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第25話 ショッピング再び! ですわ!

 一週間後、次の休日――――


「さあ! ショッピングですわ! ジェシカお姉さまとご一緒にショッピングに行けるなんて感激ですわ!」


 目の前を仔犬のように無邪気に走り回るキャシー。彼女のテンションは、朝から全開である。その後ろを、私とロッテ、さらにフローラがついて歩く。


 今日は、4人で街にショッピングにお出かけだ。この休日、本当ならじっくりとトレーニングをしたいのだが。なかば無理矢理、キャシーたちに連れ出されたのだ。


 まあ、前回の休日。ニーナ・ニルヴァーナと不良貴族たちにロッテとフローラが拉致されるという事件が起きている。あれから、ニーナは学園を退学し実家に帰っているらしい。同じ事は起きないと思うが、念のため今回は私もショッピングに同行することにしたのだ。



 街の中は賑やかで人通りも多い。その中でも洋服屋が並んでいる通りにやって来た。歩いているのは、お洒落な格好をした若い女性たち。この街のファッションリーダーが集う通りと言っても過言ではない。


「さあ! 1軒目は、あのお店に参りましょう! さあ! 早く! 早く!」


 テンション全開のキャシーは、鼻息荒く私たちを急かす。彼女は、こういうショッピングが大好きな乙女なのだ。


「はぁ。やれやれですわ。お待ちなさい、キャシー」


 私は、軽くため息をついて彼女を追いかける。


 前世のプロレスラー『ザ・グレート夜叉』の記憶が覚醒する前の私は、彼女と同じくショッピングが大好きな貴族の令嬢だった。こうして、よく街まで出かけたものだ。


 だが、今の私はショッピングに興味はない。興味があるのは、己の肉体をただ鍛えることである。それ故に、女性の買い物につき合うのは苦痛でしかなかった。


 1軒目の洋服屋に入る私たち。店の中は、色とりどりのドレスが並んでいる。まさしく女性向けの服屋である。


「ジェシカお姉さま! このドレスなんていかがかしら?」


 キャシーは、ルンルンでドレスを手に取って私に意見を求めてくる。


「そうねえ。いいんじゃないかしら。素敵でしてよ」


 私は、愛想笑いを浮かべながら答えた。こういう時に、女の子に「似合わない」という言葉は禁句だ。必ず「素敵」とか「可愛い」と言わなければならない。それが女の子とのショッピングの鉄則である。


 しかし、私の意見を聞いているのか聞いていないのか、キャシーはすぐに別のドレスに視線を移した。


「あッ! こちらのドレスも素敵ですわ! こちらは、いかがかしら? ジェシカお姉さま!」


「……ええ。そちらのドレスも素敵でしてよ。可愛らしいわ」


 私は、少しイラっとしながらも愛想笑いで答える。我慢だ。ここは我慢に徹するしかない。


「ああッ! あちらのドレスも素敵ですわ! 迷っちゃいますわ!」


 キャシーは、すぐに別のドレスを見つけては走って行った。私は、その背中をため息をついて見守った。


「はぁー! 疲れますわ……」


 思わず本音が漏れ出てしまう。そんな時、後ろを振り向くとフローラがポツンと立っていた。何やら困ったような顔をしている。私は、フローラに声をかけた。


「どうしたの? フローラ」


 フローラは、私に気づいてハッとした顔をする。そして、少しうつむきながら話した。


「あ、あの…… 私、こういうお店は初めてで…… どうしたらいいのか……」


 彼女が困るのも無理はない。フローラは、庶民の出身である。この店は、商家の金持ちや貴族の令嬢が来るような店だ。彼女にとっては、場違いに感じるのだろう。


 しかし、今回のショッピングの目的はフローラのために服を選ぶことである。今度、学園で主催されるパーティーでフローラが着るドレスを選ぶのが本題なのだ。まあ、キャシーもロッテもそれを忘れてしまっているようだが。


「こちらに来なさい。フローラ。わたくしが、あなたのために服を選んであげますわ」


「ほ、本当ですか? ジェシカさん!」


 私の言葉を聞いて、フローラの顔は光が射したようにパァーッと明るくなった。


「わたくしに任せなさい。服を選ぶのは得意でしてよ」


 私は、自信あり気に答える。ここは貴族の令嬢として、腕の見せ所でもある。悪役プロレスラー『ザ・グレート夜叉』ではなく、貴族の令嬢ジェシカ・ジェルロードとしての本来の能力スキルが発揮される場面だ。


「そうねえ…… フローラは、優しくて気品もあるし…… うーん……」


 私は、並んでいるドレスをじっくりと物色していく。


 フローラは、庶民の娘だが。顔立ちは整っていて綺麗だ。それに優しくて温和な雰囲気がある。その雰囲気に合わせた控えめで清楚なドレスが似合いそうだ。


 そう思いながら、ドレスを一着ずつ手に取って確かめていく。そして、一着のドレスを手に取ったところで私の手は止まった。脳にビビっと電流のようなものが流れる感覚。


「こッ…… このドレスはッ!?」


 それは、まるでカラスのように黒いドレスだった。胸元に黒い薔薇ばらの飾り、肩はアシンメトリーで片側だけ羽根のような飾りがついている。


「……格好良いですわッ! ディ・モールト(非常に)格好良いですわーッ!」


 私は、そのドレスに心を奪われてしまった。すると、背後からキャシーとロッテの声がする。


「……ジェシカお姉さま。そのドレスはちょっと……」


「真っ黒で不気味ですわ…… カラスみたいですわ……」


 私は、振り返って言い放つ。


「何ですの!? あなたたちッ! このドレスの良さが分からないですのッ!?」


 キャシーとロッテは、私から視線を背けるも露骨に嫌そうな顔をしている。そんな時。


「あ、あの……! 私、試着してみます! せっかくジェシカさんが選んでくれたんですもの!」


 そう言って、フローラが前に出た。


「そうね。ちょっと着てみてちょうだいですわ」


 私は、ニッコリと微笑んでフローラに黒いドレスを手渡した。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 彼女は危険な女性の邪悪な乗組員を構築しているように感じます。
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