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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
三章 学園祭準備編
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四話 恋愛方程式


「なんかどっと疲れたね……」


隣で青白いような顔をしながら呟くのは幼馴染華道のあだ。


爆発事件についてはただただ生徒の注意不足であったのと結界の魔力にムラがあり、魔力密度の高い場所ができてしまったためそこに刺激が加わり爆発したらしい。

怪我人も出ていないのと事件性はないようなのでとりあえずはよしとしよう。


それはそれとして少々青ざめているのあはこの事件に被害を被った一人である。


爆発は辺りの草を焦がし、近くにあった別の火属性で作られた結界にまで飛び火しそうになった。

そこで活躍したのがのあである。


この前一条先輩達を囲った時のような半球体の防御式結界を張り、中を真空状態にすることで鎮火した。


しかし前回は私から魔力を流す術を使っていたためそこまで魔力の消費はなかったが今回は何もない状態でのあの魔力をそのまま消費したのだ。


そもそも防御式結界とは一瞬壁のように張り、その場の攻撃を防ぐためにあるものであるため半球体にして何かを閉じ込める用途は元々想定されていないため魔力の消費が洒落にならないらしい。


「……頭、くらくらする。痛い……」


頭を押さえながらとぼとぼ歩くのあは本当に辛そうに言う。


「医務室行きますか?」

「うーん、いや、大丈夫。授業行けないことはなさそうだから」


そうは言うものの、のあの顔はやっぱり青いままだ。

魔術師のみによくある体調不良の原因に魔力欠乏症まりょくけつぼうしょうというのがある。


魔術師は自分に備わっている魔力の器が全て満たされている状態が万全である。

本来体を作る以上の余分な魔力はなくてもいいため余分な魔力は自由に使えるとされるが自分の体からいつもある魔力が抜けていくことで吐き気、頭痛、疲労、立ちくらみ等体調不良を引き起こす。

そのため理論上は体を作る魔力を動かさない以上は自由にできるが実際にはギリギリラインまで魔力を使うことは体調不良によりなかなか困難である。


相変わらず頭を押さえながら歩くのあをちらりと見る。魔力欠乏症は一時的な症状なため体が大気中から魔力を取り込んだり何かを食べて魔力を摂取すれば治る……とは言え何か自分にしてあげられることはないだろうかと思案する。

と、そこである呪文を思い出した。


「のあ、のあ」

「ん?」


のあのローブの袖口を引っ張りこちらを向いたところでとすっとのあの額に人差し指を当てる


「痛いの痛いの飛んでいけ?」


うろ覚えだったため疑問符がついてしまったが少しでも効果があるといい――と思いながらのあの顔を見上げる。


「……」


何故か真っ赤になっているのあがいた。熱まで出てきたのだろうか。

さらに悪化したのあを見て呪文が効かなかった……と少しだけ落胆するとともにのあを医務室まで引きずって行くことを決意する。


「……医務室行きましょう」

「へ?」

「熱まで出始めたとあっては私も容赦しません。大人しく医務室に連行されてください」

「え?……あ、うん?」


なんとなく歯切れが悪いのあはやっぱり渋ったが最終的には大人しく医務室に連行されてくれた。


* * *


「あら、玲明?のあと一緒に居ないなんて珍しい……」


次の授業場所である講堂へ向かうとミアからそう声をかけられた。

そういえばのあと別れて行動するのは初めてだったかもしれないと思い返す。


「さっきの爆発の鎮火にのあが協力していたのですが魔力を使い切ったらしく頭痛や熱がが出てきていたので医務室に送り届けてきました」

「うん?魔力欠乏症で熱ってあんまり聞かないような……」


まぁいいか、と出てきた疑問をひとまず置いたミアは一緒に座ろうと袖を引っ張っていく。


この授業で使う講堂では座る順番も特に決まっていないため自由に場所を選び座ることができる。

余談だが仲のいい友人と一緒に座ったり目の悪い人は自由に前に座れるとあって生徒たちにとっては都合が良くこの授業の先生はなかなか生徒人気が高い。


そんなこんなしているうちに先生も講堂へと入って来る。


「欠席者は?」

「華道さんだけです」


先生に聞かれ、そう答える学級委員。

淡々とした報告にすぎないが改めてのあがいないこととちょっとした――寂しさのようなものを実感させられた。


そうこうしているうちに授業も始まる。


「ねぇ、玲明」

「なんですか?」


開始早々ひそっと話しかけてきたのは隣に座るミアだ。


「のあとはどういう関係なの?」


はて、と首を傾げる。ミアは知っているはずではないだろうか。


「幼馴染ですよ?」

「……知ってる」


知っていたなら何故聞いたのか――というこちらの疑問はミアによって遮られた。


「質問を変えるわ。のあのこと、どう思ってるの?」

「どう……ですか」


難しい質問だな、とは口に出さずに思考の世界に入り込む。


どう思ってるか。


幼馴染で、目覚めた時からいる人で、面倒を見てくれて、協力してくれて……いないとちょっと寂しい。

のあはそんな存在だ。

それをどう思っているかと言葉にするなら……


「大切な人?ですかね」

「……及第点」


解せない。どこがいけなかったのだろうか。


「玲明。女子コミュニティではよく使われるから覚えておいた方がいいよ。どう思ってる?それすなわち恋愛関係について聞かれてるわ」


「どう思ってる?=恋愛関係は?」の方程式なのか、と一人納得する。

それはそうとして恋愛関係……?


「恋愛関係ってのあと、ってことですか?」

「……やーっと理解した」

「のあと恋愛することはないんじゃないかと思います」

「理由は?」


楽しそうな、からかうような、にやにやした目でこちらを見据えるミアはそう聞いた。


「恋愛ってはらはらどきどきするものなのでしょう?のあと一緒にいる時にあるのは安心感なので」

「安心感、ねぇ……」


まずそもそも恋愛感情以前に普通の感情自体がよくわからなくなったりもするのだから恋愛感情を抱くこと自体今後あるのか怪しい。

まだ何か探してつつきたいようだがもう何もないので是非とも諦めていただきたいところだ。


「玲明は恋愛したら相手にすごい惚れ込みそう」

「そんなことなりませんよ」


気づいたら終わってしまっていた授業をよそに、なんとなく不真面目なことをしてしまったという感覚と、それを凌駕する楽しかったなという感情が胸を占めた。




友達と授業中に喋る楽しさを覚えてしまった15歳児月乃玲明ちゃんです。

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