第六十二話 念願のものを手に入れた。
「ニオさま、お客さまがお見えですが、お通ししてもよろしいでしょうか?」
アエカのポジション転向についての具体的な話や、国の発展についての相談をしていたところ、ロジェスタが執務室にやってきた。
彼の装いもいまとなっては燕尾服なため、立派な執事の様だ。
「客人?」
「ワギューさまでございます」
「あ、ああ、進展があったのか。通してくれ」
「かしこまりました」
ロジェスタは退出し、しばらくすると和牛さんを連れて戻ってくる。
「おう、姫さま、頼まれてた物を手に入れてきたぞ」
「城塞までわざわざすまんな。もう少し時間がかかると思うておった」
「なに、イベントではそれなりに儲けさせてもらったんで、姫さまにご足労いただくのも気が引けるってもんでな。散歩がてらにもちょどいい」
「余のもとを訪れるのが散歩がてらとは、なかなかに豪胆よ」
「いや、そんなつもりで言ったわけじゃないんだが」
「よい。気兼ねなく訪れてもらったほうが、余としても変に身構えることなく助かる。イースラとムーシカなぞ、我が家のようにくつろいでおるぞ」
「ん、アエカのクッキー食べにくる。おいしい」
「すぴ~、ぐ~、わぅ~、むにゃぁ~」
彼を見ると、身にまとう装備がワンランクもツーランクも上の物となっているので、自身の店を持つため確実にお金を稼いでいるようだ。
和牛さんはアエカにすすめられ、一人掛けのソファーに座った。
「して、早速だが見せてもらえるか?」
「おう、こいつだ」
机の上に置かれたのは、青く発光するシードクリスタル。
「これは……」
「姫さまにうってつけだと思ってな」
「たしかに、特大剣で使うには最適解に違いない」
「だがよかったのか? 全面的に信頼してもらえたのはありがたいが、ビルドってのは自分で決めたいもんだろ?」
「イベントの後始末やら、地下水道の深部調査やら、町の防備に奔走するのもそうだが、この一週間は取引所を覗く暇もなくてな、職人気質のそなたになら任せられると思うたのだ。現に最適解を選んでくれたではないか」
「まあ手を抜くつもりはいっさいないのと、いまのゴールドラッシュが落ち着く前に、と考えたのはたしかだ。そいつが手に入ったのは幸運だった」
「うむ、感謝をするぞ。報酬は約束どおりに」
「ああ、礼なら店を持つときにでも口を聞いてもらえれば助かる」
「抜け目がないな」
俺と和牛さんはお互いに視線を合わせてにやりと笑った。
シードクリスタル≪千陣破断≫ を手に入れた。
***
そんなこんなで、先日のイベント報酬で一気に供給が増えたシードクリスタルの物々交換で、念願だった攻撃系スキルをようやく手に入れられた。
説明をすると、報酬の“種別選択式シードクリスタル”は要するに“無料ガチャ”で、種別を選んだあとは中身がランダムで排出される仕様だったんだ。
そのため、自分のビルドにあったスキルを手に入れようと、この一週間はプレイヤー間で物々交換が盛んに行われ、事後処理に追われて流れに乗れない俺は和牛さんに代替取引をお願いしていたというわけ。
それで、すでに帰った和牛さんが手に入れてくれたのが、このレアランク攻撃系シードクリスタル≪千陣破断≫。
早速レリックに組み込み、いまのステータスを確認する。
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ニオ ニム キルルシュテン
種族:輝竜種
腕力:70 → 128(+10)
体力:30 → 36(+10)
敏捷:22 → 41(+10)
知能:51 → 99(+10)
原理:300 → 900
物理攻撃力:330 → 486
属性攻撃力:142 → 288
物理防御力:220 → 232
属性防御力:391 → 445
レリックスキル
≪生命の杯≫:レベル2 スキル:≪創世の灰≫ 光焔属性:40
≪真理の冠≫:レベル2 スキル:≪創世の灰≫ 光焔属性:40
思い描くことで任意の現象を創造する。
≪柔軟性向上≫:レベル3
皮膚弾力、体の柔軟性を向上させる。やわらかボディ。
≪装甲武器≫:レベル1
防御、補助系スキルの効果を≪遺物≫に付与する。継続時間3秒。
≪千陣破断≫:レベル1
横薙ぎの範囲攻撃を行い、攻撃対象に≪裂傷≫を付与する。
スキルダメージ:200%物理攻撃力 継続ダメージ:10%属性攻撃力
≪打撃耐性≫:レベル1
打撃に対する耐性を得る。
≪鑑定≫:レベル1 スキル:≪鑑定≫
レアランクまでのアイテムを鑑定することができる。
ユニークスキル
≪皇姫への敬愛≫:レベル2
スキル所持者を視認したプレイヤーに≪英雄≫効果を付与する。
英雄効果中のすべてのプレイヤーは1.2倍の攻撃力補正を得る。
スキル所持者を視認することで≪英雄≫効果の更新、再取得が可能。
≪英雄≫ 士気向上:レベル2 クリティカル率向上:レベル2
継続時間:12秒
≪率いる者≫:レベル1
パーティメンバーのすべての基礎ステータスに+10を付与する。
この効果はスキル所持者が対象の認識範囲内に存在する限り永続する。
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やばいと思ったのは、やはり“骸渡りのトリストロイ”から手に入れた、ニオの専用シードクリスタル≪真理の冠≫の効果。
それそのものは、≪生命の杯≫と重複して光焔属性値が追加されただけなんだけど、なぜか原理が300から900まで上がった。
ただでさえ高い数値が倍増するとか、規格外もいいところだ。
追記すべきは、ふたつ配布された“種別選択式シードクリスタル”のもうひとつから、まさかのレジェンドランクの≪装甲武器≫が出たこと。
説明からは、本来ならプレイヤーにだけ適用される防御、補助効果を一時的にレリックにも付与するもので、例えば、特大剣に≪打撃耐性≫を付与することで瞬時に受け能力を高める、のような使い方が考えられる。
ただ問題は、ほかにないからやむをえず組み込んでいた、≪柔軟性向上≫の効果を適用するとどうなるかだ……。
特大剣がやわらかくなるは、さすがに意味不明か……?
なんにしても、ようやくらしくなってきたことで気持ちは浮足立っていた。
イベントでの件を、いまだアエカに問いただせないまま……。




