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第四十二話 パーティ結成(3)

「ままっ、まさかっ、そなたらと違いっ、よよ余はあくまで余であるにょっ」



 ああああっ! テンパって変な語尾ーーーーっ!!



「くふ♪ ニオさまってぇ、実は結構おもしろいんですねぇ」



 な、なんということだ……。


 ヒワは意地が悪い笑みを浮かべ、こちらの全身を舐めまわすかのように、足元から頭頂まで余すことなく視線を巡らしている。


 俺は条件反射で腕を抱いて身をくねらせるも、そんな様子もおもしろいことかのように、彼女はよりいっそう楽しげに笑みを深めた。



「ヒ、ヒワちゃん、そんなに見るとニオさまに失礼だよぉ」


「うむ、ニオ姫さまも困っておられる。ヒワ殿、そろそろご遠慮くだされ」


「えー、すっごくかわいいからぁ、思わず全身を見ちゃっただけぇ」


「それには同意。だけど困ってるの、たしか」


「わうぅっ! ニオさま困ってるのだ!?」



 見かねた皆が庇ってくれる。



「んんっ、こほんっ。皆、すまぬな。人とは、多かれ少なかれ、生きながらにペルソナ(表面的人格)を被り他者と対面している。余も、皇姫という立場に少なからず不実の念を抱いたこともあるがゆえに、“自分でない自分”という状態がわかるのだ」



 よ、よし、ニオの設定を前面に出して切り返し成功!

 正直、“皇姫という立場”というやつはよくわからないけど!



「あー、なるぅ。それなら仕方ないですねぇ」


「わかってくれたか……」


「そういうことにしておきますねぇ」


「うぐっ……」



 やっぱりこの娘、超曲者だ……。


 実際に、本当の皇族が相手なら不敬罪もいいところだけど、いちおう公式三ヵ国の領主は中身入り(・・・・)と発表をされているから、この程度なら罰せられることはないと理解をして遊んでいるんだ……。そうに違いない……。


 まさに、弱みを握られたら何をされるかわからない相手だけど、貴重な回復役(ヒーラー)との繋がりを容易く放り出すわけにもいかない。


 なにより“ツキ”の存在は、俺にとってかけがえのない同士だから。



「して話を戻すが、余はパーティの回復役(ヒーラー)を探しておる。これも縁と思い、そなたに頼みたいのだが……ツキよ、どうだ?」


「えぅっ!? ボ、ボクが、ニオさまのパーティに……?」


「余のそばにはアエカやアイリーンがいる。すぐにとはいかぬが、あるいは彼女らに頼めば、そなたの望む性別に正してくれるやもしれぬ」


「入ります! パーティに入らせてください!」


「決まりだな」



 なんとも現金なことだけど、背に腹は代えられない。



「して、ヒワは……」


「遠慮しますよぉ。ヒワはおもしろおかしく自由にやりたいのであってぇ、そのためには裏での活動が多くなるのでぇ。くふふ♪」


「なんとも肝が冷える思いだ……。だが、敵対だけはしてくれるなよ、余としても優秀な者とは友好的な関係を結んでおきたいのでな」


「もちのろんですよぉ。情報屋としてぇ、今後もためになる情報をいっぱい持ち込むつもりなのでぇ、高額で買い取ってくださいねぇ」


「情報の価値は何にも勝る。期待をするぞ」


「くふふ♪ ヒワにお任せぇ♪」



 そんなわけで一波乱?あったものの、ヒワは「でわでわぁ、情報を集めに行ってきますねぇ」と一言を告げて早々に立ち去っていった。


 まったくもって厄介な相手だけど、有能そうな点は今後に期待したい。





 ***





 ツキ、正しくは“ツキウミ”というそうだけど、彼とベルクは一度ログアウトし、残された俺とムーシカとイースラは食堂へと足を運んだ。


 時刻は昼もだいぶ過ぎた頃合いで、だいぶお腹がすいている。



「イースラは茶菓子をかなり食べていたが、昼食までいけるのか?」


「昼食は別腹、問題ない」


「それを言うなら、『お菓子は別腹』なのでは……」



 食堂は城館の一階、一般的に想像するよりは狭く十畳ほどで、大机が中央に配されているいたって普通の構造をしている。

 俺の隣にはムーシカ、正面にはイースラが座り、机の上ではすでに並べられた料理が湯気を立てておいしそうだ。



「では、いただこうか」


「わうっ! いただきますなのだぁっ!」


「いただきます」



 今日の献立は、相変わらずの黒パンとそばの川で獲れた焼き魚に謎の草のおひたし、メインがヤギミルクのシチューという構成だ。


 ヤギミルクのシチューというと少し臭みがあって好き嫌いがわかれるけど、すでに幾度となく食べたこのシチューは、腕前を上げた料理人によって極上のコクとうま味を感じる品のいい味わいとなっていた。



「うむ、うまい。また腕を上げたな、ティコ」


「えへへっ♪ ニオさまにそう言ってもらえると、ウチも嬉しい♪」



 最初にメイド兼料理人として雇ったティコは、もともと≪料理≫スキルがレベル3だったものの、アエカに弟子入りをしていまではレベル5となっている。


 最初期は香辛料の類もなく、彼女の得意料理だというヤギミルクのシチューも、野性味あふれる味わいが非常に癖のある一品だったんだ。


 それがいまでは、むしろ楽しみなメニューのひとつかもしれない。



「わうぅっ、おいしいのだぁっ! うっ、うっうっうぇっ、おなかいっぱい食べられるようになってっ、ほんとに嬉しいのだぁっ!」



 ムーシカがシチューを食べながら泣き出してしまった。


 彼女も、最初こそ遺体かと思った痩せ細った様はすっかりと鳴りを潜め、いまはぷっくりとした頬がなんともかわいらしい美少女となっている。


 その当時の、満足に食べ物がない頃を思い出してしまったんだろう、泣きながらも感謝をしつつ食べることもやめない。



「よしよし♪ ニオさまのおかげで食材は十分にあるから、お腹いっぱいになるまで食べてね♪ ムーシカ♪」


「わうぅぅっ! ティコのごはんはさいこーなのだぁっ!」



 ガン泣きでもぐもぐするムーシカ、彼女を慰めるティコ、尊い……。



「あとは、やわらかいパンかそれこそ米があれば……」


「ニオさま、やわらかいパンなんてあるんですか?」


「あたしも初耳。こめ?も食べてみたい」


「わぅ? ムーシカも!」


「そうか、皆は食べたことがないのか……。現状では、材料となる植物を発見できていなくてな……。これからの開拓次第ということになる……」



 黒パン、だいたいがライ麦パンのことだけど、硬いといっても栄養価は高いので、これはこれで領民の主食として不満はない。


 それでもやはり、ログアウトができない以上は懐かしくなるんだ。


 もう二ヵ月近くも食べていない日本の味……。


 どこかにないだろうか……。

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