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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
三章 学園祭準備編
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八話 胃に悪い空気


『……』


ひと通り授業が終わり、のあと共に生徒会室に来たのが数分前。ただ今、風夜先輩、一条先輩、対峰先輩、のあ、私で睨み合った状況が数分続いている。

なんだかデジャブな気がしなくもなくもない。


こうなったのはただ単純な話。

昨日はのあの体調不良ということで体育の部のことなど休戦していたがのあも復活した今、再戦の銅鑼が鳴っただけである。


「……睨み合っても無駄なのでとりあえず仕事をしましょう」


風夜先輩の呼びかけによりとりあえずは皆仕事に取り掛かった。

ただ何となく空気はギスギスしてる。胃に悪い。




「れい、れい」


みんなが仕事をやり始めて数分。席が隣り合ったのあからひそひそと話しかけられる。


「どうしましたか?」

「反対派を説得する案は考えついたんだけど反対派の二人をうまく乗せられる気がしなくて……」

「協力してほしいってわけですね」

「その案っていうのは――」


さらに距離を縮め、内容を聞く。

一条先輩が訝しげに見ている気がするがとりあえず頭からは弾いておく。


「――って感じ」

「面白そうですね――協力しましょう」


はやる気持ちを抑えながら来るべき説得(けっせん)の時を待った。


* * *


「さて、いい加減決着をつけるとしようぜ?」


再々戦(?)の火蓋が切られたのは一条先輩の声からだった。


「そうですね。いい加減はっきり決めましょう」


そして何よりあの風夜先輩もやる気である。


「最初に聞きますが風夜先輩も一条先輩も反対の意志は変わりないんですね?」

「もちろんです」

「変わるかよ」


二人の意志をのあが確認したところでこちらにちらりと目配せをし、また先輩達に向き直る。


「僕から決着を決める方法の提案があります」

「……内容は?」

「運動で競って決めるのはどうでしょう?」

『は?』


一条先輩、風夜先輩といった反対派の二人だけでなく思わず峰先輩まで「なんて?」と聞き返している。


「運動したくないから反対してるのに運動で決めようって……華道とうとう馬鹿になったか?」

「頭の良さについてはご心配なく。もとより諦めてます」


生徒会がそれでいいのかよ……と一条先輩は呟く。

のあって勉強苦手なのだろうかと密かに気になった。


「ただ運動をしたこともないのに頭ごなしに否定するのはどうかと思いまして」

「やらないったらやらない」

「――いいんじゃないですか?一条先輩。生徒会メンバーでやるだけならもし運動が出来なかったとしても醜態晒すことにはなりませんよ。だから安心して挑戦してみませんか?」

「な――」


とうとう私の出番である。

二人を乗せるのに有効な方法を考えて思いついた結果は――


「負けるのが怖いんですか?」


煽りまくることだった。

一条先輩は負けず嫌いだ。「無理だろう」と言われることが少ないこの人だからこそ、その言葉に強く反応し覆そうとする。


「怖ぇ訳ねぇだろ。あぁいいぜ、やってやる」

「一条庶務……」


風夜先輩は乗せられていることにちゃんと気づき止めようとしているが一条先輩の熱に押され、止めることが出来ずにいる。


「では勝負、受けてくれるんですね?」

「おう。負けても泣き面晒すなよ?」


ギラついた目でのあの言葉に軽口を返す一条先輩はそれはそれは見事に乗せられていることに気づかず勝負を受けた。


* * *


翌週、第一競技場と呼ばれる設備を借り対決が行われることとなった。

第一競技場の中心部の実際に使う場所は土で造られ、競技場所をぐるりと囲むように客席がある。

広さもなかなかのものであり、こういうところでこの学校の財力を感じる。


「ここであっているかしら?」


生徒会メンバーから遅れて競技場に入る人の姿があった。


「玲明、のあ、お疲れ様。審判は公正な判断するけれど審判席から応援してるわ」


そう、同じクラスの雷山ミアである。

反対派、賛成派どちらから審判を選ぶか揉めたため、私とのあで頼み込みミアに来てもらった。


辺りを見回すと、私も含めあまり見ないつくりの服を着ている。

とりあえず試しということだが他国の学校で運動の際に用いられる体育着という柔らかく軽い布で作られた上下セットの服を取り寄せ今回対決をする()()は着用し、運動靴と呼ばれる動きやすい靴を履いている。

……なんというか試しだと言っているのに服まで軽く買うところに貴族を感じた。


のあと私以外の他メンバーは自腹で体育着を発注していたが私たち二人にはそのお金がないためとりあえず学校に立て替えてもらっている。

後で国に必要金として体育着代はいただこう。

さすがにこれくらいは国も払ってくれるだろう。


「そろそろ始める?」


そう声をかけるのは生徒会メンバーではないがこの勝負の場に呼ばれた六人目――白杜留紀先輩だった。


「……というか私は医師の娘だし運動は健康にいいという論文も読んだことがあるから賛成派なのだけれど……なぜ反対派にいるのでしょうね?」


留紀先輩が半眼で見るのは一条先輩だ。


「あのままだと二対三でこっちが不利なんだって」


言い訳し出す一条先輩。……なんだか白杜先輩に対する態度はちょっと柔らかい気がするのは気のせいだろうか。


「まぁいいわ。華道くん、月乃ちゃん、あと峰。私も反対派から応援してるわ」


にっこりと笑った白杜先輩はくるりと一条先輩の方へ向かうと手を伸ばしたり足を伸ばしたり準備運動を始めた。


「ではルールの確認をします。今回はリレーの一本勝負。賛成派チームはのあ、峰様、玲明の走順で赤いたすきを繋いでください。反対派チームは風夜様、白杜様、一条様の順で白いたすきをつないでください」


「走る場所はこの丸いラインの外側。一人半周走っていただきます。たすきを次の走者へ渡せるゾーンは二本の縦線の間で、最終走者が先に開始ラインを踏んだチームの勝利です」


ルール説明がおわると最初の走者であるのあと風夜先輩がそれぞれの色のたすきを持ち開始ラインに立つ。


「では、位置についてよーいスタート!」


にっ、と笑ったミアの掛け声によってのあと風夜先輩が同時に駆け出した。










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