六話 アンポンタン呼びして許されるのはたぶんこの人ぐらい
さらに翌日、私、月乃玲明は生徒会室に呼び出しを受けた。流石にあれくらいのレベルのテストなら一点も落としてはいないだろうと思った。だがしかしテストそのものが間違っている可能性があるのだ。
そこまで生徒会役員になりたいとも思っていないのだからそのまま採点してしまったようだったらテストそのもの間違ってる可能性があるのでは……と言おうと思った。
のあに連れられ生徒会室まで来ると初日のように座ってまつ風夜先輩とそのそばに控える峰先輩、一条先輩がいた。
「月乃会計。テスト結果は満点だったがというわけなので生徒会役員に再任したいと思います。……とは言っても今回のことは内部での事件なので表向きは何も変わりありませんが」
「あの……」
「はい?」
再任の流れに向かってしまったのでちゃんと申告することにした。
「テストそのものが間違ってたのでは……生徒会で用意したテストがあんなに簡単なのはっ!?」
言った瞬間皆が吹き出した。解せぬ。
「いやぁこりゃあ斜め上だった」
「やっぱ化け物だろ」
「そっちに行きましたか」
「れいっ……っふ……」
呆れたように吹き出した風夜先輩が言う。
「心配いりません。あのテストは私たちも難しいと思うちゃんとしたテストです」
……と言うことは先輩たちは数学が苦手だったのだろうか。
「先輩方、数学が苦手なのですか」
「だめだこれ」
「俺ら三年でも成績上位の方だぞ。あのテストが難しいってことだ」
「わかったか?」と反芻されるがそうなのだろうか?としか思えない。やっぱりそんな難しいものができると言う実感などない。
「とりあえず再任ということで、明日から放課後は生徒会室に来るようにしてください。ここから一週間程度は業務を教えます」
――何やら再任に決まったようだ。解任の方で進むと思っていたのに。なんだか空気についていけずまだ呆然としてしまう。
まぁとりあえず役目を受けたからにはちゃんとやろうと密かに決意した。
その日からの放課後は実に情報過多であった。
「あーー。だっるい。何もやりたくねぇ」
と言いつつ全ての業務を終わらせ、こちらの手伝いに回る一条先輩。
「あ、資料無くした」
「ばっかじゃねぇの?お前」
一日一回は絶対無くしものをする峰先輩。
「…………」
後ろで「しょうがないじゃん〜」「何がだよこのアンポンタン」と騒ぐ二人を気にも留めず黙々と作業をする風夜先輩。
先程から馬鹿だのアンポンタンだの読んでいるが峰先輩ってかなり高位の家の出では……?大丈夫なのだろうか……。
「れい、ここはこっちの資料と併せながら確認して――」
唯一の癒しになりつつあるのあ。他の先輩たちが個性的すぎるのだ。そして怖い。特に一条先輩、主に一条先輩。
「元々こんなんだから気にしたら負けだと思った方がいいよ、れい」
騒ぐ当事者二人は気づかないし風夜先輩はそこの二人だけでなく世界の全てをシャットアウトしているしのあに至っては諦めの境地だ。もうこれは慣れとしか言いようがないのかもしれない。
ただまぁ全員仕事はしっかりできているのでいいのだろう。多分。
そんなこんなでいつも何かしら問題は起こる日々だが再任されて一週間ほど経つ頃、割と洒落にならない問題が起こったのだ。
* * *
「……あれ。珍しく鍵があいていない……?」
今日も生徒会室へと赴く私、風夜凛はあいてない生徒会室を前に珍しいこともあったな、と思った。
いつもなら峰副会長が最初に来て、戸締りをして帰る。ただ今日はあたりを見回しても峰副会長の姿はなく私一人がぽつんといるだけだ。
鍵は本来職員室に返すものだが何せ職員室は一階。対して生徒会室は四階。毎日使うのにいちいち返すのは面倒……ということでいつも生徒会室の隣にある資料室の、机の花瓶の下に置くようにしている。まだ峰副会長が来ていない今、今日もそこに置いてあるだろうと花瓶に手を伸ばすも――ない。
本来あるはずの鍵がないのだ。
もしかして鍵の置き場所を知らない月乃会計が職員室まで戻してしまったのだろうかと職員室に向かうとちょうどその方向からこちらへ向かってくる峰副会長とたまたま合流したらしい一条庶務がいた。
「凛くん!いやーちょっと困ったことになってて……」
「おいアンポンタン!この様子を見ると会長も、もうわかってるだろ!そっちより職員室にもない件を話せよ。会長、おそらく見に行こうとしてたんだろうが職員室にもない。このバカがなくした訳でもないらしい」
「……となると人為的に持ち去られた線が濃厚になってきますね……」
ここにいる三人はまず動機がないため除外。華道書記も同じく。……立ち位置的に一番扱いにくいのが月乃会計だ。現在の様子を見るに他生徒会役員同様、動機がない……が月乃会計の記憶がないというのが全て演技で裏に何かしらある。という線もない訳じゃない。
ただ生徒会室の鍵を盗むなど中にある情報か生徒会役員が困るくらいだから中の情報が欲しいなら月乃会計経由で手に入れられるし……いやでも裏があるとするならその存在が自身で情報をとりに行くためなら……とか、考えて考えて答えは出ずとも考え続ける。
「話は聞きました」
だから後ろに来ていた二人に気づくことが出来なかった。
後ろに来ていたのは華道書記と月乃会計だった。いつからかそこにいて話の概要は伝わってるようだった。探すのを手伝ってくださいと口にしようとした時。
「あの……」
頼りなさげな自信のない声で月乃会計が呼びかけてきた。
「どうしましたか?」
次に月乃会計から発せられたのは耳を疑うような言葉だった。
「……犯人がわかる方法があります」
合計100pv超えました!
無名で駆け出しの綾取なので10いったらいいな……!くらいの気持ちだったのでとても喜んでおります。
なろうとしては最底辺のpvでこれくらいで喜ぶ人は少ないのかもしれませんが綾取は超絶嬉しいのでお礼を言わせてください。
見てくださった方本当にありがとうございます!