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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
二章 魔術病院編
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六話 私が何をしたというのだろう


「さて、今まではとりあえず人の心情まで深く入り込まないように制約かけちゃってたけど今からは仲直りさせることを最優先で動くよ」


一度目の作戦会議のようにのあはメモを取り出した。


「とりあえず、今までの失敗と原因について考えよう」

「二つの失敗は別の人たち同士のトラブル……環境が悪かったんですかね?」


と、考えてはみるが食堂はたくさんの人が集まるにしても図書室はそこまで人通りもないはずだ。

環境も大きい気がするがちょっと違う気もする。


「うーん、あの惨状自体をどうにかしないとなぁ……とは言え根づいちゃった感覚だしどうしよう……」

「あぁ言う弱い者虐めの惨状は簡単には変えられないと思います。というよりそれを黙認しているのが社会なのですから」


そう、弱い者を虐げるという惨状は貴族達に蔓延る闇の最たるものと言えるだろう。

数日間学園で過ごしただけの私もそれを充分に感じた。貴族の中に紛れる平民や貴族の中でも能力や親の格が低いものは虐げられる。

だがそれを咎めず当たり前として受け入れているのは社会なのだ。


どうにかならなくともどうにかしたい。そう思うのは、社会の風潮に反していても、悪いことだとは思わなかった。


本来の考えから大分離れた事案についてを考えてしまっていたがのあも静かに考えているし私も元の話題について頭の中でぐるぐると考えを巡らせる。


(二つの失敗の原因に共通すること……)


一つは虐めの現場に遭遇したこと。

他には――――


(先輩のどちらかは話しかけられて去っていった……?)


一回目は白杜先輩。友人に話しかけられ去っていった。

二回目は一条先輩。こちらも友人に話しかけられて去っていった。


どちらも偶然の可能性もある。ただ偶然じゃない可能性もある。

今回はタイミングが「あの場を去る」きっかけにしかならなかったがタイミングがズレれば作戦失敗の直接的な原因にもなり得た要素だ。


ただ誰かが裏で動かしたとて、それをできるのは白杜先輩と一条先輩と知り合いで私たちの作戦を知っている人物になる。


「……のあ、何か浮かびましたか?」

「ちょっとはね。原因とはズレるけど兎にも角にもまず足りないのが情報だと思った。ただ情報と言ってもむやみやたらに集めればいいわけじゃないから作戦を立てるために必要な最低限の情報を集めに行くのがいいかなって」


・一条先輩と白杜先輩に何があったのか

・白杜先輩の家事情


「大分踏み込んだ問題にはなるけどこれがやっぱり真髄なんだよね……。あ、質問あったら聞いてね。というか前の雑〜な作戦もそうおもったならそう言ってくれれば説明したのに」


全くもう……といい出すのあを横目に今度から出来るだけ思ったことを話してみようかなと思う。

この前の事件のように迷いなく思ったことを話せる時もあるが大抵の場合は心の中で完結してしまうから声に出そうとはしない。

これもその一歩か、と思い試しに口に出してみる。


「今後は出来るだけ口に出そうと思います」

「うん、れいの考え聞けるの楽しみにしてる。

 ――さて、れいはどういう結論になった?」

「私は、誰かの意思の介入の可能性について考えてました」

「誰かの意思……?」


不思議そうな顔をし始めたのあに一通りの説明をする。


「……確かに言われてみたら誰かに言われて去ったのも共通点ではあるんだよね」

「ただ、それが出来るとしたら私たちの作戦をしっていて一条先輩、白杜先輩と関わりがないとできないんです」

「それに、現段階では実証もこれと言った根拠も……」

「あ、いえ、それについては少しだけ思ったことが。

今日の一条先輩、呼び出されたことを少し不思議そうにしていたなって。

一条先輩を呼び出すとなると家柄的にも割と高位、またある程度仲がいい人に絞られますよね?」

「でもそれにしては不思議そうな様子だったと」

「はい」

『…………うーん』


かなり厳しい条件だし探り出すのも一苦労……とまた手詰まりになりそうなところでのあから提案をされる。


「さっき僕が出した結論もそうだし、れいの話もあるからとりあえず誰かに情報を聞きにいけるといいかなと思うんだけど」

「そうですね。とりあえず情報集めに動きましょうか。のあは誰か当てありますか?」

「特にない……れいは?」

「うーん……そもそも記憶を失ってからの人脈というと生徒会の皆さんと白杜先輩とミアくらいしか居ないんですよね」


やることは固まりだしたが頼れる相手の少なさに絶望する。

しかし、のあはハッとして顔を上げた。


「……いや、意外とその知り合いだけで行けるかもしれない。とりあえずは――ミアを頼ろう」


先ほど挙げた名前の中の一つだが一番頼る可能性が少ないと思っていた人物の名が出てきたことに驚く。

 

「ミア……?ミアって一条先輩とかと知り合いだったり」

「今までの感じだとないかな」

「じゃあなんでですか?」


知り合いでもないのなら得られる情報など……と懸念し始めた私にのあはとびきり内緒話をするかのように囁いた。


「ミアは――この学校一の情報通だから」


 

* * *


「――という訳で細かい事情については話せないけど一条先輩と白杜先輩について知ってる情報を教えてもらいたい」


翌日、授業前に空中庭園へとミアを呼び出した私とのあはミアにそう協力を仰いだ。なんとも身勝手な頼みであることは自覚していたし、断られたらなんと説得しようと思考を張り巡らせた、が。


