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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
三章 学園祭準備編
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三十三話 それぞれの思惑


「ひっ、え」


私、月乃玲明の喉が小さく悲鳴を漏らしたのは目の前にいた「吸血鬼」という存在に衝撃を受けたから、というだけではない。私の目の前……もう喉元寸前にその顔があったからだ。


(噛まれる――っ!?)


そう思い身をひこうとしたが、僅かな差でその牙からは避けられず噛まれそうになった瞬間――今まですぐそばにいた吸血鬼をも押し出す形でガラス壁が作られた。

なに、なぜ、なにがおこった?思考がままならないまま、ただ目の前にある状況、吸血鬼をとりあえず引き剥がせたことに安堵する。


「お嬢様、走りますよ!」


安心したのも束の間、ライに強く手を引かれ、走り出した。チラッと後ろを振り返ると、もう体制を立て直した吸血鬼はこちらを追ってくる。


「本当はこんなつもりなく、普通に外に出るつもりだったのですが……そうも言ってられなくなりました。

とりあえず話はあの吸血鬼を撒いてからです」


珍しく余裕のない表情でそう告げたライはひたすらに私の手を引き、走る。


「この辺りのっ、構造ってどうなってるのでしょうか!」


運動に慣れない体を動かすのはそれなにりしんどいし、そんな中では会話をするのも一苦労だ。しかしどうにか生き残るためには一つでも情報を得て頭を回さなくてはいけない。


「館の地下は一本道です」

「障害物や撒けそうなポイントはっ?」

「……良くも悪くも障害物はなし、唯一撒けそうなポイントは館の一階(うえ)に繋がる部屋だけです」


そこはどれくらいの距離ですか、と聞こうとして目の前に獣のような――()()と、かろうじて人の形を残しているが言葉にするのも悍ましいほど体のあちこちが欠けた何かが目の前に現れる。


「まだいたのっ……!」

「ライ、これは――っ!?」

「この館を餌場にしていた魔物と、餌だった元人間。

今は吸血鬼の眷属ですがね」


そう、答えながらライはいつのまにか出した金色の短剣で無数の化け物たちの首元や心臓部をめがけて刃を振るう。


「お嬢様、この状況は私のミスです。お嬢様だけなら逃げられる。――今すぐこの場から逃げてください」

「ライはどうするんですか!!」

「私だって、無策で残るわけじゃありません。……真っ直ぐ行って突き当たりの壁を押せば回転して先ほど伝えた部屋に出ます。そこまで行けば後はわかります」

「でも――」

「いいから行ってくださいっ!!――お嬢様がいない方がまだ動きやすいんです!」


ぐっ、と私は言葉に詰まった。

一応、それなりに魔術を使うことはできるが実践経験は皆無。この状況でどう動くべきかの判断がつけられずにいる時点で足手まといだろう。


「わかりました。ライ、無事でいてください。誰か、見つけてっ……助けにきますから」


だから、それまで無事でいてくださいっ……と、呟き、私はその場を後にした。


「……来てくれなくても大丈夫なのになぁ」


一瞬、目を見開いて……ちょっとだけ、砕けた笑みを笑みを浮かべたライの顔は、何故だか印象に残った。


* * *


(この館、窓がないっ……!)


外に出るべくして窓を探し始め、数分。僕、華道のあは今更ながらこの館の異常な造りに気がついた。


この館ははじめから異常なほど暗く、燭台の灯りしか頼りにできる灯りがなかった。それがまずそもそもおかしかった。今日など、いつもより街に灯りがつき、明るいはずなのだ。その灯りが一切入ってこない時点でこの館の造りは異様だと気づくべきだった。


「どうするべきか……」


さっそく手詰まりになってしまった。こんなところで躓いている場合ではない、早くしないと何があるかわからない……と、焦る胸をもう一度たたいた。


窓がないとなるとやっぱり正攻法で出るしか方法はないのだろうか。


ほんの数秒、判断に迷ったが、その迷っている時間すらも無駄だ。と、結局は今出来ること――謎を解くことで突破口が見つかるだろうと期待した。


――この館の主はそんなに甘くないことを知りもしないで。




謎が書かれたカードはれいが持ったままだったため、できる限りの内容を思い出しながら六十四の位置にあたるであろう場所を探し出す。


(謎には……確か、「娘を起こせ」と書いてあったはず)


今までの謎の傾向から娘、を模した何かがあるのだろうと勘ぐり、それらしき何かを探す。


――「それ」は思うより早く見つかった。


「娘」を表すであろう、可愛らしい少女の飾りがついた箱型のオルゴールであった。

箱が開くことはないが、箱の側面にはハンドルがついており、そのハンドルがオルゴールを鳴らす――「娘」を起こす鍵なのだということは自然と理解した。


くるくると回すと淋しげな音色が響き、ギイっと音を立てて止まる。


その音が止まると同時にカチッという音も響き、予想通り、その箱が開き見慣れた白いカードがぽつりと入っていた。


そのカードに書かれているであろう謎を考えながら、そのカードを見て――予想は裏切られる。


『誰も館から、出すつもりはない』


謎でもなんでもない。この館の全貌を告げる、絶望の一言がそこには記されていた。

そろそろ答え合わせターンに入ります。

ギリギリ四十話内に抑えられそうな……。そんな三章、クライマックスですがよろしくお願いします。

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