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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
三章 学園祭準備編
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九話 競争


駆け出したのあと風夜先輩をそれぞれのチームが見守る。


出だしはよかったが風夜先輩は次第に疲れが見え始め、コーナーに差し掛かる辺りではだいぶペースが落ちてしまっていた。


「頑張って!」

「会長もう少しだ!」


反対派チームは一心不乱に応援する。

その声援を受けてか、下を向きがちだった風夜先輩は前を向き、少しだけペースを早めた。

一方のあはというと出だしから全くペースを落とすことなく風夜先輩との間をどんどん広げていった。


「峰先輩!」


風夜先輩より一足先にたすき受け渡しゾーンへと入ったのあは峰先輩に声をかけながら赤いたすきを渡す。

一瞬の遅れは出たものの、比較的順調とも言えるたすきの受け渡しで、賛成派チームのたすきは第二走者へと渡った。


「風夜さん!もう少し!」


先にたすきをパスした賛成派チームを見送りながら白杜先輩は風夜先輩に声をかけた。

白杜先輩が助走をつけ、ちょうどペースが乗り始めたいいタイミングで風夜先輩の手から白杜先輩へとたすきが渡った。


「白杜さん、あとは頼みました」


そう絶え絶えな声で呟き、息を切らしながらこちらへ戻ってきた風夜先輩はどこかスッキリした顔だった。

……少しは楽しいと思ってもらえたのだろうか。


一方走っている二人といえば、峰先輩はいいペースを保ちながら進んでいく。が、ふと後ろに迫る影が。


「白杜先輩はっや」

「あいつあんなに速かったのかよ……」


後ろから迫るのは他でもない白杜先輩だ。

白杜先輩は怒涛の勢いで峰先輩を追い上げ――ついに追い越した。観客(ギャラリー)は呆然とする他ない。


そうこうしているうちに白杜先輩はコーナーに入った。それに続く峰先輩もコーナーに差し掛かる。


「れい!そろそろ順番だね」

「はい。行ってきます」


たすきを渡すゾーンへと入り、後ろを向くとすぐそこまで来ている白杜先輩と後ろに見える峰先輩がいた。


「悠里!任せたわ」

「おうよ、留紀!任された」


白いたすきを受け取った一条先輩が走り去るすがたを見送るとその名残の風がやけに染みた。


「月乃くん!」


峰先輩もたすきのパスゾーンへと入るのを見届け助走をつけだす。

開いた手にサラリと触れるたすきの感覚を感じ取ると思い切り走ってパスゾーンを抜けた。


「れい速い!!」

「頑張ってー!月乃くん」


賛成派チームからの声援を受け、さらにペースを上げる。

記憶を失ってから走ったことなど一度もなかったが何故か走る感覚は初めてじゃない気がした。


前を走る一条先輩にすぐにとは言わずとも着々と近づく。


「……っち!」


近づいてきた私に気づき、さらにペースを上げる一条先輩。

昨日は運動できなくても――なんてさんざん煽ったがやっぱり一条先輩は持ち前の才能によるものか異様とも言えるほど早かった。


「れい!頑張れー!」

「一条庶務、頑張ってください」

「月乃くんもう少し!」

「悠里ー!頑張れ!」


開始ラインの元でそれぞれのチームが応援している声を聞きながらコーナーに入る。

その声援をうけ、さらにペースを上げついに――


「――れいが一条先輩に並んだ!」


見ているメンバーからはわぁっと声が上がる。

その声は、歓喜と焦燥どちらだろうか。


並走したままコーナーを風のように走る。

一瞬だがみんなの声援も、一条先輩と戦っていることも全て忘れ、風になったような気がした。


気がつくと目の前にラインがある。

並走する一条先輩よりも早く、と心なしか大きな歩幅で踏み出し、ラインを踏むと同時に――


「ゴール!!」


審判であるミアの声が響く。走り切ってまだ止まぬ鼓動のなか結果の発表を待つ。

実際には数秒であったであろう発表までの時間は永遠にも感じられた。


「勝者は――賛成派チームの勝利です!」


わぁぁぁ!っと一気に声が上がる。

勝って嬉しいという気持ちとともに、何よりも楽しかったという気持ちが胸を占める。


「れい、お疲れ様!」

「のあも。峰先輩もお疲れ様でした」

「楽しかったね〜二人度もお疲れ」


同じチームであった峰先輩とのあと、お互いを労う。


「あー!!負けちまったかー。なかなか楽しかったな」

「心なしかスッキリするような気もしますね」

「ほら。だから運動はいいわよって言ったじゃない」


風夜さんもお疲れ様、と新たに知り合った(であろう)二人も会話を交わしていた。

団結力が高まるというのも本当らしい。


「これ運動やったことあるやつやったことないやつを上手い具合に混ぜたほうが楽しいよな」

「リレーだけでは面白くないので別の競技も足しますか」

「リレーは絶対入れましょうよ!」


お互いを労っていた声はいつのまにか議論の声へと変わっていた。運動した後で体の熱も心の熱も冷めきらないまで生徒会メンバーは白熱した議論を交わす。


そんな中、輪から外れた場所に佇む二人がいた。


「ねぇ、これきっと反対派チームが勝ってもこうなっていた気がしない?」

「奇遇ですね。きっとそうだと思います」


この勝負に巻き込まれた二人は遠目に議論を観ながらそう苦笑する。


赤みを帯び始めた空が議論に熱中する生徒会役員たちと見守る二人を優しく照らしていた。








番外編は諸々の都合上二章後、三章前に移動させました。

ご了承のほどよろしくお願いします。

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