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花かんむりの眠る場所で  作者: 綾取 つむぎ
四章 学園祭編
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二十八話 気づいてほしい


「その言葉の、意味ですか」


私、月乃玲明はミアに聞き返した。

のあの、「自分を大切にして」という言葉。


その言葉を、私にかけてくれる心理こそ、未だちゃんと理解は出来ていないものの、そのものの意味であるなら、わからないわけではない。


「危険なことをしないでほしい、ってことですよね?」

「その言葉が言われた状況にもよるのだけれど……言ったのは」

「のあです」


ミアは、はっ、とでもいうように薄く笑った。

その真意は、上手く掴めなかったが、よく考えている時間が与えられていた訳でもなかった。


「まぁ、のあだろうとは思っていたけれど。

のあが言ったのなら、それ以外の意味も持っていると、ちゃんと確証が持てるわ」


それ以外の、意味?


どんな、意味があるというのだろうか。


「よく、わからないです」

「そうでしょうね。きっと、玲明はまだ何も知らない。――だから、考えるの。考えて、考えて、わからなかったら聞いて。「愛」が何かを私に聞きにきたのと同じように、色んな人に聞いてみて、玲明なりの答えを探して、また……答え合わせしましょう」


私の、呟きにミアはそう答えた。それは私に道標を示してくれるようでもあり、すぐには教えてくれないところが、子を谷に突き落とす獅子のようでもあった。


でも、私はその道標通りには上手く出来ない気がした。


「ミア。私、ミアや、色んな人に聞いて、「愛」もわかったつもりでいたんです。でも、ちゃんとはわかってなくて。多分、また空回りするだけ……」

「だから、答え合わせがあるのよ」


ミアの言葉は弱気になっていた私の背を、優しく押して、それでも、谷に突き落とす言葉だった。


「ちゃんと、答え合わせをしましょう。

そうすれば、玲明が何か間違えたとしても、どうであったとしても、無駄にはならない。結果的には、正しい答えに辿り着けるわ」

「頑張って……考えてみます」


そんな言葉であろうともミアに、お願いだなんて言われてしまっては、断れる何かがある訳もなく、私には、ミアからの「お願い」が課されることとなった。


* * *


「………………はぁ……」


私、雷山ミアは玲明の遠ざかる背を見送り、その気配すらも、何もなくなったことを感じ取ると小さくため息をついた。


(なんで、あんなに自分を無下にしてしまうのかしら)


玲明と話していて、第一に思ったことはそれだった。


「自尊心」の意味は知っていて、それが人間全員に在るもの、在るべきものであることはちゃんと理解しているのだ。


なのに、玲明には「それ」がないようにも見えるくらい自分の存在を無視する。


それは少し、不思議なことでもあった。


前提として自尊心、自分の存在を認めてあげる、感情とも器官とも呼べるそれは、生物として生まれ持った時から在るはずのものだ。


精神と、肉体が強く結びついている人間は、精神が自分を生きていていいと認めてあげられなければ、生きることが出来ない。


……だから、玲明が記憶を失って、人格が。ひいてはそれに付随する自尊心が全くないとするのなら、きっと玲明は生きていないか、もっと廃人のような生活をしているだろう。


ただ、記憶をなくして玲明の人格がまっさらな状態になったのかと言われれば、それもまた違うと、私は思うのだ。


前述の通り、自尊心は生まれつきにあるはずのものである……ということは、その人格が出来たその時、自尊心は一であろうともプラス方向に傾いているはず。


けれど、今の玲明の自尊心はマイナスと言っても差し支えないほどの傾きよう。


記憶を失った玲明に、自尊心が全くない訳でもないけれど、だからといって生まれた状態と同じ、プラス方向に傾いている訳でもない。


酷く歪で、不思議な現象。


(玲明にそんな現象が起きる原因は何なのかしら)


記憶を失ったことによるもの?玲明のもともとの性格?それとも――


「玲明が、育った環境……?」


玲明が記憶を失う前も、のあからも、聞かされたことのない過去。


どんな場所で玲明は育ち、どんな両親と過ごして、どんな風にのあと出会ったのか。今、両親は何をしているのか。何一つとして、明かされたことのない過去。


そこに、もしかしたら何かがあるのだろうか。


(それを知る術も、知ったところでどうすることも出来ないのに)


ただ、原因よりも、今の私の胸にある思いは一つだ。


(どうか、玲明が自分の存在を認めてあげられますように)


あんなにも、いい子なのに。


あんなにも、優しいのに。


自分を無下にしてしまうなんて、勿体ない。


………………。………………。


「……どうして、玲明は自分を大切に思えないのかしら」


結局、巡り巡って、最後に浮かんだ言葉はただただ私の嘆き。


やっぱり、ちゃんと気づいてほしい。


私の大切な友人である玲明を、玲明自身が認めてあげてほしい。


いつもは、のあの役目だと一歩引いていたけれど。


今回の、のあにはのあ自身の歪みを気づく時間がちゃんと必要だ。


「だから、今回は私が………………」


意気込んで、言葉にしたものの、言葉を連ねるにつれて、不安になり、どんどん音は小さくなっていってしまった。


そんな弱気な声を、誰にも聞かせるつもりなどないのに、誰もいなくなった、寂しい舞台の上にはよく、響いた。


累計pv5000超えました!!


なんか凄い。もうこれにつきます。

本当に皆様ありがとうございます。毎度毎度ビックリしております。


綾取の寿命何年縮んだかわかりません。50年くらいは縮んだかもしれません。ただ、綾取、人類最長の寿命目指す人なので何ら問題はありません。

対戦ありがとうございました。


というわけで(というわけでもクソもないのですが)今後も頑張って書きますのでどうぞよろしくお願いします。







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