第50話 切り札
聖なる剣。
それは私の所属するパーティーの名だ。
私を除いたメンバーのレベルは平均150程もあり、この界隈では最強クラスの冒険者パーティーと言っていいだろう。
メンバーは――
リーダーであり、私の姉であるアイリン。
クラスは聖騎士で、パーティーの盾として常に敵と対峙する役割を担っている。
年齢は私より5つ上の21歳。
聖なる剣だと、年齢は実は下から二番目だったりする。
若いのにリーダーを任せられるって事は、それだけ仲間達からの信頼が厚い証拠だね。
実際姉は凄く優秀で、私の自慢だったりする。
次に近接アタッカーで、戦士のパラポネさん。
がっしりとした身体つきの浅黒い肌の女性で、姉と並んで前に出て敵を薙ぎ倒してくれる頼もしい人だ。
年齢は38歳で、パーティーで一番の年長者となっている。
熟練の――なんて言ったら怒られるわね。
まあとにかく、冒険者経験豊富な人という事で。
3人目は、盗賊クラスのヘスさん。
釣り眼の為に性格がきつそうに見えるが、その実凄く優しい女性だ。
クラス的に戦闘能力はそれほど高くはないが、罠や索敵などの能力は、迷宮攻略に必要不可欠な物と言っていい存在よ。
年齢は23歳で、趣味は編み物だそう。
この3人に、武僧である私を含めた4人が前衛。
で、後衛は3人なんだけど――
回復担当。
僧侶のミーアさん。
彼女は赤毛の可愛らしい人で、胸がバインバイーンって感じになってる。
もう本当におっきくて、そのせいかよく他の皆に触られたりしてるんだよね。
まあ女性同士ではあるんだけど、やっぱなんていうか、ちょっとセクハラ感が強い。
そういう私も、以前ちょっと触らせて貰った事があって、なんというかこう……重量感が凄くて、思わず「おおっ!」ってなってしまった経験が……
さて、次は魔法使いのミスティさん。
彼女はこのパーティー一のレベルを誇る、魔法アタッカー。
口癖は「ふ、またつまらぬ物を燃やしてしまった」で、その言葉通り、炎の魔法を得意とする魔法使いさんだ。
格好は黒のローブに、黒の三角帽子。
見た目もザ・魔法使いって感じの人である。
年齢は26歳。
そして最後は、狩人のエレンさん。
狩人は弓と魔法を扱えるクラスで、普段は弓をメインに使っている。
魔法はどちらかというと、物理攻撃が効きにくい相手に対する補助がメインだ。
彼女の攻撃精度はとても高く、常に的確に相手の弱点を射抜いてくれる。
流石はベテランである。
年齢は37歳。
以上、この女性7名が聖なる剣のメンバーだ。
「さて、遂に169層までやって来たわね」
私達は今、168階層を抜け、169階層――エリアボスへと挑戦しようとしていた。
目の前にある巨大な扉を抜ければ、その先にボスが待ち受けている。
この迷宮の最高到達記録は、ベーガスという冒険者パーティーの169階層だった。
なので、ここをクリア出来ればその記録を私達が塗り替え、単独トップに立つことになる。
「この戦いのカギを握るのは……アイシス、あなたよ」
「うん、頑張る」
戦いの鍵。
そう姉に言われて、私は力強く頷いた。
「ま……やばそうなら撤退すればいいだけだし、気楽にやんな」
「そうそう、今回は演習位に考えておけばいいのよ」
年長者二人。
エレンさんとパラポネさんが私の緊張を見抜いてか、気楽に行けと笑顔で言ってくれる。
「はい」
聖なる剣に入った時点では、私は只の足手纏いだった。
この1年という短期間でレベルを123まで上げられたのは、パーティーの協力があっての事だ。
それでもまだ、レベル的には他のメンバーよりは低めである。
その私がエリアボス戦の切り札足りえるのは、特殊な装備のお陰だった。
――爆裂の腕輪。
150階層のエリアボスを倒した際にドロップした、超レア装備だ。
武闘家、武僧用の装備で、冒険者ギルドの支部長の見立てだと、金貨5千枚スタートのオークションが妥当な程の高額品だったりする。
普通の冒険者パーティーなら、きっとオークションに出して売りさばいていた事だろう。
だが聖なる剣は違った。
私達の目標は、迷宮の完全攻略である。
そのため、有効に使える者がいるならそれを利用して更に進む。
そう言う方針だ。
「みんな、準備はいい?」
姉の言葉に、皆が頷く。
倒すための用意も、そのための打ち合わせも済ませてある。
後は、全力で戦うのみ。
「いいみたいね。それじゃあ、行くわよ!」
姉が振り返り、背後にあった巨大な赤い扉を開く。
さあ、エリアボス討伐よ。




