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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
三章 学園祭準備編
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五話 弱々しい幼馴染


二時間目の授業を終え、休み時間になった私はミアに訳を伝え、別れると真っ先にある場所に向かった。


講堂から本館へと戻り二階へは進まず真っ直ぐ一階を進む。他の扉よりいくらか威圧感を与えない、簡単な細工の扉を叩き、声を発した。


「失礼します」


いくつかの寝台かまず初めに目に入った。そう、目的地はのあのいる医務室。のあの姿を探し、寝台が一つだけカーテンに覆われていることに気づく。


「開けますよ」


そう軽く断ってカーテンを開いた。

見覚えのある茶色い癖っ毛。私の幼馴染、華道のあだ。


「ん……ぅうー……」


目は覚めたようだがやっぱり頭を押さえてる。トロンとしたままの青い目を何度か閉じて開くこと数秒。あまり呂律の回らないらしき口で言葉を発した。


「……れい?」

「そうです。私です」


そういうと眉を下げたへにゃりとした笑い方になりこちらを見た。


「来てくれたの?」

「そうです。授業に戻れたら……と思ったんですけど無理そうですね」


するっと額に手を伸ばし、触れるとじんわりと熱が手を伝う。

頬はぼんやり硬直したままだしどこか夢を見ているような雰囲気なのも熱のせいだろう。


本当に熱あったんだぁ……と呟くのあは今まで一体なんだと思っていたのだろう。


「教師には私が言っておきますし今日は寮へ戻っては?」

「んー。そうする」


とりあえずのあのお見舞いという目的を果たし帰ろうとすると、くいと何かか引かれた感覚を感じた。


「ねぇ、れい」


私の袖が俯いたままののあに引かれていた。相変わらずの熱い熱が今度は袖口から染みてくる。


「手、ぎゅっとしていい?」


効果はあるのか聞こうと口を開きかけて――やめた。

珍しく弱々しいのあの願い事に無下に水を差すのはなんだか気が引けた。


「……どうぞ」


くるりと振り向いて手を差し出した。

それをのあは両手で包み込み俯いたまま握っている。

どく、どくと強い鼓動が指先から伝わってくるような気がした。


「……ありがと」


するりと解けた手から逃げた熱がなんだか少し恋しいような気がした。

私にはわからない効果であれどのあの願いだし何かしらいい作用があったならいいなと思う。


「では、私は戻ります。寮まで一人で歩けますか?」

「うん。多分大丈夫」

「お大事に」


そう言って医務室を出た。

のあが居ないというのはやっぱりちょっと寂しい。

明日には治るといいな、と思いながら次の授業に向かい、また一歩足を踏み出した。


* * *


「華道が熱?」


今日の全ての授業が終わり、生徒会室で今日はのあがいないことを伝えると一条先輩はそう呟いた。

昨日までピンピンしてたのあが急に熱を出したことに違和感を感じたのだろう。


「今日、結界の授業があって火属性の結界を爆破させた人が居たんですよ」

「へー。あの爆発何があったんだろうと思ったんだけど結界だったのか」

「結界爆発なんて去年はなかったよね〜」


いや、毎年爆発してたまるか。という言葉は押しとどめてまた口を開く。


「その爆発で草に燃え移った火をのあが防御式結界張って、真空状態にして鎮火したんです」

「あの野郎また、魔力消費が激しいものを……」

「あぁ、話が見えてきました。華道書記の体調不良は魔力欠乏症ですね?」

「そうです」


風夜先輩からの疑問に肯定の意を示した。


「それにしても魔力欠乏症で熱が出るなんて珍しいですね」

「そうなんですか?」


魔力欠乏症について自分も聞き齧った程度なので症状について詳しくは知らなかった。

とりあえず魔力が不足して起こる魔術師の症状で体調不良が起こるとだけ。


「魔力欠乏症に一度なってしまったら体を休めながら自分で魔力を取り込むのが一番の解決策です。逆に他の人から魔力をもらうと疲れた体に馴染まなかったりするので」


あぁ、と何かを思い出したように呟く風夜先輩は言葉を続ける。


「魔力欠乏症になった人の中でも稀に見る症状ですが自分の体に合う属性以外の属性も一時的に取り込んでしまい、体で反発して熱が起こることもあるそうです。もしかして華道書記はこの症状が起きてるのではないでしょうか」


さぁっと血の気が引くような気がした。のあは大丈夫なのだろうか、治るのだろうかという心配が頭を駆け巡る。


「その症状の場合はその属性の魔力を抜くのが一番です。握るだけで魔力を吸い取ってくれたり、逆に与えたりする魔石というものもあるのですが今回の場合、魔石は向きませんね。とは言っても反発する魔力は抜かないといけませんし……」

「ねぇ、それ僕が華道くんの魔力だけ「再生」して魔力欠乏症になる直前くらいまで戻してあげれば大丈夫かな?」


今まで黙って話を聞いていた峰先輩がふと口を開く。

「再生」という言葉を聞き、前見た白杜先輩と一条先輩の記憶も組み立てて「再生」していたんだと気づく。


「そんなこと出来るんですか?」

「うん。僕の魔術の場合、実体があるものは流石に無理があるし今回も条件はぎりぎりだけどほかの魔力が混ざる直前まで戻して今度はほかのまで取り込まないように指標を与えればあとは自然の治癒力に任せてどうにかなるかなって。凜くん、どう?」

「えぇ。おそらくは峰副会長のその能力で解決できると思います」

「よし、じゃあ決まり。今日はちょっと早めに上がらせてもらうよ」

「峰先輩、その……いいんでしょうか?」

「もちろん。だって共犯者であり貸しがあるからね」


朗らかに笑んだ峰先輩はちょっとだけ悪い顔をした。三人で作戦を考えた仲良し大作戦をちょっとだけ思い出した。


「ありがとうございます」


そう一度丁寧にお辞儀をして峰先輩が早く上がれるように一刻も早く仕事を終わらせようと手を動かした。

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