「えぇ、わかったわ。知ってることだけなら話してあげる」


まさかの了承の意が伝えられた。この前のプランAにも頼ったことだし伝えなくとも情報を何に使うのか知っていた可能性もあるが。


「さてと、一条家のご子息と白杜魔術病院のご令嬢ね。知っての通り六家のひとつ一条家のご子息、一条悠里様は適応属性水の魔力量六五〇。後、能力は空間芸術」


つらつらとミアの口から語られる情報の数々。……凄いを通り越して若干怖くなってくるレベルだ。ただ少し疑問が出てくる。


「魔力量って……?」

「あ、ごめん!れいにちゃんと説明したことはなかったかも」


そう言い、のあはぴんと人差し指を立てる。


「前、魔術の実践授業のときに軽くは説明されていたけれどもう一回確認から入るね」

「はい」

「まず世界のすべては魔力で形作られてる。それは人体も物も変わらず。ただ人間は魔力を溜め込める器があるだけであって自分で魔力を生成することはできない。

本来、人間の魔力を溜め込める限界、魔力量は人体を形作るのに必要な最低限があるだけであって魔術なんで魔力を使うことはできないはずだった。

――しかし、ある時から人体を形作る以上の魔力の器を持つ人が現れはじめた。これが今の魔術師たちの始まり」


何やら壮大な話だ。大方納得はしたが幾つか出てきた疑問を解消するべく口を開く。


「自分で魔力を作れないならどうやってるんですか?」

「いい質問!魔力は基本的に大気中から取り入れる。人体を形作る以上の魔力を持つ人――ここからは魔術師と呼ぶね。魔術師は自分の体を作っている魔力以外は基本的に自由に使える」

「では人体を形作る魔力だけしか持たない人は……」

「うん。全く魔法は使えない。多分想像できてると思うけど人体やら物を形作る魔力は動かせない。人体を形作っている魔力を使おうとすると体調不良や手足の崩壊が始まるって予想されてる。まぁ真偽は定かじゃないけどね」


手足の崩壊……恐ろしい話だ。想像はしたくないがしっかり覚えておかなくては。と、またのあの話の続きに耳を傾ける。


「と、言うわけでさっき話した魔力量っていうのは肉体に魔力を溜め込める最大値。魔力量が多いのが魔術師なんだけど魔力量が多いほど優秀という価値観があるわ」

「そう言えば一条先輩の魔力量は六五〇って言ってましたけど魔力量ってどれくらいが普通なんですか?」


うーん、と軽く唸りのあは再び話し始めた。


「それを説明するには魔術師連合の話もした方がいいかな。魔術師連合の話はこの前省いちゃったからここで説明するね――と言いたいところだけどこの辺はミアの方が詳しい気がする」


そういってのあはミアの方をちらりと一瞥する。いくらか視線のやりとりを交わし、やがて仕方ないなぁと息を吐いたミアがのあに変わり話し始めた。


「魔術師連合ってこの前言ったと思うのだけれどまずそこから説明するわね。

この国には王宮官たちに匹敵するくらいに大きい組織があるの。――それが魔術師連合。

魔術師連合に属する魔術師は下級から始まり中級、上級、特別魔術師という階級に属し、階級にあわせて本部から与えられる任務にあたったりする。まぁ、ある種の職とも言えるわね」


魔術師連合の魔術師は下級、中級、上級、特別に分けられる、と頭の中で反芻して覚えていく。


「中でも特別魔術師は大臣に匹敵するくらいの権力も持つわ」

「……魔術師連合の話はわかりましたがそれが何に関係してくるんですか?」

「まぁその疑問はごもっともね。理由を言うなら魔力量の基準に魔術師連合の階級が使われてるから、ってところ。じゃあ予備知識も入ったところで魔力量の説明に移るわ」

 

「まず基本の魔力量が〇〜百。〇は流石にないにしても体の弱い人だと五十とかってことはたまにあるわ。百〜二百が下級魔術師 、ニ百〜四百が中級魔術師、四百〜五百が上級魔術師、五百〜六五〇が六家や王家、六五〇〜だいたい多くて八百くらいが魔力量の基準。魔力量って血筋で遺伝したりするから六刃とか王家って基準もあるの。ただ特別魔術師レベルになると突然変異という他ないけれど」

「一条先輩って六家の中でも多いんですね」


凄い人なんだなぁ、と改めて思い返しているとのあやミアが私をじーっと見つめていることに気づく。


「どうかしましたか?」

「いや……ねぇ?」

「うん。目の前にその規格外の中でも規格外な人がいるものだから」


私が何をしたというのだろう。ちょっと前にも何度かあったがこの反応には度々そう思わざるを得ない。


「で、今度は私が何をしたんですか?」

「流石にれいも諦め出したね……今の話はれいの魔力量の話」

「私の魔力量……?」


魔術は何度か使ったが全く気にしたこともなかったな、と思い出す。

するとミアはニヤリとしながら呟いた。


「れいの魔力量はね――なんと今まで例を見たことない驚きの千レベル」


何百などキリがいい数字は『百』で表し、六五〇など半端な数字は『〇』使ってます。

どちらもあるのは誤字という訳ではありませんが気になったら申し訳ありません

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