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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
三章 学園祭準備編
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十四話 【戦犯、風夜は語る!】腐敗した人間の死体が寄ってくるアレに似てる光景ですね


「どうしてこんなことになったんだい?」


生徒会室に向かった私、月乃玲明は目の前に広がる光景に対して言い放った峰先輩の言葉に心の底から共感していた。


「風夜様〜!!」

「峰様もいらっしゃるかしら!!」


男子生徒、女子生徒共に多数の生徒が生徒会室前まで押し寄せてきていた。

私たちは今、柱の影に二人隠れながら話をしている。


「峰先輩、お呼びですよ」

「……こんな中に放り込もうとするなんて月乃くん、なかなか非情だね?」


生徒会先輩陣の人気についてはのあから軽く聞いていたため、まぁまだ理解できる。いや、異常だとは思うが。

ただ問題点は何故今日急に、という点である。


「ほんとなんで急に……」

「すみません遅れました……ぁっ!?」


珍しく別行動をとり、遅れてやってきたのあも目の前に広がる光景に気づき驚きの声をあげる。


「華道くん、声抑えてくれるかい?……僕の居場所がバレる」

「あっ!……すみません」


そう言いつつ、のあもひそひそ柱の影へくる。のあが加わり柱の影の人口は三人になったが三人になったからといって何ができるわけでもない。


「なんで急にこんなことになったんでしょうね……」

「……あ」

「なんだい?華道くん?」


のあが「あ」と声を漏らした瞬間、峰先輩が聞き返す。若干怒りの滲む声が絶対にのあを逃さないと物語っていた。

とりあえずはやく教えろと言わんばかりの圧に負け、のあが口を開く。


「えーっと。運営の人で集めにわざわざ風夜先輩が出向いて呼びかけをしたんです。

その時に体育の部の参加者も集めてるって呼びかけしたので……参加希望者登録って今日からなのでそれで押し寄せたのかと……」


峰先輩の顔がかなり歪んだ。密かに「凛くん……」と聞こえた声は諦めに近かったと思う。

つまりここにいる人達は表向きは登録、本音は生徒会に近づきたい、という目的できているのだろう。

なんとか登録だけ済ませてもらえばそれ以上居座る理由も与えないのだが……。


「とは言っても参加登録箱やら用紙やら持ってこないと参加登録も始められないしねぇ……」

「どうにか生徒会室にさえ行ければ」


と、のあが呟いた言葉を掻き消す声があった。


「……うぉっ!?なんだこれ!?」


一条先輩の声に気づいた生徒たちが一気に群がる。「悠里くん……」と、また呟かれた声に、今度は同情がこもっている。

生徒会の中で比較的まとも枠(当社比)な峰先輩の気苦労は絶えないことだろう。


「あ!今なら一条先輩の方に群がってるので生徒会室に行けるのではないでしょうか?」

「確かに!生徒会室から投票箱持ってきて設置すれば参加登録も出来るし人もどうにかなるはず!


「……ただもうちょっと人は分散させたいですね……」

「……え?ちょっと、なんで二人ともこっちみて……」


のあと二人で顔を見合わせ、頷くと柱の影王国から峰先輩を追放した。峰先輩のことは今日の夕食まで忘れない。


「峰先輩、お達者でっ!!」


峰先輩が波に呑み込まれていくのを涙ながらに見送り、私たちは柱の影を出て、生徒会室まで走った。


「箱は私が準備するのでのあは紙とペンを!箱はどこにっ!?」

「生徒会室入って右手側入口から二つ目の棚の中!」


バタンと生徒会室の扉を思い切り開け、二人で部屋に飛び込み扉を高速で閉める。


「早くしないと一条先輩達が死ぬっ!!」


そう言いながら二人で生徒会室を漁り、お互い目当てのものを探す。――が。


「あれ?……ちょ!れい、大変!紙がない!」

「えぇっ!?」


ここにきて緊急事態発生。紙の行方がわからないという。


「魔道具使って枠線やらなんやら色々書いてあるのを白紙に移して作った特別な用紙だからあれがないと――」

「一条先輩ならわかりますかっ!?」

「わかると思う」

「私が一条先輩に聞きます!」

「え!?」


バンッ!と扉を開けて、扉の前に立つ。

一条先輩や峰先輩の方に多数が引き付けられてるとはいえこちらにも人はまだ多い。

そんな人波に呑み込まれてしまわないよう両足をしっかり地につけ目の前に手をかざす。


「――言霊を音に乗せ、音を風に乗せ、響け。音風速達術おんふうそくたつじゅつ


緑色の光がくるくると渦を巻き、それはいつしか文字になり、魔法陣になった。緑色の風がふわりと空気に乗って流れていき、やがて空気に溶け込む。


そこから数秒して私にだけ目の前にいる人々の音や声、ざわめきに重なり、別のざわめきが聞こえ出す。


「――あー、あー。一条先輩、聞こえるでしょうか?」

『月乃か!?これどういう仕組みだよ……』

「後で説明しますから。今はとりあえず用紙の位置を聞きたくて――」

『用紙なら箱の入ってた棚の上から二段目の引き出しだ!』

「わかりました。ありがとうございます」


そう言ってかざしていた手を退けると魔法陣も宙に溶け、一条先輩の声も重なったざわめきも聞こえなくなった。


「のあ!紙は箱と同じ棚の上から二段目の引き出しです!」

「了解!」


また、扉を勢いよくあけて生徒会室に入りながらのあにそう伝える。


「……あった!」


たくさんの用紙と筆記用具をつかんだのあと共に私も箱を持ち上げる。


「行くよ――」


扉を開け、人の間を潜り抜けながら数日前に設置した机の前まで行く。

机の隅に箱を置き、気づかずだれかにばらばらにされないよう筆記用具、容姿を並べ、のあが大声を出した。


「体育の部参加登録待ちの皆さん!お待たせしました!準備が出来ましたので生徒会の指示に従って登録をお願いします!!

――また、現在大変混み合っておりますので登録後は()()()()()お帰りくださーい」


皆さん登録に来たんですよね?他に用事なんてありませんよね?ということを言外に滲ませながら、のあは有無を言わせぬ口調で指示を出した。

その声を聞き、しぶしぶと言ったようにだが少しずつ人の波が列になっていく。


「次の方!空いたのでどうぞ!!」

「受付終了した方はこちらの方からお帰りください!」


二人で列の整備に回り、声をかける。だんだん、だんだんと人が減っていく。


やっと解放されたボロボロの一条先輩と峰先輩、だいぶ遅れてやってきた風夜先輩も終盤は一緒になって整備を手伝ってくれ、最後の一人が去った後は風夜先輩を除く他全員で崩れ落ちた。


こうして、この騒動は幕を閉じた。


――なお、忠告をしなかった一条先輩と、放り出した峰先輩からだいぶこってり絞られたことは、別の話。

風夜お嬢様は割と読書家なのですが幼少期何の間違いかゾンビVS人間のホラー本を読んだことがあります。

(多分風夜さんが伝えたいのはバイ○ハザードみたいな状況)

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