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第百三十八話 レイドボス討伐への道筋

「皆の者、緊急配信に集うてくれたことを感謝する!」


『通知があれば即参上します!』

『待ってましたニオさまー!』

『水着に軍装とはなかなかに通ですな』

『エンシェントクラーケンやべー!』

『中央被害甚大、このままだと壊滅します!』

『いまきた。なんかやってんの?』

『エンシェントクラーケンにエモルデ港が襲われてる』

『え、やべーじゃん!? 俺もすぐ行く!』



 ニオの配信チャンネルとは、≪World Reincarnation≫の公式チャンネルでもあるから、配信を開始すれば登録している人には通知が行く。

 この場にいる者の多くも気づいたようで、配信開始からわずかの時間で視聴者は万を超え、皆が同様にエンシェントクラーケンのことを話していた。



「すでに既知の者もおるであろうが、現在グランエモルデはエンシェントクラーケンの襲撃を受けておる! なにぶん突然なことゆえ、現地の防衛戦力が態勢を整えるまでは居合わせた余が臨時の指揮を執る!」


『ニオさまの行く先で何かが起こるってまじ?』

『まじまじ。撮れ高に恵まれてるからまじ常時配信してほしい』

『ぎゃああっ! あのでかぶつに殴られただけで死ぬぅっ!』

『現地が地獄と化していて草www』

『笑いごとじゃねーぞ! おまえらも来い!』

『行く行く、待っとけ!』


「ニオさま、中央が決壊します!!」

「クラーケンの触手をまずなんとかしないと!!」

「あああっ、前衛が壊滅したあああっ!!」

「ニオさま、どうすれば!!」

「「「ニオさま!!」」」


「よし、この配信を使用し全隊に指示を与える! 近接職は互いに連携せよ、距離を取り乾いた砂地までおびき寄せるのだ! 遠距離攻撃が可能な者は引き続き投射攻撃を、絶対に腕の攻撃範囲に入るでない!」


「みんな聞いたか! 水際から引けーーーーっ!!」



 突然の大規模ボス戦闘(レイドバトル)に混乱するなかで、俺の指示を受けた現地のプレイヤーたちが後退をはじめた。

 とはいえ、数十メートルも後退してしまえば観光街に突入してしまうため、できるだけ砂地で押しとどめなければならないという状況だ。


 こちらの増援も続々とやって来てはいるけど、本来はもっと育成が進んでから戦うような相手だから、攻撃を受ければ多くが消し飛んでしまっている。


 死亡が重なることによるデスペナルティは、“ステータスの損失”。


 一度で失うことはないとはいえ、あまりにも死にすぎると最悪は部位欠損したままとなってしまうため、ゾンビアタックはさせられない。



「ニオさま、広範囲攻撃特化のプレイヤーを招集したであります!」


「いっちゃん一等兵! 早いな!」



 彼に続いて駆けつけてきたのは、十数人の屈強なプレイヤー。


 彼らは多種多様なレリックを持ち、高揚もしているようで、やってやるぜという気概を込めた目でこちらをまっすぐに見つめてくる。



「ヒワ殿の情報網も利用させていただいたであります!」


「いつの間に……」


「えっへへぇ、情報屋ですから当然ですよぉ♪ ただお代はぁ……」


「わかっておる。あとでいかようにも申せ」


「やったぁ♪」



 ヒワは“情報屋”というだけあって顔が広いらしく、この短時間で要求したスキルを持つプレイヤーを選別することができたのだろう。


 俺は集まってくれた一人ひとりの顔を見る。



「うむ、力ある眼差しは底知れぬ胆力を感ずるぞ。して、集うてくれたそなたらに与える役目とは、エンシェントクラーケンの腕部破壊だ」


「ういっ、ニオさまのお役に立てるなら!」

「圧倒的攻撃力こそが、戦士の花ですからな!」

「攻撃力を特化させるために、攻撃力を特化した甲斐があるというもの」

「ふははっ!! 力こそパワーッ!! パワーこそ力ぁっ!!」

「あてぃしの複合魔法は海を割るもんね、余裕じゃん」



 これまた、なんか濃そうな面子が集まったな。


 その数は俺を含めて十六人と、八本の腕にふたりずつではだいぶ心許ないため、四本四人ずつの二段階攻撃に分けるべきかもしれない。



「よし、いっちゃん一等兵、もうひと仕事を頼む」


「いかようにもお申しつけくださいであります!」



 腕部を確実に破壊するために、まずはエンシェントクラーケンに隙を作る必要があるけど、それはクランのほぼ全員が“銃”型レリック持ちという、特殊な条件に合致する皇国大隊にのみ任せられる。


 防御を捨ててでも攻撃全振りは、盾受けすることすらできないこのようなレイドボスを相手にする時こそ、その力を最大限に発揮するんだ。


 攻撃全振りはそもそもがニオのコンセプトでもあるし。


 俺は追加の指示を出し、だいぶ距離の縮まった前線へと踏み出した。



「ニオさまが動いた!」

「来た! ニオさま来た! これで勝つる!」

「ニオさま、やっちゃってください!」

「あの剣がピカーって光るやつなら余裕っすよね!」

「というか、ニオさまはサテライトレーザー撃てたよな」

「ああ、あれでドカーンって最強かよ?」

「最強だろがい」

「最強だわ」



 周りは勝手なことを言っているけど、あれはもうやったらダメって釘を刺されているんだよな……。

 超級原理値を活用し、全力光焔剣身を形成すれば一刀両断できるかもしれないけど、主役はあくまでプレイヤーということを忘れてはならない。


 ニオ()はあくまでもNPC、まずは彼らに活躍をさせる。



「皆の者、再び距離を詰める! 腕の攻撃範囲に気をつけ、範囲外から攻撃を繰り返すのだ! 避けることを第一とせよ!」


「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」」」



 エンシェントクラーケンは、プレイヤーたちに引きつけられほぼ砂地へと巨体のすべてを晒していた。


 これで戦列を左右にも築くことができ、とはいえもう数メートルも後退できない状況は“背水の陣”と言っても過言ではない。


 引けば町に被害が出てしまい、押せば海へと逃げられる、厄介だ。



「薙ぎ払い、来るぞ!」



 そして、タンクローリーどころではない太さのタコ腕が横薙ぎにされる。


 俺たちはステップで範囲外へと逃れ、それでも突風に煽られて転がる者が続出するも、範囲内に残した特大剣の切っ先がタコ腕の先端を斬り裂く。


 当然、大した効き目はないけど、いまはこれで十分だ。

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