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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
一章 ルトリア学園編
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二話 なんでそうなった?


「…………おはよう」


翌日の早朝、昨夜の「迎えに行く」という言葉通り、早朝からまた私、月乃玲明の元を訪ねてきてくれたのは昨日の青年、華道さんだった。だがしかし、なぜだか気まずそうに目は逸らすし、扉の陰に留まったままである。


なぜか気まずがっているなか、申し訳ないがこちらとしてこれは非常にやりずらい。気まずい。昨日の感じならそのまま行けばいいものを、今日になってこのよそよそしさはなんなのだろう。


「おはようございます。それはそれとしてどうしたんです……?その感じ……」

「いや……一晩経って、あまりに昨日の取り乱しように情けなくなってきたところ…………です」

「なぜ急に敬語も……?」


あはは……と乾いた笑いを浮かべる華道さんをじっと見ると私の視線に根負けしたように部屋の中に入り、昨夜と同じ位置の椅子に腰かけた。……この人じっと見つめられると割とすぐ折れてくれるな、と思ったのは内緒である。まぁきっとちょっといいずらいっていうレベルの雑談だからなのだろうが。


「取り乱しようも、そうだし、よくよく考えたら初対面の人に対して距離感はおかしくなかったか?って疑問が湧いてきて……いやあれでも呼び方とかは頑張ってた方なんだけど……」

「呼び名……」

「いや、本来というか前まで僕はれいって呼んでたんだけど、流石に知らない人からのれい呼びはね……って理性が働いて」

「その結果昨夜は『君』って呼び方になってたわけですね?」

「今考えたらそれもなんかおかしいよなぁって気もしてくるけどね……」


確かに、思い返せば私が目を覚ました時、華道さんはしきりに私のことを「れい」と呼んでいた記憶がある。私としては「れい」と呼ばれていた記憶もないわけで「君」という呼び名だろうが違和感を覚えるなんてことはなかったのだが、華道さん側からしたら慣れない呼び名で気を遣ってくれていたわけだ。


(申し訳ないけれど、れいと呼ばれても君と呼ばれてもなんとも思わないんだよなぁ)


もしかすると普通、私くらいの年のお嬢さんは皆、知らない男性からの呼び名に敏感なのかもしれないが、残念ながら私にはそういう情緒が欠落しているらしかった。華道さんの気遣いもその心遣いだけ受け取らせていただこう。


「お気遣いはありがたいのですが、私はどうも呼び名だとか、距離感だとか、そういった対人関係における情緒が一部欠落しているのかズレているようでして……。話し方も、呼び方も華道さんのやりやすいようにしていただければ」

「あー……」


私の情緒欠落宣言に何かを感じ取ったらしい華道さんは遠い目をした。


「じゃあ本当にれいでもいいんだね?」

「はい。それがやりやすいならそれで」

「了解。ありがとう、れい――あ、やっぱ馴染む!!」


早速解禁された「れい」呼びを試した華道さんは何に感動したのか爛々と目を輝かせて「れい」と私に声をかける。昨日まで当たり前だったのだろう呼び名だが、それが自分を対象とする言葉だと知って初めて聞く私としてはなんだか慣れないような不思議な気分である。


(まぁ、それは華道さんの様子も相まってるんだろうけど……)


私の名前一つ、こんなに嬉しそうに呼んでくれるとなると、むず痒いやら嬉しいやらだ。


(でもそれにしたって――)


男性に対して相応しくない表現かもなぁと思いつつも、頭に浮かんでしまったその言葉はいつの間にか声に出ていた。


「のあって可愛い人ですね」

「!?!?」

「あ、すみません。華道さんは律儀に名前呼びの許可を取ってくれたのに、私は何も言わないままのあ呼びしてしまいました。折角れいと呼びだしてくれたことだし、距離感を一歩縮めてみようかなと思って……」

「ちょっとまってこれ僕どこからツッコめばいい?昨日もやってくれたけど、今れいの爆弾発言のせいでボケが過多すぎる……いやほんと、どこから捌く?」


数秒、何かに耐えるような恨めし気な目をしていたが、はあと一息ついて落ち着いたらしい華道さん改め、のあは結局のあ呼びを許可してくれた。……というか記憶喪失前の私もそう呼んでいたらしく、食い気味に歓迎してくれた。


