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第百二十六話 集い(1)

「それで、ほんとに先輩なのかな……先輩だよね! こんなに……ちっちゃくなっちゃって……あの先輩が……ぶふっ! かわいすぎっ!」


「わ、わわっ、笑うな! ひっつくな! 距離感どこいった!?」


「だって不貞腐れてるニオたんがかわいくて、まさか中身が先輩だなんて!」


「ぐっ……。だから誰とも会いたくなかったんだ……」



 侍従と衛兵が退出したあと、ベルクとツキウミとも軽い挨拶を交わし、最終的に談話室には俺とエスティリア女王とアエカとクラリッサだけが残った。


 とりあえずソファに座って話をしようとしたところ、エスティリア女王もとい高屋も隣に座り、さわさわと体に触れてきたからたまらない。

 外見だけは淑やかなハイエルフの女王が、いたずらっ子のような笑みを浮かべてじゃれてくるとか、王道ファンタジーのイメージが崩壊してしまう。



「はぁはぁ、生ニオたんがやばいとは聞いてましたが、ぶっちゃけここまでとは思ってなかったんですよね。先輩のキャラデザ見てる身としては大袈裟だと思ってたのに、離れがたい衝動に駆られます! はぁはぁっ!」


「だから抱きつくなって! 中身はオレだぞ!?」


「別にいいじゃないですか! 先輩だって、エスティリア(美女)に抱きつかれてほんとは嬉しいですよね! おっぱいだっておっきいんですよ!」


「ばっ!? やめろ押しつけるな! エスティリアのイメージがーっ!!」


「ほれほれ~、ここがいいんか? ここが敏感なんか? ぐへへ、おいたん女の子の気持ちいいとこニオたんに教えちゃうぞ~。うへへ~」


「やっやめろっ、やんっ!」


「おほうっ、いい反応! それなら~、ここはどうかな? こっちは?」


「んぅ……んはぅっ! 触るんあっ、そんなとこっ……!」


「や、やば……もっといじめたい……いいよね?」


「ダメ……やっ……な、何を……」


「おいたん、ニオたんをはむはむしちゃうぞ~。かぷっ」


「ふぁっ!? あんぅぅううぅぅぅぅっ!!」



 体をまさぐられ、耳を甘噛みされたところで全身に電流が走った。


 まさか、竜角ならともかく耳まで性感帯だなんて……。俺は涙ながらに耳を押さえて必死に抵抗するも、高屋による怒涛の愛撫は止まりそうにない。

 このまま女の子の快感に晒され続け、心まで落ちるところまで落ちてしまえば、果たして俺は現実の自分自身に戻れるのだろうか……。


 大丈夫だ、とは必ずしも言えない。


 それほどに、これまでこの体で感じられた刺激は鮮烈で……。



「高屋さん、いい加減にしてください」



 若干、流れに身を任せてしまうのも悪くない……という思いに支配されそうになっていたところで、助け舟が出された。



「あ、あは……。三条さん、いたんですね……」


「最初からいましたよ。ホツマさんが困っていますし、話もできません」


「あはは……ごめん……。だって先輩が涙目でなすがままとか、ちょっとサドっ気に火がついちゃって……ほんとすいません。反省します」



 おまえ……サディストだったのか……!

 BL好きの腐女子くらいしか知らなかった……。



「謝るのは、私でなくホツマさんにです」


「先輩、すいません。か弱そうだったので調子に乗りました」


「う、うん……。正気に戻ったのならいいけど、外交問題になりかねない言動はできるだけ慎むように……。いまはエスティリア女王なんだから……」


「はぁい、気をつけます」



 か弱いって、ニオはたしかにパッと見は少女だけど、腕力値から考えて反撃すれば女王に怪我を負わせかねないので、手を出せなかっただけだ。


 とはいえ、ようやく高屋のおふざけは落ち着いたようで、体を離して本来のエスティリア女王らしく姿勢を正した。



「では、先輩がウォルダーナまで来た目的について……」



 エスティリア女王の中の人、そして≪World Reincarnation≫キャラクターデザインチームのリーダー、“高屋(たかや) ミミ”。


 彼女はまだ二十代半ばと若く、ドジっ子だったりBL好きだったり、熱中するあまりの問題行動があったりするけど、イラストレーターとしての実力は俺自身がチームリーダーに推薦したほどの折り紙付きだ。


 かくいう“麗しのエスティリア嬢”も高屋のデザインだから、俺と同様によく知る本人が中の人として抜擢されたという経緯なのかもしれない。

 性格が真逆でも、公私でキャラが変わってしまうというのはギャップ萌えにもなるから、まあこれはこれでありなんだろう。


 とりあえず、目的の国交樹立とポータル設置を通してしまおう。



「の前に、もうひとり来てもらってます」



 こちらも話をする姿勢になったところで、突然ぶっこんできやがった。

 俺はつい、なんともコミカルにガクッと体を傾かせてしまう。



「も、もったいぶって……。誰だ……?」


「クラリッサ、入ってもらって」


「はいなのです」



 高屋の指示を受け、クラリッサが奥の扉へと歩み寄っていく。


 広さが教室ほどの談話室には、いくつかのやわらかいソファが設置され、王城ではあるものの比較的くつろげるスペースとなっている。

 入口は、俺たちが入ってきた廊下へ続くものと、奥まった場所にある隣室へ続くとみられる扉、クラリッサが向かったのはそちらだ。


 彼女は丁寧にノックをしてから、中の返事を待たずに扉を開けた。



「よう久しぶりだな!」


「げぇっ!?」



 扉が開くやいなや勢いよく入ってきたのは、見るからに盛り上がった筋肉が健康的なジュストコール姿の大男。

 海賊船長といってもいい装いの男は、ほかでもないグランデストニア連邦共和国の統括議長、その名を“グレン ルド ロスヴァニア”。


 要するに中の人は俺にとっての悪友……“矢田(やだ) 剣吾(けんご)”。


 身内の中でも、特にいまの姿を見られたくなかった相手だ……!



「なっ、なななっ、なんでこいつがここにっ!? 高屋っ!?」


「ニオたんが、ウォルダーナを目指してる話は皆の知るところなので、どうせならということで閣下にも来てもらいました~。パチパチ~」


「いや拍手するところじゃないが!? 冗談でなく!?」


「冗談も何も俺はここにいるぞ、なあニオ殿下(・・・・)?」


「うっ!?」



 グレン統括議長はニヤリと不敵に笑い、対面のソファに座った。


 彼が、ケンゴが“グレン ルド ロスヴァニア”の中の人である限り、いずれ顔を合わせる羽目になるとは思っていたけど、まさかこのタイミングで……。


 高屋だけでも身を縮こませる思いなのに、同時にとか……。


 こ、これは、ひっじょうにまずい……。


 このままでは恥ずか死んでしまいます……!

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