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第六十八話 マイホームカスタマイズ(1)

 シルモアの寝床にされてから三日、寝起きはあまりよろしくない。


 聞くところによると、彼女は霊体を維持するために“プネウマ”を補給する必要があり、ニオの体はそのエネルギーが潤沢なんだとか。

 あとで調べたところ“原理”=“プネウマ”で間違いなく、それなら一般的なプレイヤーとは桁が違うから、吸われても大した影響はないだろう。


 問題は、体内に侵入される際にその時だけ感触があること。


 本質的には違うと思いたいけど、美幼女に毎晩ディープキスをされているような状況だから、もしも身内に知られでもしたら……。


 いや、アエカならむしろ恍惚として喜ぶ……?


 なんにしても、そんなわけでここ数日は悶々と朝を迎えていたわけだ。



「あ、来た来たぁ、ニオさまぁ、ここですぅ」



 ユグドウェル城塞にもほど近い、町の北寄りに位置する住宅街で、大きく手を振って迎え入れてくれたのは、ヒワとツキウミの姉弟。



「ふたりとも、待たせたな」


「ヒワたちもぉ、ちょっと前に来たところですよぉ。今日のお付きはアエカさまじゃないんですねぇ」


「アエカしゃんは仕事中なのよ。代わりに、アイリーンともよろしくなのよ~」


「知ってますよぉ、“アイちゃん”でしょぉ? アイちゃんもぉ、“情報屋のヒワ”の名前を覚えてくださいねぇ。この子はツキちゃんですぅ」


「お、お久しぶりですぅ」


「しっかり記録したのよ。ツキウミしゃんとはお久しぶりなのよ~」


「自己紹介が済んだら早速だが、本当にここでよいのか?」



 今回、こうしてヒワツキ姉弟と待ち合わせをしていたのは、ほかでもない約束していた“ふたりで住める家”を引き渡すため。


 Sサイズの好きな物件を選んでいいとは言ったけど、彼女たちが選んだのはその中でもさらに小さい、極狭物件ともいえる家だった。

 その外観は、中世ヨーロッパ風で雰囲気がよくいちおう二階建てなものの、一階二階合わせても二部屋しかないという、なんとも欲のない選択だ。


 ヒワなら、Sサイズでも最上級の要求をしてくると思っていたのに……。



「ニオさまぁ、ひょっとしてぇ、ヒワなら最上級の物件を要求するとか思ってませんでしたぁ? 心外ですねぇ、これがいいんじゃないですかぁ?」



 こいつ、俺の脳内を直接……!?



「心なんて読んでませんよぉ。ニオさまはぁ、すぐ表情に出るからわかりやすいだけですよぉ。くふふ♪」



 こっわ! ヒワさんまじこっわ!



「人間心理の統計上、ニオしゃまは実際に思考と表情が連動してるので、読まれやすいというのはたしかなのよ」



 アイリーンまで! 俺はそんなに表情に出ていたのか……。

 ツキウミまでコクコクと頷いて、仮面でもあればすぐに顔を隠したい。



「うぅ、ぐぐ……。そ、そなたらがよいというのなら、好きにするがよい」


「あ、スルーしましたねぇ。でもぉ、そういうザコいところもかわいいというかぁ、愛おしいというかぁ、だから構いたくなっちゃうんですよねぇ」


「よ、余に向かって、そなたは少しばかり不遜ではないか……?」


「違いますよぉ、褒めてるんですよぉ」


「ほ、褒めておるのか……? 本当に……?」


「くふふ♪ ねぇ、かわいいでしょぉ?」


「ニオしゃまはちょろすぎて、アイリーンは心配なのよ」


「どっちみち、ヒワちゃんには勝てないよぉ」



 うわー! なにこいつら! もうやだーっ!


 たぶん十代の女学生?にいいようにされるおっさんの図!

 ニオの姿でなかったらすでにメンタルは崩壊している!



「あ、ニオさまだ、アイちゃんまで、こんにちわ~。ヒワちゃんやっほ~」


「ミーちゃんやっほぉ~。時間どおりですねぇ」



 俺がメンタルブレイクの危機に瀕していたところ、隣家の石壁からひとりの女性プレイヤーが頭を覗かせた。

 ヒワとは気軽な間柄なのか、そういえば彼女は、幽霊屋敷にはじめて向かった時に挨拶を交わしたパーティの内のひとりだ。



「ニオさま、紹介しますねぇ。彼女は“味噌煮込みうどん定食”ちゃん、略して“ミーちゃん”、教えてもらいたいことがあるみたいですよぉ」



 名前ぇぇぇぇぇぇっ!?


 俺は心の内で膝から崩れ落ちた!!


 いや、人の趣味にケチをつけるわけではないけど、外見がふんわり癒し系神官風美少女なので、そのギャップに屈さずにはいられなかったんだ。


 どうしてその名前にした!? 名前にするほど好物なの!?



「先日、挨拶を交わしたのを覚えておるぞ。その名はしかと覚えた、非常にインパクトのある名だ、決して忘れはしないだろう」


「えへ~、ニオさまに褒められた~」



 褒めたっけ……!?



「し、して、余に用があるのだな? 申してみよ」


「あ、そうです。まだ攻略サイトとかも詳しく書かれてなくて、ヒワちゃんにニオさまが来ると聞きまして、教えてもらえたらな~と思ったんです~」


「ふむ、構わぬぞ。ヒワに物件を引き渡すついでだ」


「ありがとうございます~。家って、どうやって建てたらいいんですか~?」


「んん?」



 いちおうチュートリアルはあったはずだけど、ひょっとしたら、説明書を読まない類の娘なのかもしれないな……。


 ≪World Reincarnation≫にも当然マイホームシステムがあり、第一に土地を購入すること、第二に家を建てることでマイホームを所有できる。

 それで、住宅街にはモデルルームとしていくつかの建物を建てておいたけど、モデルルームをそのまま選んだヒワとは違い、彼女は土地だけを購入して自分で家も建てるつもりだったというわけだ。


 でも、家を建てる際にやり方がわからなくてつまずいてしまったと。



「んー、建材は用意してあるのか?」


「あ、はい~。コッコちゃ~ん、ニオさまが教えてくれるって~」


「ん?」



 ミーちゃんは石壁から頭を下げ、敷地内に向かって誰かを呼んだ。


 そうして、しばらくして姿を現したのは……例のニワトリ頭。



「コケェッ! 今日もニオさまに会えた、幸せでふ」



 相変わらず、ニワトリ頭のガチムチというやっべー姿だ……。



「ニオさま、彼女が“コッコたそ”ちゃん、資材を集めてくれてるんですよ~」



 彼女ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?


 俺は心の内で崖から真っ逆さまに転落した!!


 ニワトリ頭はものすごいガチムチの胸筋だから、ずっと男だと思っていたけど、た、たしかにビキニアーマーというやつを装備している。


 てっきりそういう趣味なのかと……。


 そ、そうか……その姿で女性なのか……。


 世の中は広いな……。

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