「まーったく本当に……」

「なんです?」

「いや、息をするように無自覚で人をたらしに行く感じは変わりないなぁ、と思わされただけだから」


のあ呼び解禁の後に、そう称されたのはどうにも解せないが。


そうして名前呼びの話もひと段落ついたころ、本来の目的であったこれからの日常生活……そしてこの場所、学園についての話、という前置きをされながら制服を受け取った。


「それがれいの制服。れいはアレンジもほぼ加えていなかったから僕が今着てるこれとスカートかズボンか、ってところ以外対して違いはないと思うけど……」


ということで記憶をなくしている私でもシャツとスカートくらいは自力で着られるだろう、とのあにも一旦退出してもらって服を着替えた。なんでも、財力とセンスを示す一種の指標として制服のアレンジをするのがこの学園における主流の着方らしく、他のご令嬢だとシャツとスカートを着用するだけで人の手を借りなくてはならないこともあるそうだ。その点、私の服はシンプルなのが素晴らしくいい。


「ちゃんと着られてますか?」


最低限の衣服は着用したところでのあを再び招きいれると、のあはこくりと頷いた。


「うん、大丈夫。毎日見てた僕がいまさら言うのもおかしな話だけど、似合ってるよ」

「ありがとうございます」


そんなやり取りを交わした末、リボンだけは自力で付けたが、ローブのみ仕組みがよくわからなかったため、のあに手伝ってもらいながら着用した。


「これ、肩のあたりでひっかけて留めるようになってますが、私のアレンジだったんですかね?」

「いや、なんかローブの発注サイズが思ったより小さくて普通に着ると肩のあたりが詰まって仕方なくて、色々試行錯誤した結果、それに落ち着いた……らしい」

「……なるほど」


アレンジというより加工だった。ついでに多分自分がアレンジなんてする余裕もなかったのであろう悲しき経済事情についても察せられてしまった。恐らくはアレンジどころか直しをしてもらう資金すらなかったのだろう。


そんな懐事情はさておき、のあが私のローブの着用を手伝いながら口を開く。ちょっと真剣な面持ちからして、さっき前置きをした「学園」ついての話なのだろうな、と私は悟る。


「さて、まず地理的な話をしておこうか。この国は世界の西側に位置する大陸一番の――」

「……もしかして、レティア国ですか?」


のあが、驚きに目を見開いた。のあの話を遮るのは申し訳ないと思ったが、何もかもわからなかった今までから考えたら異質なこの現象を先に確かめてしまいたかった。


「今の、レティア国は説明を聞いた瞬間あ、これじゃないかって……」

「まさか覚えてるものがあるだなんて驚いた。……でも、納得は行くかな」


のあは空いた片方の手でとんっと自分の頭を指さした。


「れいが記憶喪失ってことを疑うわけじゃない。でも、ふと思ったんだよね。頭に入っていたものすべてが消えてしまったのなら、言語や行動も一貫性がなくなるんじゃないか、って」

「確かに…………」

「でも、今のところのれいの様子を見ていると十五歳の年に違わない言動、行動。そして制服だとか学園だとか、ある程度の名詞も僕に聞き返さずに意味が通じているってことはれいの「知識」は残っているんじゃないかなって。れいの記憶喪失……正しくは「思い出」とそれに付随する固有名詞の記憶が飛んでいるってことじゃない?」


今まではわからないことにばかり目を向けていたが、意外な所に残っているものもあるのだということが分かって少し安堵した。だが、不思議も残る。


「でも、レティア国という固有名詞はわかるのにこの場所の名前が分からないってのも不思議な話だと思いませんか?」

「今までれいがここをレティア国だとは思っていなかったように、思い出につられて知識が結びつかなくなってるってこともあるんじゃない?――ルトリア学園って名前に覚えは?」

