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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
三章 学園祭準備編
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二十一話 銀色の招待状


私、月乃玲明は今日も一日が終わり、寮へと帰る。何か大きい事件がある訳ではないにしろやっぱり疲れるものは疲れる。


今日も今日とて寝台に倒れ込むこと数分、このままでは制服も皺になるし、寝てしまってはいけないため、とりあえず夕食の支度をしようと暗い部屋の燭台に火を灯した。


ぼぉっと燃え上がり、ゆらゆらゆれる蝋燭の火をただ、見つめる。


(……そういえば、あの手紙結局なんなんだろう)


きっと何も変わらないことを覚悟しつつ、机に置いたままにしていた銀色の封筒に手を伸ばす。


銀色の封筒の中に入った手紙は相変わらずざらざらしている。暗がりで文字が書いてあったとしてもよく見えないためさらに燭台に近づき――違和感に気づく。


「ところどころ、紙が弱くなってる……?」


燭台の火にかざすとよくわかる。普通のところと違う、紙が薄く――弱くなっている部分がところどころに見られる。


(もしかして――)


頭の中に残る知識の点と点が繋がり、ある仮説が思い浮かんだ私は口を開いた。


(ほむら)


火属性の中でも下級も下級の魔術を発動させる。下級の中でも底辺に近い魔術だが私は心配なため未だ詠唱をしている。

手にふわっと出てきた炎を出来るだけ薄く薄く、弱く、縮めながら――紙に近づけた。


「……あ」


ところどころが焦げ茶になり出し、不規則に表れ出たと思われたその焦げは繋がって文字を生み出し、そこそこ長文の手紙となった。


銀色の手紙。文の一番最初にさらりと書かれたその文字は「招待状」。

ハロウィンの夜――今夜、宵闇へと(いざな)うお誘いの言葉が書かれていた。


* * *


(結局来てしまった……)


寮の窓から魔術を使って外へ出て、手紙に記された場所へと向かう。

ご丁寧に人に見つかりにくいルートまで記されていたため、その記述を頼りに今は、学園を取り囲む森の抜け道を進んでいた。


(それにしてもこの招待状、差出人が書かれてなかったな)


いや、今思い返せば普通に怪しい。学園の抜け道を知っているのもだいぶやばいのでは?

と、今更ながら不安になり、引き返そうか迷うが指定の場所はもうすぐ近く、指定された時間までもう数十分とない。


そんな状況も相まって、なんとなく雰囲気に流されるがまま指定場所へとまた足をすすめる。


簡単なワンピースの上に軽くつっかけた私服用ローブが歩くたびに風になびく。

まだ秋とはいえ、十月下旬、もう明日から十一月ともなると吹き抜ける風はかなり冷たい。


剥き出しの手はなかなか寒いため、出来るだけ手を引っ込め、ローブの袖に包むようにして暖める。

辺りが森という不気味な雰囲気も相まって余計寒さを感じる気がする。


寒さに耐えながらも幾分か歩き続けると自分の辿る道の先にほんのりと光が見えだす。

終わりの見えた安心で森の中を一気に駆け出す。


(――綺麗)


到着した場所は学園の周りを取り囲む森を抜けた先にある高台だった。柵の下に見えるユールの街は橙色や金色の灯りが濃紺の暗闇を彩る幻想的な、別世界のような空間だった。


『シャラン』


遠くの光に混じって、私のすぐ近くにも灯りがあることに気づいた。ランタンの装飾が揺れる音がして、それが私を呼び出した人物であることを悟る。


その人物のもつ手元のランプが放つ光により、目の前の人はローブをすっぽり被り、俯いていて、さらには目元を覆う仮面をつけているため顔はわからない。ただ体格的に男性のように見える。


本格的に逃げた方がいいやつかどうかを考え、とりあえずすぐに走れるよう心構えはしながら声をかけようと口を開く。


「……あの。招待状の差出人ですか……?」


返答の声はないが、頭がこくりと縦に揺れたのが見えた。

一応質問には答えてくれることを感じとり、注意を払いながら質問をしてみる。


「……この招待状ってなんの――」


そこまで言ったところで目の前の男性は顔をあげる。ぱさりとフードが落ち、目元だけを隠す仮面をずらしたその顔は――


『えぇっ!?』


「ハッピーハロウィン。れい」


そこにいたのは、にやりと口角を上げた私もよく知る幼馴染だった。


* * *


「全く……のあも手の込んだ悪戯をしかけますね……」

「いやー!ごめんごめん。ちょっとやってみたくて」


とりあえず悪戯の種明かしが済んだのあと、私は一緒に近くのベンチに座った。

なんだかさっきまではらはらしていたのが馬鹿みたいな気がしてきた。まぁ、何はともあれ一安心。


「いや〜れいが炙り出しに気づいてくれて良かった」

「夜に見なかったら気づきませんでしたよ」


――そう、白紙の手紙の正体は炙り出し。

オレンジの果汁や砂糖水で、紙に文字を書き、乾かしてから火を当て、炙ると文字を書いた部分が他より早く焦げるため文字が浮き出てくるという仕組みだ。

あの謎のザラザラの正体は砂糖だったのだろう。


「悪戯をするためにわざわざ封筒を買ったり招待状を書くなんて本当に手が混んでますね……」


してやられてしまった悔しさと、ちょっとした凄いなという気持ちとで、じとぉっとのあを見つめる。


「まぁまぁ、そんな目で見ないでよ――ここからが楽しいんだから」

「……ここから?」


てっきり悪戯が終わったから解散だと思っていたのに、のあからの一言で私はまた顔を上げる。


「そう。ちゃんと「招待」したでしょ?ーー今夜、一緒に街を周らない?」


とびっきりの悪戯をするような無邪気な笑みでのあはその言葉を口にした。


数日遅いハロウィンですがどうぞよろしくお願いします

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