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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
四章 学園祭編
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四十六話 情報共有とこれから


長いようで、ほんの数分に満たない作戦会議を終えた私、月乃玲明とのあは、まず最初の作戦決行に向けて声を掛け合った。


「それじゃあ、のあ!行きますよ!!」

「わかった!!」


私の声に、のあが返事をすると同時に私が張った防御式結界の真上にあった、ガラス壁が音も立てず、粒子になる。


「走って」


私が言うのと同じか、それ以上に早く動いたのあは、すぐにこの場から離れる。


(次は私の番――)


すうっと息を吸って、自分の中から魔力を引き出す感覚を研ぎ澄ます。


自分の防御式結界を解くと同時に、十秒の制限をつけた防御式結界を張る。


だが、これは一瞬でもタイミングがズレると私が潰れるし、上手くいかなければ魔力を搾り取られかねない。


(集中、集中……)


今度は強度を気にしなくてもいいため、できるだけ少ない魔力消費にできるように密度を薄くして薄くして――


「――構築」


できるだけ魔力消費を抑えた新、防御式結界を作ると同時に、私は今までの防御式結界を解除して走り出した。


「れい!走って走って!!」


のあの声援を受けつつ、全力で走る。

足首がじんじん痛いし、体も暑いが、今ここで立ち止まったら死ぬ。


「もう少し!!」


すぐ目の前にのあが居る。

もう、後一歩進めばのあのところだ、と土を踏み締め、最後の一歩を踏み出すと同時に――


ぷつんと今まで繋がっていた魔力の糸が切れるような感覚と共に少し奥で、どごんという重い音がした。


「……なんとか、上手くいった?」

「なんとか」


二人で顔を見合わせて、とりあえず全く動けない状況下からは脱出したことに、安堵した。


しかし、そうも言っていられない。


「のあ、さっき言ってた危うい反応は……」

「更に奥の方!まだ魔力の供給が続いているから、れいと同じような状況、もしくは更に悪い状況だと思う。

急がないと、その人が潰されるか焼け死ぬ」

「え、焼け……!?」


今まで、自分の瓦礫に耐えるのに必死だった私は、「焼け死ぬ」ような状況であることを知らない。


「お互い、知らないこともあるだろうし情報共有がてら向かうよ」


そんな私の心情に気づいてくれたのか、のあから情報共有の提案がなされ、私は「お願いします」と返答して、のあと共に森の奥へと駆けた。


* * *


「恐らく、僕とれいが共通して持っているであろう情報から確認しよう」


情報共有の第一弾はそこから始まった。


「まず、この森に来た理由は西園寺さんだよね?」

「はい。ホールに着いた直後、クラスの人から相談されて知りました。のあは?」

「僕も同じくクラスの人から」


なるほど、のあも西園寺さんのことについて知っているのならば、ある程度話はしやすい。


「のあは、西園寺さん関連の話、どのくらいのことを知っていますか?」

「僕も、れいと大差ないと思うけど、さっきまでホールにいた西園寺さんが、誰にも何も言わずに居なくなった。って話しと……後は、れいの話かな」

「私ですか……?」


私、何かをしていただろうかと思案して、ハッと気づく。


「生徒会の話と、私が「みんなの知らない場所に行った」って話ですね?」

「そうそう」


のあが、クラスの人に会ったのは私よりも後だったのだろう。その偶然のおかげで、私がした行動もだいぶ共有出来ているし、何よりこの場に来てくれて良かった。


のあが居なければ、みんなに防御式結界を張ることもできなかっただろう。


「……結構、私とのあの情報、重なりますね」

「まず事の発端についての擦り合わせは必要なさそうだね。で、次は今起きている状況だけど――」


ごくりと唾を飲む。


ここから先は、全く知らない領域であり、ここからの身の振り方にとても重要なところだ。


「れい、瓦礫が落ちてくる前に凄い音がしなかった?」

「しましたね」


あの音は、なんの音だろうか、と私だけではよくわからない謎。だがのあは、何かをわかっているようだ。


「あれは――魔術回路管理塔が、壊された音」

「!?」


あり得ないほど最悪な状況。否定したい……が、それにしては他の「よくわからない部分」と、合いすぎる。


あの、轟音といい、どこからか降ってきた瓦礫。


その全てが、そこに集結すれば辻褄が合う。


「そして今、塔の破壊によってこの森には瓦礫が落ちてきたり、ここからじゃ見えないんだけど……火事が起こってる」


その言葉が、先ほどの「焼死しかねない」という部分に繋がった。


「……最悪も、最悪じゃないですか」

「その通りなんだけど、まだ少しだけ希望はあるよ」


こんな状況に、希望なんてあるものか、と思ったが、のあは言う。


「れいが、生徒会にも協力を仰ぐよう指示したことで、西園寺さんの件についてはちゃんと情報が行ったはず」

「そう……ですね。風夜先輩達のことだから、きっと情報と情報を組み合わせて今、何が起こっているのかもわかって動いてくれるはず」


私たちは、その答えに辿り着くための一ピースになれたのかもしれない。


「そう考えると、塔が爆破された件について校舎側の対応はしてくれるだろうし、西園寺さんも消去法でここに居ることにも気づく」

「じゃあもしかしたら誰か来てくれるかも――」

「だね。――という訳だから、やることもハッキリしてこない?」


こくり、と私は頷いた。


「無理にプラス方向に動かそうとしなくてもいい。

とりあえず人命救助しつつ現状維持ということですね」


そう思えば、課題が積み重なっていると思うよりは幾らか楽だ。


「……行ける?」


大丈夫。さっきは取り乱したけれど、まだ、どうにかなる。

まだ、私の選択で、救える。


それに――


「えぇ、やりましょう」


のあが居てくれれば、きっと大丈夫だと。

確信にも似た思いを込めて、真っ直ぐ森の奥を見つめた。


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