「ない……ですね」

「うーんじゃあ一貫性があるわけでもないのか。ムラはありそうだけど、知識は大部分が残っている可能性が高いって思うと一つ救いが見えてくるね」

「そうかもです」


気になっていたことも解消させてもたったところで本筋に話を戻す。


「すみません、また話を遮っちゃって。さっきちらっと学園の名前は出てきていましたが、詳しく教えてもらってもいいですか?」

「そうだね。そろそろちゃんと本題のそれを片付けないと……。ただ、始業時間も近くなってきたし、制服も無事、着終えたことだから僕らのクラスに向かう道中で話の続きをしてもいい?」

「わかりました。お手伝いも、ありがとうございます」


いつの間にか綺麗に着せ終えてくれていたローブを翻し、私たちは近くのものをざっと片付けると部屋を出た。


* * *


後にのあから聞くに医務室だったという部屋を出てすぐ、廊下の豪華さとそこを通る人々の華やかさに私は呆気にとられた。


「なんというか……もう今までの話と、あの部屋の感じから想像はついていたんですけど凄まじいですね……」

「まぁ、ここはそういう学園だからね」


気圧された様子の私が可笑しかったのか、のあは軽く笑いながら私の方を見る。


「改めて紹介しておこうか。ここが、さっき話題に出した西の大国、レティア国首都ユールに位置する学園――ルトリア学園。さらに言うなら小等部、中等部ときての高等部だね。ここの生徒たちは貴族の令嬢、子息が八から九割。残りは裕福な商家や立場ある平民の家の子供たちってとこかな。王族の方が通うこともある、なんて格式と歴史を持つ名門中の名門校だよ」

「ひ、ひえ…………」


わかっていたことのはずなのにいざ目の前に突きつけられるとあまりに現実離れしたような世界の話に思えてクラスに向かう足がすくみだすような気がした。もう貴族という響きだけで階級もなにも知らないのに怖い気がしてくる。……しかし、ここで生活していくというのなら階級くらいは知っておかなくてはならないだろう。


「階級等々の知識は抜けているので教えてほしいのですが、そもそも貴族の中の階級以前にこの国の身分制度はどうなっているんでしょうか?」

「そうだね……まずれいが最初に言った貴族内の階級を含まない身分の話をしておこうか。大きな分け方で身分は四つ。上から王族、六家、貴族、平民。まぁ貴族と六家は厳密には違う階級とはいえ、基本的に貴族と言われたら六家まで含めての貴族だけどね」

「六家……ですか。貴族は何となくわかるような気がするんですが……」


その名の通り、六つの家が多分属しているのであろうことはなんとなく分かる。でもそれくらいだ。


「多分れいの認識で八割はあってるけどね。その名の通り、六つの家が属す階級で、六属性ある魔術の属性一つに特化した術を受け継ぐ魔術の名門だよ。貴族との違いは、貴族はあくまで名目上『職業』であるのに対して、六家は家の格として公式にも確立されている点かな」

「貴族って職業なんですか?」

「まぁ、名目上だけどね。大体は親の後釜にその子供を推すから大体その役職の椅子に座るのは代々同じ一族だし、ほぼその役職が家の格を表すといっても差し支えないけど。その他、特筆するのは色んな事件が重なった結果、今の若い女王様を除いて直系王族は誰もいないってことくらいかな」


さらっと補足でとんでもない情報が紛れていたような気もするが、多分私たちくらいの普通の生活で王族なんて存在から離れていると気にする理由も大してないのだろう。王族なんて雲の上の存在、関わる機会もないだろうし思えばまったく関係なかった。


「まぁ傍系の血族とか、王族に繋がりのある人たちならこの学園には結構いるけどね」


……関係ない、のかわからなくなってきたが、もしそういう血統の人と会う機会があったのならその時はその時で要協議することとしよう。


「あ、れい。着いたよ」


ちょうど、身分の大枠の話も方がついたというところでのあが足を止めた。


(ここが教室……)


周りの人たちとどのような関係性を築いていたのかわからない以上、不安は尽きない。そんな私の緊張をのあも正確にくみ取ってくれたようで案じるような目をしながら扉に手をかける。


