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第31話 閃光の魔術師! ですわ!

「さあ、早く喋りなさい! 足の関節がぶっ壊れて、二度と立てなくなりますわよッ!」


「誰が喋るか―ッ!」


 かたくなに拒むバネッサ。私は、ギリギリと足の関節を締め上げていく。


「ちくしょうッ! 離せ―ッ! このッ! このッ!」


 バネッサは、苦し紛れに私の足に拳を叩きつけてくる。上半身だけで打つパンチだ。普通なら大したことはないのだが。バネッサのパンチ力は普通ではない。石をぶつけられているかのような痛みが走る。


「くッ……! 何てパンチ力なの!?」


 私の方が痛みに耐えきれずに、足4の字固めを解いてしまった。まさか、こんな形で得意技である足4の字固めを破られるとは思っていなかった。


 殴られた場所がズキズキと痛むが、何とか立ち上がる。足にダメージを負ったのは向こうも同じだ。バネッサも生まれたての小鹿のように足をプルプルと震わせながら立った。


 必死の形相ぎょうそうを見せるバネッサ。


「はぁはぁ…… 前言を撤回するぜ。貴族のお嬢様の格闘技ごっこと言ったな…… あれは取り消しだ。あんた立派な格闘家だぜ」


「ようやく分かっていただけたようね。でも、もう遅いですわ! その足で満足に戦えて? ギブアップすることをお勧めしますわ!」


 足4の字固めのダメージで、バネッサの足はボロボロのはずだ。立ってるのが、やっとのはずだ。私の圧倒的有利な状態は変わらない。


 しかし、バネッサは「ふッ!」と鼻で笑った。


拳奴けんどを甘く見ないでもらおうか! 俺たち奴隷の拳闘士はな…… 負けたら、それは死を意味するんだよッ! まだまだ、戦いはこれからだぜ!」


 バネッサは戦意を失っていない。左手を前に突き出して、そして手を広げた。右手は腰の位置に拳をかまえる。まるで空手の型のようなかまえだ。先ほどまでのボクシングのようなかまえと大きく異なる。


「行くぞぉーッ! おらぁッ!」


 そして、バネッサはそのかまえのまま突っ込んできた。まだ足が動くのか?


「あなたのパンチは見切っていますわよ!」


 さっきまでのパンチなら簡単にカウンターを取れる。迎え撃つ姿勢で待ち受けるが。バネッサは、パンチではなく左手で私の腕を掴んできた。


「へッ! この体勢なら避けることもできねえだろぉッ!」


 バネッサは、左手で私の腕を掴んだまま右の拳でボディブローを放った。バネッサの拳が腹部にめり込む。鈍い衝撃と痛みが伝わってきた。


 そう、彼女が選択したのは『つかんで殴る』という原始的な行為。ボクシングならば反則技だが、これはボクシングの試合ではない。


 腕をつかまれている状態では、避けることも防御することもできなかった。加えてバネッサの常人離れしたパンチ力。この『つかんで殴る』という行為が必殺の技と化している。


「おらおらぁッ! どうだッ!? このッ! このッ!」


 雄叫びを上げながら殴り続けるバネッサ。つかまれた腕を振りほどこうにも、ものすごい握力だ。私は為す術もなく殴られ続けた。


「これで、とどめだぁーッ!」


 バネッサは、そう言い放つと最後の一撃を放つ。バネッサの右拳が私の顔面にめり込んだ。そして、その勢いで私は後ろに吹っ飛んだ。


 そのまま地面に倒れそうになる。意識が1秒くらい飛んでいた。しかし、私は踏みとどまった。倒れずに踏みとどまったのである。最後に私を支えたのは、プロレスラーの意地だった。


「ま、まだ…… まだですわ……」


 そう言うが、立っているだけで精一杯の状態だ。バネッサは、ゆっくりと近づいて来る。


「大したお嬢様だよ。あんた…… 最後だから教えてやる。俺にあんたを殺せと命じたのは神聖教団の連中だ。あんたのことが邪魔らしいぜ? 何でも闇属性の魔力を持っているとかで」


「神聖教団……? そう……」


 バネッサの口から語れた事実。以前、理事長も言っていた。


 神聖教団は、光属性を神聖なものとして崇拝する大規模な宗教団体だ。その代わり闇属性を敵視していると。彼らが私の命を狙って来てもおかしくはない。


 バネッサは、拳をかまえながらゆっくりと近づいて来る。


「悪く思うなよ、お嬢さん。あんたを殺さなきゃ、代わりに殺されるのは俺の方だ。こっちも命がけでやってるんでな」


 それを聞いて、私は「ふふッ!」と笑みをこぼした。バネッサは眉をひそめる。


「何だ? 何がおかしい?」


「ふふふ…… おかしいわ。だって、そうでしょう? あなた、もう勝った気でいらっしゃるの? わたくしは、まだ倒れていませんわ。気が早いのではなくて?」


 私の最後の挑発に、バネッサは乗ってきた。憐れみから怒りの表情へと変わる。


「ほ、ほざけぇーッ!!」


 そして、拳を振りかざして突っ込んできた。私は、ニヤリと笑う。


「とっておきをお見せしますわ! 毒霧どくぎりですわ! ブゥーッ!」


 私は、口から緑色の液体を霧状に吹いた。そして、バネッサの視界を奪う。これは毒霧どくぎりと呼ばれる『ザ・グレート夜叉』の現役時代からの私の得意技だ。(実際に毒は入ってないよ)


「ぐわッ!? な、何だ!?」


 毒霧が目に入って両手でこするバネッサ。その背後に私は回り込む。そして、腰に手をまわしてガッチリとホールドする。


「喰らいなさいませ! ジャーマンスープレックスホールド! ですわ!」


 相手の腰をホールドしたまま、大きく後ろに体をのけ反らす。バネッサの体は一瞬、宙に浮いてそのまま地面に叩きつけられた。


「ぐへぇーッ!!!!」


 潰れた豚のような鳴き声。受け身をとれない素人にとっては、大変に危険な技である。(よい子は真似しちゃいけないよ)


「く…… くそッ! ま、まだ……」


 バネッサのタフネスは異常だった。私のジャーマンスープレックスを受けて、なお立ち上がろうとしている。地面に片膝をついた状態でフラフラしていた。


 私は、助走をつけてバネッサに向かって走る。


「行きますわよーッ! フィニッシュですわー!」


 私は、ジャンプすると片膝をついた状態のバネッサの膝を土台にして、その状態から膝蹴りを放った。私の膝がバネッサの顔面にめり込む。


 この必殺技こそが、現役時代の『ザ・グレート夜叉』で私を魔術師と言わせしめた技である。その名も……


閃光シャイニング魔術師ウィザードですわ!(旧式)」


 さすがのバネッサもこの技を喰らって、立ち上がることはできなかった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ああ、ドイツのスープレックス。 正当な理由でクラシック。 彼女が彼女を悪役レスラーにする彼女の署名の動きを引き出すまで、前後を見るのは楽しいです。 しかし、私は疑問に思う必要があります:彼…
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