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第百十九話 決着

「第一小隊、射撃用意よし! ニオ姫さま!」



 皇国大隊はトサカカッターの指揮で横隊を組み、全員が目前まで迫るモンスターの群れへと銃口を向けた。

 彼らはほぼ全員が射撃武器で、“弓”以外にも一部の人員が“小銃”へと強化されているため、遠距離から間引くには最高の布陣だ。


 現場は幅三車線ほどの道、左右には家屋が立ち並んで簡易的な壁となり、限りない直線は遮るもののない言わば射撃練習場。



「まだだ」



 そして、スタンピード先頭との距離は二百メートルを切っている。


 小銃ならもう有効射程内だけど、相手は致命部位の少ない植物系モンスターだから、十分に狙いやすい距離で面密度も高めなければならない。


 弓の有効射程まで考えたら、射撃開始距離は……。


 ………………百五十メートル。


 …………百二十メートル。


 ……百メートル。



「いまだ! 撃て()ぇっ!!」


射撃統制(ファイアコントロール)! 撃て()ぇっ!!」



 俺の号令とともに皇国大隊が一斉に発砲した。


 小隊三十人ほどの弾丸と矢が、大群となって押し寄せるマンイーターの先頭を貫き、勢いが衰えるまで後続も貫いていく。


 銃で茎や葉には当てにくいけど、当たれば防御力はないに等しい。



「次弾、撃て()ぇっ!」



 各自射撃ではなく、指揮官の号令を待つ統制射撃が行われる。


 それも、道に対して平行ではなく、若干十字砲火になるよう隊列に角度がつけられていて、交差点となる複数体を確実に討伐しているようだ。


 そうして、同様の統制射撃が五回行われた。



「装填! 弓隊は援護!」



 小銃といっても、ボルトアクションライフルでは装填数が五発。

 統制射撃の大きな隙となる装填中は、弓が間を埋める戦術らしい。


 さらに再装填以降も、皇国大隊による統制射撃が行われる。


 続く統制射撃によるサイクルが計六回。ここまででマンイーターはだいぶ減り、それでも最後尾の“樹毒のクミーリア”には大したダメージがない様子だ。

 彼我の距離はすでに五十メートルを切り、ここで迅速に中ボスを討伐するなら、より高威力の攻撃スキルを使用するべきだろう。


 もちろん、狙いどおり(・・・・・)。今回ばかりは本当に言い訳でなく、ある程度はこうなるだろうと予想をして、俺は破れたまま(・・・・・)の服でここにいる。



「あとは余が出る、援護せよ」


「白兵戦闘用意! 着剣!」



 隊列を保ったままでいてくれればよかったけど、皇国大隊は小銃の先端に短剣を装備し、弓手は剣を抜き、一緒に白兵戦をするつもりだ。



「アエカ、ベルク、先駆けを任せる! 斬り開け!」


「はい!」


「御意!」


「ニオ姫さま、拙者も!」


「よし、きわめも行け! スキルは使うなよ!」


「りょっ、了解でござる!」


「ライゼはデバフ支援、必要に応じて斬り込め!」


「わかったわ。速やかに終わらせるのね」


「ツキウミは、余に最低限のバフを!」


「それくらいなら大丈夫ですぅ」


「ヒワは……」


「ヒワは非戦闘員なのでぇ。でも自分と幽霊ちゃんくらいは守れるので、気を配らなくても大丈夫ですよぉ」


「そ、そうか……」



 パーティメンバーに対する指示とともに、ツキウミからは防御バフ、アエカからは防御+運動性が向上する≪親愛の加護≫をかけられる。


 攻撃バフも欲しいところだけど、“輝竜種(ロードドラゴニア)”は脆いから安全マージンだ。



「これより“樹毒のクミーリア”を討伐する。全員、突撃!」



 まずは先頭にベルク、続いてアエカ、きわめ、ライゼの順で跳び出した。


 剣を支えに仁王立ちする俺の横を駆け抜けていくのは、皇国大隊。


 おそらくは、ほぼ全員がニオ()を視界に収めただろうから、≪皇姫への敬愛≫による支援効果を受け“英雄化”しているはずだ。


 継続時間は十三秒だけど、更新する必要なく討伐してみせる。



『原理充填率100%、≪創世の灰≫アクティベーションレディ』



 よし来た!


 そして思い出せ、“骸渡りのトリストロイ”を討伐した時のことを。


 俺が、ニオ(・・)が自ら発した極光の剣を顕現する言の葉を。


 創造するんだ、“輝竜種の姫プリンセスオブロードドラゴニア”の最大最強を。



「我が怒り、星霊樹の恩寵、星命を芽吹かせる極光のすべてを込め、顕現せよ、顕現せよ、顕現せよ、世界をも斬り拓く星灰の剣!!」



 握りしめた特大剣、自らのレリック≪星宿の炉皇≫から視線を上げると、皆がマンイーターを相手に奮闘していた。


 ベルクが引きつけ、アエカが斬り撃ち、ライゼが弱体化支援を行い、きわめが斬光を残していく。

 こちらよりもまだ多いマンイーターを相手に、誰も彼もが優位に立ち、“樹毒のクミーリア”の毒粉だろうと満足な効果にはいたっていない。


 頼もしきは、幾多の世界を救ってきたであろう経験豊富なプレイヤー。


 彼らがいれば、ボスラッシュだろうともう何も怖くない。



「増援第二陣、到着ですー!」

「うわ、ほんとに一瞬で来れたわ」

「ニオさまのためなら、どこだろうと即参上!」

「ニオさま、大丈夫ですか!?」

「俺らが来たからにはもう大丈夫だぜ!」

「もう戦闘はじまってる、みんな参戦しよう!」

「あれか、別に倒してしまっても構わんのだろう?」



 背後には、続々と転移してくるさらなるプレイヤーたち。



「すまぬな、そなたらはこれからに備えよ。奴に対しては余が行く」



 そうして、俺は彼らの反応を待たずに駆けだした。


 仲間たちが斬り開いた道を抜け、マンイーターを率いる中ボスへと。


 “樹毒のクミーリア”を守る者はすでになく、俺と奴との一騎打ち。


 だけど、すでに準備は整った。


 ≪創世の灰≫で顕現した黄金に輝く特大剣を掲げ、今回はそれだけでなく、服が破れていることにより≪汚破倍化≫まで発動する。


 最終攻撃力は二倍、中ボスごときが止められるはずはない。



「一撃で終わらせる!! 喰らえよ、≪星宿の炉皇(ゼフィラテレシウス)≫!!!」



 その瞬間、世界はまばゆい極光に包まれた。

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