「九月から新学年で、まだ今は九月の上旬。もとのれいの性格を把握してる人なんてあまりいないだろうし、僕も積極的にサポートするから。気張らず行こう?」

「ありがとう、ございます」


のあから励ましの言葉をもらって意を決した私は、のあの手に自分の手を重ね、扉を押した。

扉が開ける一瞬はひどく長く感じたというのにいざ扉が開ききって、足を踏み入れてみると思っていたような怖さはなくてほっと息をついた。


だが、その安堵も束の間。


「あら、おはよう。玲明、のあ」

「おはよう、ミア」


明るい金髪を華やかに結い、ぱっちりとした菫色の瞳を輝かせる愛らしい容姿の少女だった。が、困ったことに面識はやはりない。早速、記憶にない人物との邂逅という第一の関門に突き当たってしまった。


「お、おはようございます……!!」


前の私がどういう接し方や呼び方をしていたのかもわからない以上、ありきたりに挨拶を返すことしかできず、しかもそれもぎごちない返事になってしまうというどこをとってもひどい惨状だった。


少女も違和感に気づくのは容易く、すぐさま不思議そうな顔をして首を捻った。


だが、それと時を同じくしてこちらの頼れる幼馴染ことのあも、私のフォローに走るべく、私の耳に顔を寄せた。


「れい、ミアは一年から仲良くしてたれいの友達だよ。れいの記憶喪失事件については先生方の内々での共有はされるらしいけど、生徒には大々的な公表はしない方針らしいから、僕等が必要だと思ったときにその都度明かしていく必要がある。ミアについては信頼してもいい相手だと思うし、きっと事情を知れば協力してくれるから、この際事情を説明しておくのもありだと思うんだけど……どう?」

「のあから見ても、信頼できる人だというのなら……」


ひそひそ話をする私たちを不思議がりながらもじっと待っていてくれたミアさんに正面から向き直る。


「少し、大事なお話をしてもいいでしょうか?」


* * *


「信じられない……けど、玲明とのあが二人してそういうのなら、きっとそうなのよね。それにしても記憶喪失だなんて……」


場所を少し教室の端に移して、事情を説明しだした私たち二人とミアさん。といってもうまく言葉に出来ない私に代わりのあが大半の事情については説明してくれたのだが。


「記憶喪失してしまったというのなら、今一度自己紹介しておくべきよね。私は雷山(らいざん)ミア。親は商業にも携わりながら下級王宮官をしているわ。今まで通り、是非ミアって呼んで頂戴」

「では私もお言葉に甘えて……」


丁寧にお辞儀をし、微笑む様子と、下級王宮官という言葉から推測すると恐らくミアも貴族のお家の出なのであろうことはわかる。が、下級王宮官という立場をまだ教えてもらっていない私はのあに視線で助けを仰いだ。


するとミアがその様子に気づいた様子であっと口元を覆った。


「その様子だともしかして身分についての記憶もないの?」

「一応ここに来るまで、大まかな括りは教えてきたから、まだ知らないのは貴族の階級だね。ちょうど今から教えようとしていたところ」

「なるほどね。良ければ私が教えましょうか?貴族としての目線もあるし、ある程度は上手く説明できる気がするの」

「本当ですか?ミア、是非ともお願いします」


のあ先生から選手交代、ミア先生が四つ指を立てた。


「一応本当は五つあるのだけれど、そのうちの一つが同じ立場の位だからそこはまとめて紹介するわ。貴族内における階級は上から大臣、上級王宮官・外交特務官、中級王宮官、下級王宮官。大臣家は四家しかない最上位。上級王宮官は野心家の人たちが多い印象。中級は野心家も穏やかな人もピンキリ。下級王宮官はおおかた穏やかな人たち……ってところかしら?」

