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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
四章 学園祭編
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三十八話 怒りと狂気

「ほら、これで君の望んだ通りになるよ」


見知らぬこの誰か、に出会ったのはつい昨日のことだというのに、私には遠い昔のことのように思える。


数十年ぶりにあった気がする、そんな目の前の誰かは昨日と変わらぬ位置で、暗闇の中にまぎれたまま。


しかし、今日は赤い石のはめ込まれた腕輪を差し出している。


(なんなのでしょう)


ここに来てから、起こっている視界がぐわんぐわんとする奇妙な感覚が、その腕輪に手を伸ばす度、暗闇に近づく度に、強くなっている気がした。


しかし、気のせいだと、それを押しとどめ、目の前の暗闇に問いかける。


「これは……なんですの?」

「君の思うタイミングで、この腕輪に魔力を流し込めば、術が発動する。その術さえうまく発動すれば、きっと今の生徒会に対しての大打撃になるよ」


待ち望んだ玩具を手に入れた子供のような、家族で旅行に行く前日の夜のような、それはそれは楽しそうな様子で、説明をしてくれた。


しかし、それが逆に何とも言えない不安を煽る。


「…………どうしたの?」

「え、あ――」


赤子のような、声しか発せないまま、私は狼狽えた。

本人にこんな事いうわけにはいかない――と、その時。


目の前の暗闇から、パチンと手をたたいて「あぁ!」と一人納得する声が聞こえた。


「失敗するかが不安なんだね?」


私は、肯定も否定もできないまま、その話の続きを聞いているほかなかった。


「大丈夫だよ、心配無用。思ってもみないところで、状況が有利に動いてくれてね?

目的の場所の警備員の人数が少なくなるんだってさ」


その、言葉を聞いた途端、心臓がバクバクしだして、手が震えだす。


今、もしかすると私はとんでもないことに手を出そうとしているのではないか。


「あ、あの。やっぱりわたくし、やめようかと――」


言葉を発したその瞬間。

黒い世界の中に、禍々しく、そして、何より美しい紫色の光が見えた。


美しさと、その恐ろしさを頭で理解するよりも先に――


「あ、あ?――ああああああああああああああああああああ!!!!!」


頭が、目が、全身が、内側から張り裂けそうなほどに熱くなった。


「熱っ、い。痛ぁぁぁぁぁ!!」


熱くて、痛くて、怖くて、恐ろしい。

そんな感覚に耐えられなくなって、私は床に這いつくばった。


嫌、嫌、嫌、嫌……。


とめどない感情が、頭をよぎる。

しかし、その名前は見つからない。


どうしよう、誰か助けて――


「――大丈夫?」


心配するかのように、暗闇から声がかかった。


「た、たすけ」

「可哀想に」


次にかかったその声は、暗闇ではなく頭の上から掛かった。


この人は、私を心配してくれている。

可哀想と言ってくれた。

助けてくれるかも――


「でもごめんね、僕じゃ助けてあげられないんだ」


目の前の人は、私が期待を寄せたことにもわかっていながら、絶望の言葉を吐いた。


「な、……で」


なんで、と言おうとしたのに、上手く言葉に出来なかった。しかし。


「そんな目で見ないで。「それ」が何なのかとどうすればいいかは教えてあげられるからさ」


私が、知りたかったことについては答えてくれるようで、私は「もったいぶらずに」と視線でせかした。


「君の苦しみの原因はね――」


早く、熱くて痛い地獄から、解放されたい。

どうすれば。早く。早く。早く。早く。早く、早く、早く、早く、早く、早く!早く!早く!早く!――



「――怒りだよ」


怒り……怒り。


そうだ。


痛くて、苦しくて、熱い。

これは――怒りだ。


名前が付くと、細い紐で崖にぶら下がっているような、物凄い不安定感はいくらか、鳴りを潜めた。

でも、地獄はまだ、終わっていない。


「どうす、れば!」

「焦らないで。それは、君の怒りを晴らせば収まるんだよ」


――ねぇ、君は何に怒ってる?


頭上から、優しく囁かれた。


「私は」


あの、黒髪の女が憎い。

私に苦しみを与えた元凶の元凶。

悲痛にゆがむ顔を見れば、この熱も引くかもしれない。


言葉に出したつもりもなかったのに、その思考を目の前の人は読み取っていた。


「他には?」


私も、生徒会に入れるくらいの器はあるのに。

選ばれなかった。

選ば、なかった。


あの黒髪の平民が、あの女が、私の場所を横取りした!


いや――


あの、無愛想な風夜凛よりも、私の方が、うまく笑える。

生まれだけがいい一条悠里も、いつもにこにこ笑って感情を見せない気色の悪い、峰叶斗も。

名前を覚える価値すらない、黒髪の女と同じ平民の青い目の男も。


みんな、みんな、私を追い出した。


「憎い?」

「憎い」


生徒会の奴らが。私を選ばない学園が。私を辱めた赤茶の髪の女も。


思い通りにいかない世界が――


ただただ憎くて、怒りが沸き上がる。



「苦しいでしょ?痛いでしょ?そいつらにも味合わせてあげたくない?」


あいつらのすました顔が、苦しみに歪むのを見られたら、この熱は、地獄は、きっと終わる。


「……あぁ、でもそうだよ。君は君自身の痛みをとるために行動するんだ。悪いことをするわけじゃないんだよ」


私は、悪くない。


「ねぇ」


昨日と同じ様に、声を掛けられる。


「――協力、してあげようか?」


その問いに、頷くのに、もう迷いはなくなっていた。

累計ユニーク2000突破いたしました!!


2000……2000人!?


なんかすごいとしか本当に言いようがありません。

いつも読んでくださる皆様、出会ってくださった皆様、本当にいつもありがとうございます。


まだ、二ヶ月ちょいで、何を言っているんだと思われるかもしれませんが、綾取がこうして毎日ちゃんと更新できているのは皆様あってのことです。


しつこいぞっていわれるくらい何度も何度も言わせていただいておりますが、本当に本当にありがとうございます。


お礼は言えるときに言った方がいいとうちのばっちゃまに言われて育ちましたので、これからもしつこいほど言わせていただきますが、その度「もう知ってるよ」とでも笑ってやってスルーしてください。


というわけでユニーク2000人のお礼でした。


今後もどうぞよろしくお願いいたします。




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