第26話 大賢者【2】
「ふふ、どうやら……」
「新たな扉を開いてしまった様ね」
クレアが二人で変なポーズを取る。
そう……クレアが二人で、だ。
「うん、まああれだ。レベル150到達おめでとう」
暗殺者はレベル150で分身というスキルを習得する。
分身はHPこそ3分の1しかないものの、それ以外のスキル、能力や装備は完全に本体と同一扱いだ。
そのためこれが使える様になると、暗殺者の火力は一気に倍増する。
ああ、そうそう。
スキルや能力が一緒と言っても、流石に分身が分身を生み出すなんて真似は出来ないので悪しからず。
それが出来たら無限に増えてしまうからな。
「ふふ……ユーリ。貴方が秘密を守れるというのなら」
「私の更なる深奥をさらけ出してあげてもいいわ」
本人はカッコイイと思っているのか、痛々しいポーズのまま意味深な事を言って来る。
だが聞くまでもなく、内容は分かり切っていた。
「隠密スキルがレベル10になって、透明化できる様になったんだろ。それぐらい知ってるよ」
隠密スキルは、透明化できるかできないかで劇的に使い勝手が大幅に変わるスキルだ。
相手に見えてるか見えてないかの差は大きい。
――分身に寄る火力の大幅増に加え、透明化に寄る奇襲能力の向上。
これらの要素により、どちらかと言えばステータス控えめの弱クラスだった暗殺者は、レベル150で一気にパワーアップする事になる。
ま、それでもこの時点じゃ強キャラとまでは言えないが。
「ふふふ、甘いわよユーリ」
「その程度で見破った気でいるなんて、貴方もまだまだね」
「ん?違うのか?」
どうやら違ったらしい。
じゃあ勿体付けた深奥ってのは何なんだ?
「実は……」
「大賢者のレベルが2に上がったのよ!」
「ふぁっ!マジで!?」
大賢者と言うのは、クレアの持つユニークスキルだ。
まあゲームにはなかった要素だが、話を聞く限りかなり強烈な効果を持っている。
「つか、レベルなんてあったのか」
「ええ!」
「新たなる次元踏み込んだ私に震えるがいいわ!」
「で、効果はどんな感じなんだ?」
震えるかどうかは、まあ効果次第だな。
案外レベルアップしても、大した増加じゃ無い可能性もあるし。
「「ふふ、良いわ!聞かせてあげる!」」
2人のクレアが、『ビシィッ』と擬音が聞こえてきそうな勢いで俺を指さす。
なんかちょっとイラっとしたが、我慢するとしよう。
――――大賢者【1→2】――――
MP +250→500
魔力+250→500
詠唱速度+50%→100%
魔法威力+50%→100%
(new)魔法クールタイム-50%
(new)下級・中級魔法の威力キャップ無視。
(new)下級・中級魔法全て使用可能。
レベルアップ時、魔力とMPの成長が上昇→大幅に上昇。
レベルアップ時、HP・筋力・敏捷性の成長が下降→
成長下降が無くなり、これまで受けていたマイナス補正分を能力に加算。
――――――――――――――
「おいおい。滅茶苦茶強力じゃねぇか……」
特に下級と中級魔法の威力キャップを無視して全部使えるとか、完全に破格レベルだ。
しかもマイナスを受けてた成長分も、完全に補填されると来てる。
今クレアと戦ったら、確実に瞬殺されるな。
俺。
「これぞ闇の力!」
「ええ、今の私は無敵よ!」
いや、流石にそれは無い。
確かにこのレベル帯だったら最強クラスかもしれんが、それでも最終的には死霊術師の方が圧倒的に強くなる。
ぶっちゃけ、極まったネクロマンサーはステータスの桁が違って来るからな。
まあだが本人が無敵と吠えるのなら、丁度いい。
俺も久しぶりに厨二っぽく振る舞う。
「くくく……無敵か。ならば遂に、それぞれ独立する時が来た様だな」
クレアの事情は聞けていないが、此処まで強くなったのならもう十分だろう。
気持ちよく独り立ちしてくれ。
「まだ早いわ!」
「ええ!まだ早いわ!」
むう……
どうやらまだ上げ足りないらしい。
事情が分からないだけに、ゴールが分からなくて困る。
「そもそも……闇に生きるアサシンである私は、大賢者の能力で得た魔法を使う気はないわ」
「強大な力は封印してこそ華!そうは思わないかしら?」
「いや、別に?」
無駄にひけらかすのは俺もあれだとは思うが、自ら封印や制限をかけるのは意味不明だ。
使えるもんはガンガン有効活用して行く派だし。
俺。
「ふふふ、ユーリが真理に到達するにはまだまだ時間がかかりそうね」
「それを貴方に教えるのもまた、バディの役目。私が導いてあげるわ」
「結構です」
果てしなく余計なお世話なので、俺は丁重にお断りを入れる。
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