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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第一章 守るための力
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第九話 ―訓練記録06―

第九話目です。

今回はモルガナ姉ちゃんの訓練です。

モルガナ姉ちゃんが仕事から帰ってきた。

と思ったら、いきなり何かを渡された。


「何これ?」


渡されたのは二つの道具。

手首から指先くらいまでの両刃ナイフのような物と、掌くらいの筒に銀色の糸が巻かれている物。


「これは苦無(くない)鉄糸(てっし)という道具っス」

「何に使える道具なの?」


おそらく次はこの道具を使う訓練をするのだろう。

しかし、名前だけ言われても何に使うかさっぱりわからない。


「苦無は離れた相手に投げて攻撃したり、牽制したりできるものっス。」

「なんだっけ、投擲(とうてき)武器ってやつだっけ?」

「そうっス。短剣ほど強度はないっスが、取り回しやすいんで使い勝手が良いんスよ」


姉ちゃんから説明されたように、投げて攻撃したり牽制したりする道具らしい。

それに、ナイフのようになっているので、咄嗟の近接戦闘でも使えるようだ。


「もう一つは?」

「鉄糸は、相手を拘束したり、移動に使えたりできるんスよ

 細い鉄を編み込んだ糸なんで、強度も問題ないっス」

「えっと、次はこれの訓練をするってこと?」

「話が早いっスね。じゃあ早速やるっスよ!」



それから苦無と鉄糸の訓練が始まった。

苦無を投擲する場合は、要は的当て。

相手の位置や風などの予測が必要になるのだが、戦闘訓練をしていたおかげで特に難しくはなかった。

苦無での近接戦闘は、短剣程の強度が無いので、使い方は受け流すという使い方がよさそうだ。


鉄糸の方は、拘束はまあ簡単だった。

そのまま相手の動きを阻害するように巻き付ければ良いだけだからだ。


問題は移動の方だった。

移動のための手順自体は単純なのだが、内容を聞いた瞬間に正直無理だと思った。

1.移動先の物に向けて投げて、巻き付ける。

2.鉄糸を引っ張りながらジャンプすることで、身体を思いっ切り浮かび上がらせる。

3.巻き付けた鉄糸を外す。

4.筒につけられたボタンを押して糸を回収し、移動先の足場に着地。

2、4は問題ないが、1、3が非常に難しかった。

巻き付ける時の力加減や、外すときの鉄糸の動かし方にコツがあるのだが、何度も言うが滅茶苦茶難しかった。


少しでもミスをすると、鉄糸を外せなかったり、意図せず鉄糸が外れてしまったりした。

何度宙ぶら状態になったり、地面に激突したことか…



そうして訓練を続けて今では苦無と鉄糸のみを使っての模擬戦を行うまでになった。

今は苦無と鉄糸のみを使った、モルガナ姉ちゃんとの模擬戦闘の最中だ。

手持ちの苦無はお互いに6つ、鉄糸は筒を左腰につけている。


「ふっ!」

「なんの!」


姉ちゃんに向けて苦無を1つ投げるが、その直後に姉ちゃんも苦無を一つ投げる。

お互いに苦無が向かっている状態。


「よっ!」

「はっ!」


あたしは苦無を抜き、飛んできた苦無をはたき落した。

しかし、モルガナ姉ちゃんのほうが先に叩き落としていたようで、あたしがはたき落した頃にはモルガナ姉ちゃんは既に移動していた。

苦無も鉄糸も扱いは姉ちゃんの方が上手いので、あたしはどうしても後手に回ってしまう。


「どこに――上か!」

「正解っス!」


姉ちゃんは既にあたしの真上まで移動していて、その手には苦無が握られており、そのまま苦無を振り下ろしてくる。

あたしも咄嗟に右手で苦無を抜いて構え、上からの姉ちゃんの苦無による攻撃を受け流した。


(やばっ…咄嗟だったから体勢が崩れた!)


あたしが体勢を崩した隙に姉ちゃんは追撃の動きをしている。


(避けたらバランス崩して落ちる――なら!)


あたしは右手に持っていた苦無を離し、落ちてくる苦無は柄の部分を口で噛んで掴む。

そして空いた右手で苦無を握っている姉ちゃんの腕を掴む。


「うぇ!?」

「むぅん!!」


あたしは姉ちゃんの勢いを利用して、合気で後ろの方に姉ちゃんを投げる。

体勢が崩れていたせいで力はあまり入っていない。


「ほいっ!」


しかし、空中に放り出された姉ちゃんは、既に鉄糸を足場に向けて投げていた。

鉄糸で足場に移動するつもりのようだ。

あたしは口で加えていた苦無を右手で持ち直す。


「させないよ!」

「あまいっスよ、アーちゃん!」


あたしは鉄糸を逸らすために、姉ちゃんの鉄糸の向かっている先に苦無を投げる。

しかし姉ちゃんも同時に苦無を投げていた。

あたしの投げた苦無は姉ちゃんの鉄糸に当たる前に、姉ちゃんが投げた苦無に弾かれた。


(体勢崩れたせいで力が上手く入ってなか――)


そこであたしは自分に向かってきている苦無に気づいた。

先ほどあたしの苦無を落とすための苦無を投げた時、一緒にこちらに向けて投げていたようだ。


(こっちはまだ体勢直せてないのに、なんで姉ちゃんあんな体勢で投げられるんだ…!)


あたしはまだ体勢を立て直せていないのに、苦無は既に避けられない位置まで迫ってきている。

両手とも苦無は持っていない。

抜こうにも抜いている間に姉ちゃんの投げた苦無が当たってしまう。


(どうする…!)

苦無と鉄糸を貰いました。

鉄糸の扱いはなかなか苦労したようです。

苦無はともかく、鉄糸で移動とか原理がわからん...


★次話は05/10投稿予定です。

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