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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
二章 魔術病院編
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十二話 一つ目の真実


私、月乃玲明は今、幼馴染である華道のあと共に学校を出て馬車を乗り継いだ先にある白杜魔術病院へと来ていた。


「まさか本当に診てもらえるなんて思わなかった」


受付を終え、待合室で隣に座るのあはそう呟いた。

のあの言う通り、白杜先輩と一条先輩の喧嘩事件もありまさか診てもらえることになるとは思わなかった。さらに、白杜先輩が交渉から持ち帰ってくれた新たな提案など考えたこともなかった。


「しかも白杜先輩が交渉に行ってらから一週間で準備を整えて診察してくださるなんて……だいぶ気を遣わせてしまったような……」

「まぁまぁ。考えてもどうにもならないしありがたく診察してもらおうよ」


白杜先輩曰く研究生の診察実習として私を診ることにしてその監修に白杜先輩の父、医院長が付けば名目は研究生の実習に協力してくれた人。

ということになるので診察料を取らずに診てもらうことが出来る……らしい。


抜け道でアウトラインギリギリな気がしなくもなくもないがその提案をしてきてくれたということならまだ大丈夫なのだろう。


「にしても秋も深まってきたねー」


そう呟くのあの言うとおり街を彩っていた夏の緑がほぼ消えて赤や黄色に染まりかけ、目にわかるように秋になっていた。


「もう十月ですからね。……というと何気に私の記憶が消えてからもう一ヶ月になるんですね。日常が濃すぎて体感まだ一週間です」


生徒会室の鍵が盗まれたのを解決したり白杜先輩と一条先輩の喧嘩を仲裁したり……喧嘩の原因を作ったのは私だけれどそれはそれとしておいておく。


「生徒会の先輩達キャラが濃いからね……」


そう遠い目をするのあの気持ちもだいぶわかるくらいには生徒会で仕事をしたと思う。


「……そうですね。騒がしくもありますけど……賑やかでもあって多分そういう場所、嫌いじゃないんだなと思います」


過去の私をなぞってはじめた生徒会ではあったけれど今はちゃんと自分の意思で生徒会(ここ)に居れたらいいな、頑張りたいなと思うようになっていた。


ちょっとした日々も事件も、過去の記憶がない私の一ヶ月ちょっとの思い出を彩る鮮やかな絵の具のように思えた。


「これから学園祭だからねー。余計忙しくなるけどきっと楽しいよ」

「去年の学園祭はどうだったんですか?」

「うーん、実をいうと編入が決まったのが去年の一、二月くらいで実際に編入したのは四月だから去年の文化祭は知らないんだ」

「そうだったんですか」


私とのあは編入生だと聞いていたがいつから編入していたのかは聞いたことがなかった。


「なんというか、のあは学校によく馴染んでいてなんでも知ってるような気がするので私と一緒に編入した、というのがいまだに信じられないです」

「まぁれいは記憶云々もあるしね」


そう、話していたところで魔道具か魔術か、天井から降ってくるような声によって受付の番号を呼ばれた。


『三十七番の方、五番診察室にお入りください』

「あ、僕らの番号だね」


待合室の椅子から立ち、言われた五番診察室に行く。全体的に白色の建物だが所々に気が使われていたり植物が飾られていて大きい建物だが圧迫感を感じさせない造りだ。


扉の取っ手に手をかけ開く。私は進みたい、私の記憶を少しでも早く取り戻すために。


* * *


中に入ると一人の若い医師と一人、白杜先輩によく似た茶髪、茶色の目の男性がいた。


軽く会釈をして椅子に座ると若い医師による診察が始まった。

いつから、どのように、などなど簡単な質問に答えていくとようやく魔術による診察となる。


この医師の使う魔術は「透」の能力に基づき自由に調節しながら透視をするものらしい。

私の頭の中の臓器を一通り隈なくみたところで若い医師が一瞬固まる。


「……どうしましたか?」

「一瞬ですが何かの痕跡が見えた気がして……」

「代わりなさい。あぁ、あと長くなりそうだから一度戻って休憩してきなさい」


そう若い医師がいったところで医院長が代わるよう指示を出す。若い医師はペコリと会釈をし、足早に診察室を去っていった。


「申し訳ないね。他の医者の前じゃ一人の医師と患者としてじゃないと話ができないが白杜留紀の父親としてちゃんと挨拶をしておきたいと思っていたんだ」


そう穏やかに微笑むのは白杜先輩の記憶をつなげてみたときの印象とは随分違っていた。

今回こうして診てもらえているのからわかるがちゃんと二人で話ができて白杜先輩の意識も変わっていたならいいなと思った。


「白杜先輩にはお世話になってます」

「あの子が学校でもしっかりやっているようで嬉しいよ……さて、診察の続きをしようか」


そう言い、ネックレスを渡される。銀色の鎖についた翠玉色の石はきっちり正八面体にカットされている。ネックレス?と私ものあも首を傾げていたらネックレスを渡した訳も教えてくれた。


「その石は私の能力の補佐をしてくれる魔道具だ。付けておいてくれるかい?」

「わかりました」


少し長い詠唱をして白杜医師は両目を閉じると魔術についての説明をしだす。


「私の能力は「巻き戻し」でね。今は君の記憶を司る部分の動きを「巻き戻し」していって何があったかをみているんだ」


数分、十数分間そうして話をしながら診察を続けているとふいに白杜医師が目を開いた。


「……どうされましたか」

「原因が、わかった」


その言葉に私ものあもハッと息を呑み目を見開く。そんなこちらの心境を察したか知らぬかは定かではないが一拍置くようにして白杜医師は言った。


「……これは、紛れもなく魔術だ。君の記憶が消されたのか、情報の制限がかけられているのかは判断がつかない。それほどまでに、高度で、人智を超えた……」

「白杜医師にも、解けないのですか」

「……あぁ、本当に申し訳ない。解くことは愚か、なんの魔術かも本当に検討が着かないんだ」


だから、私が言ってあげられるのはこれだけだ。と白杜医師は重々しい顔で言った。


「君の記憶喪失の原因は魔術だ。そして、原因が魔術だということは――人為的な何かが絡んでいる」

 

誰が?

どうして?

何のために……?


墨がポトリと落とされたような、じんわりとした不安と疑問と不信感が胸の中に広がりその後の言葉は聞き流してしまった。


私は、ただ胸元にあった翠玉色のネックレスの弱々しい光を見ているしかなかった。








本日のこの投稿を以て毎日二話投稿期間は終了です。(結局毎日三話投稿してましたが……)

明日からの一週間は毎日夜六時の一日一話投稿です。是非覗いてやってください。


また、累計pvが500超えました!読んでくださった皆様本当にありがとうございます!

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