四十九話 不安な音
いつも見てくださっている皆様、関わってくださる皆様、本当にありがとうございます。
今日は、一つお礼を言っていないことがあると気づきましたので、そのお礼を……。(思い立ったらお礼言う主義なんですけど、何故か言っておりませんでした)
ブックマーク、並びに評価をしてくださる皆様、いつもありがとうございます。
れいちゃんたちの人生を見守ってくださるだけで、本当にありがたいのに、ブックマークやら評価ポイントという、尚更、見える形で「見ていますよ」という軌跡を残してくれる方には本当に感謝してもしきれません。
読んでくださる皆様もそうですが、ブックマーク、評価にもとても励まされております。
ブックマークの枠をただただ潰す穀潰しにならないよう、れいちゃんたちの波乱万丈な人生を皆様にお見せできるよう、これからも精進して参ります。
皆様、これからもどうぞよろしくお願いします。
「――――ですよ」
僕、華道のあの、ぽつりと呟いた言葉は、森によく響いてしまった。
れいには聞こえていないかな、と少しだけ後ろを振り返ったが、少なくとも近場にれいの姿はない。
「――――、さ……んっ、てどんな人、で、すか」
その人物を、知っているか、知らないか……恐らく知らないであろう、西園寺さんだったが、雑談を続けるためか、そこについてを更に深掘りしてきた。
「……綺麗な人でした。綺麗で、可愛い人。
知的なイメージがある人でしたが、意外と運動することも、嫌いじゃなくて……よく、鬼ごっこしました」
鬼ごっこ、だなんて貴族階級で、馴染みのない西園寺さんの説明に相応しい単語ではないだろう。
それは、分かっていた。……が今は、懐かしいその人の思い出に浸っていたくて、その単語についての説明も、特に加えないまま、言葉を繋げる。
「後は、妙に自信があったり、突飛なことをし出したり、まぁ兎に角不思議な人で……あぁ、でも――
――何より笑顔が綺麗な人でした」
僕の表情は、側から見たらどんな風に見えただろう。
懐かしさに浸る者の顔だろうか。
悲しさと淋しさを思い返す者の顔だろうか。
はたまた――
「かど、う……さん、はその……人の、ことを――」
僕が思ったのとは違う言葉か、同じ言葉か。
西園寺さんが紡ごうとした言葉は第三者によって断ち切られた。
* * *
「――のあ!!枝、集めてきました」
黒髪が乱れるのも気にせず、全力で走ってきたのは数分前にここを離れた幼馴染、月乃玲明。
「……れいも戻ってきたので雑談もこの辺で」
れいに、余計な何かを与えたくない。
その一心で僕は今までの雑談を強引に打ち切った。
「のあ、応急処置の方はどんな感じで……」
僕は今まで止血のために押さえていた太腿部の動脈から手を離し、ある程度血の量が少なくなってきたことを確認し、西園寺さんに何をしていたのか説明する意味も込めてれいに答えた。
「まず、危うかった感染症と失血死。
感染症の方は、土で汚れてた服を割いて、損傷部位を露出させてからガーゼで包んだ。これだけでも感染症のリスクをそこそこ減らせる」
西園寺さんの場合、損傷が激しいため、ガーゼが少し触れるだけで痛いだろうが、少しだけ我慢していてほしい。
「出血の方は開放骨折だから直接圧迫止血法じゃなくて間接圧迫止血法……傷口から心臓に近い部位の動脈を止める方法で止血した。少しはマシになったはずだよ」
まだ危険性がないとはいえないが、失血死は防げるくらいに血を止められただろう。
「のあ、次は……」
「命の危険が及びそうなものは対応したから、次は後遺症が残らないように骨折部位の処置をする」
すっと、西園寺さんの膝に目をやる。
血塗れの中にちらりと見える骨。ここまで損傷が酷いと、動くことなんて出来やしない。
しかし、それが今はちょっとの幸いで、骨は、まだ折れた状態から少しも動いていないようだ。
変に動かせば、後遺症が残る可能性がぐんと上がる。西園寺さんは、変に動かないでいてくれてよかった、と少し安堵した。
さて、それはそうとして骨折の処置である。
「れい、添木に出来そうな枝二本貸して。骨折部位とその他近くの関節を動かさないように固定する」
「はい」
骨折の場合、下手に動かさないことは一番と言っても過言ではないくらいに大切なことである。
とは、言っても骨折した部位をそのまま自由にさせてしまっては何処で動いてしまうかもわからない。
そんな状況では移動することもままならないだろう。
そこで、それを解決する応急処置が今からやるものだ。
「西園寺さん、また足に触れるので痛いと思いますが少しだけ我慢していてください」
僕からの注意を聞いて、西園寺さんはぐっと苦そうな顔で覚悟を決めたようだった。
僕はそれを横目に見ながら、れいから渡された木を手に取り、骨折部位の上側である、太腿の内側に木を添える。
「っ!!」
一瞬びくりと体が強張るのを感じたが、気にしていられる余裕もない。
僕は痛いだろうな、とかなんでこんなことになったんだろうな、とか苦くなる気持ちはあったが、気にしないように頭からは振り払い、包帯を使って木を固定した。
「………………」
苦痛に顔を歪める西園寺さんを、れいは痛そうな顔で見つめている。
……西園寺さんは、本来なら話すのも意識を保つのも厳しい状況。
そんな状況下でも、先ほど雑談をしようと持ちかけてきたのはそれだけ不安が大きかったからだろう。
出来ることなら、また雑談でもしてあげれば気は安らぐのかもしれない。
しかし、先ほどまでのただただじっと血管を押さえるだけの作業と違い、今は傷口を避けながら上手く調整しなくてはいけない手間がある。
れいはれいで色々衝撃が強くて、雑談なんて出来るような心境ではないだろうし申し訳ないけれど、西園寺さんはこのまま耐えてもらうしかない。
そう、思いながら西園寺さんの顔の方に目をやった時。
西園寺さんの口からは不安そうな音が溢れ出た。




