二十五話 天へつながる道の謎
扉が閉じられ、外と区切られた暗い暗い闇の中は私たち、月乃玲明と華道のあの二人だけしかいない静寂だった。
「さてと!それじゃあちゃっちゃと謎解いてお菓子ゲットしよう!――紅の館攻略隊、頑張ろー!」
『おー』
急に言い出された「紅の館攻略隊」には触れず、かと言って呼びかけまで無視するのは忍びなかったので緩く返事をした。
「紅の館攻略隊」は「なかよし大作戦」よりマシな気がしなくもなくもないがとりあえずノーコメントで。
「謎ってどんな謎なんだろうねー?まぁどんな謎でもお菓子のためにきっと解いてみせるけど!」
「私もわかるところは手伝います。頑張りましょう」
と、意気込んでいる間に明かりが見え出す。
少し進んだところは突き当たりとなっていて、そこから先は左右に道が伸びているようだった。
正面の壁には一輪の青薔薇の絵画があり、手前にある小さな机には火が灯った二つの燭台と一枚の紙切れが置いてある。
「あ!早速謎が書いてある!」
「どんな謎ですか?」
先に紙を覗き込んでいたのあから声が上がる。
『天へつながる道を先ずは三つ進んで二つ下がれ。次に六つ進んで一つ下がれ。最後に三つ進んでその地を踏み鳴らせ』
「……どういう意味でしょう?」
「え、まって、れいもわからないの?」
『……』
さっきまであんなに意気込んでいたのに、早速行き止まりになってしまった。
「とりあえずここにある通り何歩進んで何歩下がるってのをやってみる?」
二人で息を揃え、三歩進んで二歩下がり、六歩進んで一つ下がり、三歩進んで『どん!』とその場所を踏み鳴らしてみた。
「……何も変わらないね」
「うーん……いや、でもそもこの問題、ちょっとおかしくないですか?」
「どの辺が……?」
「この問題の指示だと決められた数字に沿って動くので、何も考えず、単純に計算するなら何処かの場所から合計九歩動いたのが答えになるはずなんです。
でも人の歩幅が違うので同じ場所からやったとしても結果が違ってきちゃうんですよね。
だから問題としては欠陥な気が……」
少し考え込んでいたのあから、「いや、ちょっと待って」と静止の声が掛かる。
「この『天へつながる道』がその条件をクリアできるポイントなんじゃない?……逆に言うならこの条件をクリア出来そうな場所が『天へつながる道』だと思う」
「たしかに……」
少し、希望が見え始めた私たちはお互い表情を緩めた。……なんだか安心感がある。
「決められた歩幅で歩ける、一つの大きさが決まってる道……というと何か目印のある道でもあるんでしょうか……。」
「それを念頭に置きながら屋敷を散策してみようか」
「そうですね。――行きましょう」
二人とも燭台を持つと、気分は同じだったのか左の道へ向かい、燭台の灯りを頼りに進んでいった。
* * *
いくらか歩いてついた部屋には古びたテーブルやムラのある赤色に染まったソファが置いてあり、他の調度品から見るに昔は絢爛豪華であったのであろう部屋は古びていて寂しげだった。
「うぉぅ、怖ぁ……」
「な、なかなか雰囲気ありますね……」
そんな部屋を見た二人の感想は同じようなものだった。
部屋の壁に備え付けられていた火の付いていない燭台に火を灯すと、いくらか明るくなり、あたりの細々とした部分まで見ることができるようになった。
「一つの歩幅が決まってる道とか、それに準ずるものならいいんだよね?」
「……そうですね」
何かを思案するようにのあは訊ねる。
「それなら――」
のあは地面を見ながら定められた歩数を歩く。
最後の一歩を踏んでも何かが変わった様子はない。
「あぁ、この部屋の床はタイルでしたね」
「そう、だからもしかしたら……と思ったんだけど何も起こらないかぁ……」
「タイルだとどこがはじめなのか基準もありませんし多分別の場所が答えかと」
「『天へつながる道』って何なんだろうね……」
「……ん?」
思わず一つの仮説ができ、声が漏れた。
一歩の歩数が決まり、その名の通り「天へつながる道」。日常にあるその道を、私は知っている。
「のあ!答えがわかったかもしれません。多分――です!」
はっと目を見開いてのあは無言で頷く。
「探してみよう」
燭台の火だけは消えないように気をつけながら出来るだけ早足で更に館の奥へと駆ける。
「――あった!」
館の奥の奥の方まで行くとそれは見つかった。
一歩の歩数が決められる点へ続く道。
「――階段。あってよかったね」
「外から見た館の造りだと二階がありそうでしたからね。きっとあるとおもったんです」
豪華な館にしては素朴な、特に装飾もなくひっそり佇む――隠されたかのような場所にある階段にのあが足をかけた
「まずは三つ進んで二つ下がる」
ことこと、と三段目まであがり一段目まで戻ってくる。
「次はなんだっけ?」
「えぇと六歩進んで一歩下がります」
指示に従い七段目まで進み、一段下がり今いる位置は六段目。
「最後は三歩進んで――」
『ダンッッ!』
更に三段進んだのあはその段を踏み鳴らす。
「……」
「……」
何か変化はないか二人とも耳を傾けて、あたりに集中する……が。
「何も起きない……?」
「何も起きないね、ぇぇっ!?」
何も起きないと思った瞬間、ガクンと音を立ててのあが立っていた段が下がった。
「のあ!?」
一瞬転がり落ちそうだったがなんとかバランスを取り直し、階段に座り込む。
「……心臓に悪い」
「これは流石に怪我人が出ますって……」
後でライに伝えようかなとか考えている内に、落ちた段差の奥……十段目の段の中が空洞であり、何かがあるのを見つける。
「のあ、そこに何かが」
「本当だ」
のあが取り出したのは最初の最初に置いてあった紙と同じようなカード。
「内容は?」
「えーっと『白黒では見えないもの。それが2-4 4-1を示した時、磁器を表す。1-1 2-1薔薇の見えざるものを見ろ』だって」
それは、二つ目になる新たな謎の示されたカードだった。
漢数字使うと凄く見にくいので数字を使っております。
気になった方いましたら申し訳ありません。




