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第15話 わたくし! やっぱりモテモテですわ!

「えー。ただいまの測定には問題があるため。ジェシカ・ジェルロードの測定は、後日改めて再測定とします。その他の生徒の測定は、10分後に開始します」


 教師が、測定室にいる生徒たちに向けてアナウンスする。私の魔力測定は、後日やり直しのようだ。


「やれやれ。やり直しですの? 面倒ですわ」


 私は、小さなため息をついた。1000年に1人と言われる闇属性の魔力の反応が出たのだ。しかし、測定する機器の不具合かもしれない。現に、教師たちが魔力を測定する水晶玉を調べている。何か異常があったのかもしれない。


「キャシー。わたくしは先に教室に戻りますわ」


 とりあえず、自分の測定は終了したのだ。(後日、再測定だが)私は、測定がまだ終わっていないキャシーを残して、その場を去ることにした。


 今日は、魔力測定がメインの日で授業はない。寮の自室に戻ってトレーニングでもするとしよう。



 測定室を出て廊下に出ると、見覚えのある顔の男が1人立っていた。


 銀髪で童顔の美少年だ。確か同い年のはずだが、身長も低いし童顔のため年齢よりずっと若く見える。この男の名は、ギュスターヴ・ギュルネス。前回の騒動で絡んできたギュルネス家の御曹司である。


 ギュスターヴは、私を見ると側に寄って来た。


「やあ、ジェシカ。調子はどうだい? 魔力測定の結果はどうだった?」


「あら、ギュスターヴ。わざわざ、そんなことを聞きに来たの? あなたには関係ありませんわ」


 私は、冷たい態度で答える。この男に測定の結果を教えてやる義理などない。しかし、ギュスターヴは私の冷たい態度が効いた様子もなく飄々《ひょうひょう》としている。


「ああ。君を待っていたのは他でもない。ジェシカ。今度の休日に、君を夕食ディナーに招待したいと思っているんだ。エスコートさせてくれないかな? どうかな?」


 何かと思えば、デートのお誘いのようだ。私は、冷たい態度のまま丁寧に返す。


「あら? それは素敵ね。でも、残念だわ。次の休日は、既に予定が埋まっっておりますの。(筋力トレーニングで) 残念だわ」


「そうか…… それは残念だ。でも、僕はあきらめないよ。また改めて誘いに来るよ」


 ギュスターヴは、断られたのに残念そうな顔もせず。微笑んでいる。見た目に似合わず図々しい男である。


 間を置いて、ギュスターヴは話を続けた。


「ああ、そうそう。ジェシカ。君の耳に入れておきたいことが、もう一つある。ニーナ・ニルヴァーナのことを覚えているか?」


 ニーナ・ニルヴァーナ。彼女は、ギュスターヴの元婚約者だ。前回の騒動の発端となった女である。結局、正式にギュスターヴとの婚約は破棄されたと聞いていた。


「あなたの元婚約者でしょう? 彼女がどうかしたのかしら?」


「最近、良くない噂を聞いている。彼女は、僕との婚約が破棄になってから、不良みたいな貴族連中と交流しているらしい」


 貴族の世界にもロクでもない連中はいる。下流貴族の次男坊や三男坊の中には、チンピラみたいな連中がいるのだ。権力を持っているだけに、普通のチンピラよりずっとタチが悪い。


「あら? そうなの。ギュスターヴ。彼女のことが、そんなに気になるなら。婚約破棄などしなければよかったじゃない。もう一度、婚約をやり直したらどうですの?」


 私は、変わらず冷たい態度で皮肉を込めて言った。しかし、ギュスターヴは真面目な表情で答える。


「それは、できない相談だ。ニーナとの婚約は、元々は親が決めたことだった。あの時は、僕もそれで良いと思っていたよ。君に出会うまではね」


 ギュスターヴは、真剣な眼差しで見つめてくる。童顔だが美少年だ。並みの女性ならそれで落ちてしまうだろうが。私には関係ない。私は強い男性おとこが好きなのだ。


「まあ、それはいい。ジェシカ。話には続きがある。ニーナは、その不良貴族たちとつるんで君やフローラ・フローズンに復讐を企てているようなんだ。だから、君に気をつけるよう言っておこうと思って……」


「ご忠告、感謝いたしますわ。でも、私は大丈夫ですわ。いつ何時なんどき、誰の挑戦でも受けて見せますわ」


 私は、強気に返事をする。プロレスラーたるもの常に臨戦態勢でいなければならない。不良貴族だろうと恐るるに足りない。


「ジェシカ。僕は君のことを心配して言ってるんだ。ニーナのことは、僕にも責任がある。彼女のことは、こちらでも警戒しておくが…… 君の方も気をつけるようにしてくれ」


「はいはい。話はそれだけですの? わたくしは失礼いたしますわ」


 私は、手をひらひらと振ってその場を後にした。


 ニーナ・ニルヴァーナが不良貴族と手を組もうと私は恐くはない。しかし、フローラもターゲットになっているのは気になる。フローラには、今の話を伝えた方がいいかもしれない。


 廊下を歩きながら、そんなことを考えていると。再び廊下で私を待ち伏せしている男がいた。


 長身でたれ目の優男。ワカメみたいな天然パーマの男だ。壁に寄りかかって腕組みをしている。


 この男もよく知っている。クローディス・クロード。こっちは私の婚約者の男だ。


「やあ、ジェシカ。さっき、ギュスターヴのやつと話をしていたろ? いったい、何の話をしていたんだ?」


 それを聞いて、私は「はぁー」とため息をついた。今日は、美少年やらイケメンやらとよく話しかけられる日だ。



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