第九十三話 旅の目的、不安な体力。
「おにぎりおいし……んん? なんで白米が……?」
「お気づきになりましたか。それはライゼさんが持ち込んだ物ですね」
「ライゼが? どこで手に入れたんだ?」
「グランデストニアよ。精米をプレイヤーに売って旅費に当てていたの」
「グランデストニア……! ちなみに種籾は……?」
「持っていないわ。国の認可を受けた商人しか取り扱えないのね」
「なるほど……」
まあ、ユグドウェルの気候だと稲作は無理だけど、貿易で手に入る可能性があるというのは旅の新たな目的ができるというものだ。
そんなわけで、旅立ち早々にひと波乱があったものの、不意に訪れた懐かしい味を今度はしっかりと味わうため口に含む。
海苔も巻かれていない具も入っていない、シンプルな塩むすび。だけどそれがいい、現実で倒れる前もレトルトばかりだったから、米の甘みが嬉しい。
素材さえ流通させれば、あとはプレイヤーが和食だろうとなんだろうと作ってくれるから、グランデストニアとも国交を結ばねば。
「ふふっ、一心不乱に食べられていますね」
「そんなにおいしかった? もっと持ち出せばよかったわ」
「大自然の中でというのもうまさを引き立てますからな。それがしもこの体躯でさえなければ、腹いっぱいに食べたいと願うほど! カカッ!」
「ボクとしてはぁ、具がツナマヨなら最高ですねぇ」
「具というであれば、それがしは昆布の佃煮を所望する」
「私はおかかでしょうか。素朴な風味が好きなんです」
「私はネギトロね。グランデストニアをスタート地にした理由」
「余っ、余は焼きおにぎりっ! しょうゆ味っ!」
「ふふふっ。ニオさま、そんなに頬を膨らませてハムスターみたいですよ」
「カカッ! ニオ姫さまはよほどお気に召されたのでありましょうな!」
「このおにぎり、塩加減がちょうどいいですもんねぇ」
「グランデストニアにはしょうゆもあるのね」
「ライゼ……導きの女神……?」
「吸血鬼よ」
のどかな気候のもと、頬におにぎりを詰め込みすぎた俺は少し恥ずかしい思いをしたものの、そうして穏やかな昼食時は過ぎていった。
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ニオ ニム キルルシュテン
種族:輝竜種
腕力:128 → 160(+20)
体力:36 → 38(+20)
敏捷:41 → 45(+20)
知能:99 → 125(+20)
原理:900 → 900
物理攻撃力:486 → 570
属性攻撃力:288 → 350
物理防御力:232 → 246
属性防御力:445 → 483
レリックスキル
≪生命の杯≫:レベル2 スキル:≪創世の灰≫ 光焔属性:40
≪真理の冠≫:レベル2 スキル:≪創世の灰≫ 光焔属性:40
思い描くことで任意の現象を創造する。
≪柔軟性向上≫:レベル3
皮膚弾力、体の柔軟性を向上させる。やわらかボディ。
≪千陣破断≫:レベル2
横薙ぎの範囲攻撃を行い、攻撃対象に≪裂傷≫を付与する。
スキルダメージ:220%物理攻撃力 継続ダメージ:12%属性攻撃力
≪装甲武器≫:レベル2
防御、補助系スキルの効果を≪遺物≫に付与する。継続時間3秒。
≪打撃耐性≫:レベル2
打撃に対する耐性を得る。
≪鑑定≫:レベル1 スキル:≪鑑定≫
レアランクまでのアイテムを鑑定することができる。
ユニークスキル
≪皇姫への敬愛≫:レベル3
スキル所持者を視認したプレイヤーに≪英雄≫効果を付与する。
英雄効果中のすべてのプレイヤーは1.3倍の攻撃力補正を得る。
スキル所持者を視認することで≪英雄≫効果の更新、再取得が可能。
継続時間:13秒
≪英雄≫ 士気向上:レベル3 クリティカル率向上:レベル3
≪率いる者≫:レベル2
パーティメンバーのすべての基礎ステータスに+20を付与する。
この効果はスキル所持者が対象の認識範囲内に存在する限り永続する。
≪汚破倍化≫:レベル1
体が汚れ、装備が破損すると、状態に応じて最終攻撃力が倍化する。
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「うーん……」
昼食を終え皆が後片付けをしている間に、俺は川縁に腰を下ろしてあらためてステータスを確認していた。
「この、体力ステータスの伸びの悪さよ……」
輝竜種は攻撃力特化の種族とはいえ、ちょっと露骨すぎやしないか……。
ニオの専用衣装のおかげで、いまのところは下手な盾役並の防御力があるけど、いずれ物防が壊滅するのは火を見るよりも明らかだ。
ほかにも専用の戦鎧がどこかにあるはずで、それを装備できれば防御面は多少マシになるとはいえ、体力の低さがマスクデータの持久力にも影響するのは、この旅路の弊害になるのはどうしようもない。
やはり、次に手に入れるのは体力増強系のシードクリスタルか。
根本的な解決にはならないけど、なんかこう……窮地に立たされることが多い以上は、防御面も拡充しなければいつかはひどい目に遭う。
いや、もう散々遭ってるけど……。
「ニオさま、何か気になることでもありましたか?」
俺がうんうんと唸っていたところ、背後からアエカが覗き込んできた。
「ビルドの方向性を悩んでるだけだよ」
「特化型の種族は長所を伸ばすか短所を補うか、人によって判断が分かれますからね。安定性を重視するのなら、体力の低さをどうにかすべきですが」
「アエカにはお見通しか……。この世界で死ねない以上は、まず体力の低さを補うべきなのはわかってるけど……」
「入手にも運が絡んでくるというわけですね」
「そうそう。基礎ステータスを上げるシードクリスタルはレア中のレアだから、和牛さんもまだ一度も見たことないって言ってたし」
シードクリスタルの産出自体は増えているため、最近は強化用に低レアリティの物が安売りをされているけど、それでも欲しい物はまず見つからない。
とはいえ、この手のゲームはまず攻撃力が優先されがちなので、≪体力増強≫なんかは物さえあれば市場へ出回るようになるとは思う。
「となると、やはり機会も重要ですよね……。度を越した優遇はできませんが、アイリーンにも直接市場を見ておくように伝えておきます」
「それは助かる。というか、しんどいのはこの旅路の間だ……。迷惑をかけるかもしれないけど、よろしく頼むな」
「はい。私が抱っこをしてでも進みますね」
「う、うん……」




