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第八十四話 新たなユニークスキル

 バスンッという乾いた音とともにロックベアーの首が吹き飛んだ。



「結構な威力だな……」


「たしかに、すさまじき破壊力……」


「うわぁ、えっぐぅ……」


「じゅうの威力、すごい……」



 ユグドウェルと≪(くら)い根の領域≫を隔てる要塞建設予定地において、俺たちは資材を食い荒らすロックベアーの討伐クエストを行っていた。


 “ロックベアー”――鉱石を主食とする熊型のモンスターで、要塞に使用する石材置き場が餌場にされてしまっているというのが現在の状況だ。


 そんなわけでパーティの皆で訪れたものの、中衛に転向したアエカの散弾銃鉾槍ショットガンハルバードが猛威を振るい、初見の重量級モンスターにもかかわらず、計三体を次々と三十分もかからずに討伐できてしまったのがいま。



「おったまげたあ。領主さまとこのメイドさは、えらい強いんだなあ」


「うーむ……。彼女が特別なだけで、一般的な探索者のレベルを遥かに超えておるゆえ、ほかの者も同様と思うでないぞ?」


「わかっただあ」



 俺たちと同様に驚きの声を上げているのは、要塞建設の労働者たち。

 この中には、先日捕らえた盗賊団の中から、故郷へ帰るでなくユグドウェルで働くことにした者も数名が含まれている。


 あれから十日が経過し、破れたニオの専用衣装はすでに自動修復されたけど、俺自身のメンタルダメージはまだ癒えていない。


 アエカとイースラのほかに、ライゼにまで知られてしまったから……。


 いろいろと気づかってくれたけど、気づかいが逆に辛い……。



「問題はなさそうです」



 そんなことを悶々としているうちに、怒れる鬼神のごとく大立ち回りを演じたアエカがそばへと戻ってきた。



「扱いづらそうなのは大丈夫なのか?」


「変形機構には慣れが必要ですが、もう一、二戦すれば大丈夫です」


「アエカは昔から器用だからな……」


「まさかアエカ殿が補助盾まで担うことになろうとは、それがし感服仕った」


「あくまで緊急時に受けられるというだけですから、ベルクさんのように戦線を死守する芸当はできませんよ」


「でもでもぉ、攻撃力もニオさまに匹敵するって、銃いいなぁ」


「弾数に限りがあることは難点ですね。長丁場になると、所持可能な物量的に最大攻撃力を維持できませんから」


「ニオさまニオさま、あたしも早くあれ使いたい」


「研究完了まではもう少しかかるな……。あれというか、初期の銃ではあそこまでの威力は出ないゆえ、あまり期待をするでないぞ?」


「ん、問題ない」



 それも、ライフルとショットガンでは威力の質も違うし、アエカの散弾銃鉾槍ショットガンハルバードは発砲の威力を近接攻撃にも転用しているようで、そもそもの複合武器自体が隠し武器種の類でそう簡単には出回らないだろう。


 ただ、近場にいたほかのプレイヤーも興味津々といった様子で、未知の武器のデモンストレーションとしては成功している。



「さて、現場監督官……レオスだったか? これですべてか?」


「へい、レオスでさあ! 出没していたロックベアーはいまのところ三頭しか確認できてませんで、これで全部でさあ!」


「よし、依頼票にサインを頼む。この要塞は防衛の要となる場所だ、こたびのようなトラブルがあればなによりも優先し対応せよ」


「へい! 即日、領主さまとギルドに報告しまさあ!」


「うむ、任せたぞ」



 現場監督官にサインをもらって周辺を見渡すと、防壁はそれなりの高さになっていたものの、要塞自体はまだ基部しかできていない様子だった。


 要塞予定地は、ユグドウェルから南方へ三十キロの地点。

 ≪(くら)い根の領域≫に対し、この要塞が第二次防衛線となる守りの要だから、システムの枠をひとつ専有しででも初期から取り組んでいた事業なんだ。


 幸い、ユグドウェルはプレイヤーが多いことから税収も多く、このコストがやたらとかかる要塞建設に早くから取り組めたけど、本来なら町自体に投資をして早々に都市まで発展させたいところだった。


 まあストラテジーに災害はつきものだから、むしろ直面する困難にどう対策を取るかがプレイヤーの手腕だ。



「しかし、これがあと二ヵ月で完成するとはとても思えないな」


「現実であったら年単位になりますが、ここはゲームの中(・・・・・)ですからね」



 俺の疑問に、アエカはやけに“ゲームの中”を強調して答えたけど、彼女の一挙手一投足は含みがあるものとすでに認識している。



「それに、先に完成するのは見張り塔ですので、そろそろ衛兵隊の配備計画にも手をつけたほうがよろしいかと思います」


「うむ、城塞に帰ってから検討しよう」


「ここより南は心が痛むほどに不毛の荒野ですな」


「ですねぇ。あの根の領域がなければ安心できるのにぃ」



 俺とアエカとの話とは別に、ベルクとツキウミもふたりして南方を眺めながらそんなことを口にしていた。



「我らを守りし星霊樹が、星に宿るがゆえにそのものの命脈を吸い上げ、このような不毛の大地を作り出してしまう。皮肉なものだ」



 彼らの背に、俺はあらためてこの世界の構造について投げかける。


 建設中の壁の向こう、草木が一本も生えない荒野のさらに遠く、巨大な根が下りる大地に黒い霧で包まれた領域が霞んで見えていたから。


 本当に皮肉なものだ。


 ≪星霊樹アルス・パウリナ≫の庇護がなければ、“混沌の神々”からの侵攻に晒され、にもかかわらずその星霊樹が星の命を吸い上げる。


 そうして現れ出でるのが、≪(くら)い根の領域≫。


 この世界は、構造からしてすでに詰んでいるのではないだろうか。



「されど、ゆくゆくは星霊樹の頂へといたり、やがて“混沌の神々”と対するのであれば、我ら“探索者(プレイヤー)”こそがこのような世界の解放者となりうる存在。ニオ姫さま、ならばそれがしは、さらに修練を積み不撓不屈(ふとうふくつ)の盾となる所存!」


「その意気やよし。頼りにしておるぞ、ベルク」


「御意!」


「怖いのはいやだけどぉ、星霊樹に登るのは興味があります!」


「あの星明かりに届くのであれば、これ以上のロマンはないであろう」


「ですですぅ。やっぱり宇宙にはロマンを感じますからねぇ」


「ツキウミはやはりロマンに夢を見る男なのだな」


「です! ボクは男だ!」



 いまも空の上できらめく星霊樹を見上げる。


 どうにも、嫌な予感がする(・・・・・・・)新たなユニークスキルを得てしまったいま、困難に対するには脱がなければ(・・・・・・)いけなくなるのかもしれない……。


 星海のきらめきを遠く眺めながら、俺は悲壮な覚悟を胸に秘めた……。



 ======


ユニークスキル

 ≪汚破倍化≫

 体が汚れ、装備が破損すると、状態に応じて最終攻撃力が倍化する。


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 ぜ、絶対に金輪際っ、舐められたり破られたりしないんだからっ!


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