「すごく、なんというか……はっきりいいますね……?」


私が困惑しながら言った言葉に、ミアは気を悪くするでもなく、逆にこちらを案じるような視線すら投げかけて言った。


「だって、これくらいはっきり言って玲明には貴族のイメージをちゃんともっていてもらわないと、きっと後が大変だもの」

「後ってなんです……?」

「どうしても出身は切り離せないから、いやな思いをするかもしれないし」


それは玲明に限らないけれど、と意味ありげな視線でのあをみたミアの様子から何となく言わんとすることが理解出来た。


「どこかで聞こうとは思っていたんですが、やはり……私の出身階級は本来この学園にふさわしくないものなんですね?」

「相応しい、相応しくないという話ではないと私は思っているから言葉を変えるけれど、この学園には滅多にいない階級の出身であることは事実ね」


ここにきてようやく、自分と周りの環境のアンバランスさの正体もわかった。私の階級は平民だ。それも、恐らくはそこまで裕福ではない家庭出身の。


(でも、それにしたって平民が私だけじゃないとは)


ちらりとのあを一瞥する。


「ちなみに今ミアがさらっと言ったけど僕も平民。まぁれいと幼馴染だとは先に言ってたし想像はつくか」

「それはそうなんですが……正直意外です。のあは所作も綺麗でしたし……」


なんとなく、のあが貴族たちのなかでも堂々としていて気後れせず、慣れているような気がした。


「学園で過ごすうえで慣れてきたんだろうね」


にこっとのあは返してくれたが、この所作が多く見積もっても一年で身につくとはどうも思えなくて、不思議だなとは思ったが、どうにもそれ以上触れられない気がして、話題を変えた。


「それにしても平民の私とのあがなぜここに?ってミア……?のあ……???」


私の問いかけを聞いた瞬間ミアがのあに「何をしてるの?」とでも言いたげな胡乱な目を向け、のあがその視線から逃れたいが、逃れられないとでもいうように所在なさげな目をした。


「ねぇのあ、それを話してないってことはこの学園の話半分も出来てないことになるじゃない」

「語ることが多すぎるし、れいは気が付くと爆弾発言投下してくるしで、そっちを回収してると一向に進まないんだよ……!!こっちの気持ちを逆にわかってほしい……」


なぜかのあが私を巻き込んでくれやがったし、ミアが妙に納得したような遠い目で私を見てきたのもとても解せない。


「はぁ……玲明に爆弾発言を投下させる隙も与えないようにぱっぱと私が説明しちゃうわ。いいわよね?のあ」

「……出来るならどうぞ」


なんか決着がついたらしい二人の間で一瞬視線が交わされると、ミアがこちらに向き直る。


「玲明、あなたたちがこの学園に来た理由を端的に説明するなら――国からの推薦よ」

「私たちなにやらかしたんです!?」


ミアが吹き出しそうになるのを扇子で必死に隠し、のあはそれ見たことかと妙に得意げにミアを見る。そんな視線の傍ら私は一人あわわと持て余した感情に振り回されていた。


国からの推薦。


思っていた百倍大きい話である。なんか怖い。とてつもない責任を今になって感じる気がしてきた。


「……玲明、別にあなたが何かをやらかした、ってことじゃないの。……まぁちょっと国内どころかこの周辺諸国の歴史上で確認されている最大魔力を上回っちゃったってだけで……」

「はい……?」


さらなる情報に困惑し、打ちのめされている私にのあが追い打ちをかけた。


「ある日、市井で行われていた魔力測定イベントにれいが気分が乗ったから参加してみた結果れいが規格外すぎる数値を出した上、僕も明らかに一般人じゃない数値をだしたから国内最高峰の魔術師養成機関、ルトリア学園への国の推薦を受けたっていう」

「えっ、え…………?」


つまり私は気まぐれで行ったイベントで?国の推薦を取ってきたと?


「えっ、怖ぁそんなことになる世界怖ぁ……国怖ぁ……なんでそんなことが起こる世の中になってるんです?」

「それどちらかというと私たちが言いたいわ」

「というより僕らはれいのその何もわかってない無自覚な感じと、無尽蔵な魔力が一番意味わからなくて怖い」

「本当にその通り……」


と、なんやら私のお隣の御二方からはやんややんや色々言われているが、ここまでの感想を述べさせてほしい。


なんでそうなった?


本当にその一言に尽きる。

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