課後、事情聴取をする……ということになり、今に至る。
授業が終わったと思ったら廊下の柱の陰に、ひっそりと佇んでおり、生徒達に注目をさせないためだとしても、それはさながら死神のようだった。
わざわざ風夜先輩が二年の教室まで迎えにきたあたり、絶対に逃さないという意志も感じる。
そんなこんなで、授業が終わるなり生徒会室まで連行されたのが数十分前。
風夜先輩からこれでもかというほどお説教をくらい、そろそろ足がジンジンし始めた……というところでただ今弁明タイムが与えられた。
「あ、えぇーっと……」
「多分何から話せばいいかわからないと思いますので私から聞きます。……月乃会計、「死なないで」とは?」
恐らく一番気になるところであったのであろう疑問が真っ先に訊ねてくる。
「何故かのあがぼーっとしたまま歩いていたので「どうしたんですか?」と聞いたら「埋めてくれ」と言われたので…………」
なんだろう。風夜先輩の視線がすごく痛い。
無表情ながら突き刺すような視線を向けられる風夜先輩のこれは一種の才能では、とすら思う。
「他には?」
地獄の時間はまだ続く。風夜先輩は追い打ちをかけるかのようにれいに続きを促してきた。
「え、後は……「埋めるっ!?」と聞き返したら「もしくは池に沈めてくれ。なんなら噴水に沈んでこようかな」と言われて、何が何だかわからなかったんですけど急にのあが土下座してきたので遂に覚悟を決めてしまったのかと…………」
ヤバい、自分のしたことながら奇行すぎる。
本当に埋めてほしい、もしくは沈めてほしい。
「ありがとうございました」とれいの話を風夜先輩は締めくくる。その声は絶対零度とも言える冷たさがあり、周りの温度が下がっていっているような気すらしてくる。
無論、その声で射抜こうとしているのは僕だ。射抜かれるのが先か、氷像にされるのが先か、なんならどっちもかもしれない……と、どうでもいいことに意識を飛ばし、現実から離れ……たかった。
「華道書記はなぜそのような発言をしていたのでしょうか?」
「……ない」
「……?もう一度言ってもらえますか?」
「言え……ないです……」
『えぇ?』
同時に疑問の声を上げたれいと風夜先輩を前に、僕は羞恥心から恐らく真っ赤になっているであろう顔を俯かせながらぼそぼそと呟く。
「……本っ当にすみませんでした。本当に……今回の責任は全部僕に回していただいてかまわないので……っ!後生ですから……本当に、本当にっ!暴くのだけはやめてくださいっ……」
だって恥ずかしすぎる。
勢いで抱きついてしまったことを謝りたくて散々空回りした挙句、騒動をおこし、なおかつそれを先輩、しかも生徒会長に話さなくてはいけないとか本当に拷問すぎる。
初めはなんの冗談かと疑ってかかっていた風夜先輩も明らかに普通ではない僕の剣幕に押されてぽかんとしていた。……これは若干引いているような気もしないでもないが。
「わかりました……全ての責任を負う覚悟があるのなら、これ以上追求はしないでおきます。
ただ、二つ条件を課します」
「ありがとうございますっ……それで、その二つの条件とは……」
「一つ、今後このような騒動は起こさないこと」
想像通りの、風夜先輩らしい一つ目の条件に反省の気持ちも込めつつ、こくりと頷く。
そして、続く二つ目の言葉を待つと――
「二つ、華道書記は月乃会計に謝りたいことがあるのなら今、謝ること。それが解決するまで生徒会室から出てこないように」
「では」といい、こちらの言葉も聞かずに席から立ち上がると風夜先輩は生徒会室の入り口の扉から消えていった。




