第17話 言い方
翌朝、ギルドでクレアと合流した俺は自分のレベルを彼女に伝える。
「俺のレベルは100だ」
「ふ……流石は私の見込んだ人物だけあるわね。この麗しき漆黒の刃、クレア・ヴェルヴェットのバディに相応しいレベルよ」
レベル6が大きく出たもんである。
後、ヴェルヴェットの名は何時捨てるのかな?
まあそんな事はどうでもいいか。
「俺のレベルなどまだまだだ。この程度では、伝説など夢のまた夢」
お前糞弱いからレベリングしてやるよの一言で済む話を、俺はクレアの厨二ごっこに付き合う感じで話を進めていく。
何故なら、その方が断られにくそうだから。
「俺がレベルを上げてやるぞ!この寄生虫め!」なんて誘い方をして、万一断られでもしたら巻き返しが面倒くさくなるからな。
なので、初めっから相手が乗って来そうな言い回しで進めていく。
「ふふ、確かに。私達は常にお互いを高め合っていかねばならないわ」
「ああ、俺達はまだまだだ。そこで……俺は闇の領域にもう一歩踏み込もうと思っている。死霊術師にだけ許された、禁断のレベル上げだ」
「死霊術師だけに許された……禁断のレベル上げ!?」
クレアがあからさまに食いついて来た。
実際は動かない僕をコロコロするだけの簡単な作業な訳だが、物は言い様である。
上手く彼女の内なる厨二をくすぐれた様だ。
「僕を生贄にして、経験値を得る」
「なっ!自らに仕える者を切り捨てるというの!?」
「闇に生きる以上、そう言った非情さは必要だ」
「それはそうね……でも……流石に、それは……」
僕を生贄にって言ったら、クレアの食いつきが急に渋くなってしまった。
闇闇言ってはいるが、残忍なのは嫌な様だ。
まあ厨二とは言え、箱入り娘な訳だからな。
其の辺りを計算に入れてなかった事を、俺は軽く後悔する。
もっとソフトに言えばよかった。
「あー、まあなんだ」
大体、厨二っぽく言うから残酷に聞こえるのだ。
もうごっこは止めて、普通に説明する事にした。
「要は俺の僕を倒して経験値にする訳なんだけど……基本アンデッドは蘇生できるし、痛みとかも感じないから、別に残酷な行動って訳じゃないんだよ。そもそも、自我とかないからな」
自我に関しては、無さそうだという想定での話で、確信がある訳ではない。
だがあるかもしれないと言ってしまうと、一体どんな気持ちでとかクレアが考え出しかねないので……まあ嘘も方便という奴だ。
「そう……それだったらまあ、ギリギリ許容範囲ね」
上手い事復活してくれた。
面倒くさい説得をする必要はなさそうだ。
「じゃあ、俺の僕を倒してレベル上げしようか。取り敢えず目標は1ヶ月以内にレベル100だ」
「1ヵ月!?流石にそれは無茶があるんじゃないかしら?」
「俺の指示に従ってくれれば余裕さ。さあ!俺を信じて付いてくるんだ!」
「ふ、いいわ。お手並み拝見と行きましょうか」
こうして始まる。
俺のクレアへのパワーレベリングが。