第八話 ―訓練記録05―
第八話目です。
今回はブラッドのおっちゃんとの戦闘訓練です。
ブラッドのおっちゃんによる武器を扱う訓練。
まず初めにさせられたのは武器を選ぶこと。
カイナート兄ちゃんの訓練である程度の身体の使い方が分かったので、それに合わせて武器を選ぶらしい。
しかしあたしは武器なんて持ったことはないから、何を基準に選べば良いのかわからなかった。
おっちゃんに聞いてみたら「そりゃおめぇ、勘だろ」と返ってきた。
要はとりあえず「振ってみてしっくりきたものを使ってみろ」ということらしい。
結果、選んだ物は長さ1mくらいの棍。
普通からしたら短いが、あたしの身長は145だから、あたしからしたらちょうど良い長さだ。
あと短剣。
おっちゃんから短剣も持っておけと言われたので、短剣も二本持つことにした。
人相手なら棍や素手で気絶させれば良いが、魔物を相手にする場合はトドメをさせるは物が必要だからという理由だ。
そうして武器を選んだあとは、棍の使い方、打ち込み方や受け方、受け流し方。
受け流した後のカウンターでの打ち返し方など。
基本的な扱い方と戦い方を教わった。
教わった後はしばらくは素振り。
毎日毎日、朝から日暮れまでおっちゃんからの指摘を受けながら。
おっちゃん普段は雑なのに、こういうことだけとても分かりやすかった。
ある日から問題なしと判断されたのか、急に模擬戦闘が始まった。
カイナート兄ちゃんとの訓練のおかげで死角や周りへの意識などは問題なかった。
兄ちゃんに感謝だね。
●
今はおっちゃんと模擬戦闘の訓練をしている。
おっちゃんが使っているのは逆刃の両剣。
棍の両端に逆に向いた刃のついたような武器だ。
「おらぁ!」
「ふぐっ…!」
おっちゃんの両剣による横薙ぎを棍で受け止める。
が、おっちゃんの力が強くそのまま吹き飛ばされる。
(衝撃も上手く逃がしたと思ったのに力だけで吹っ飛ばされた…!?)
カイナート兄ちゃんと違って、おっちゃんは力が非常に強かった。
上手く受け止めることができても、今みたいに力技で吹き飛ばされる。
(受け止めるんじゃなくて受け流さないとだめか…)
そう考えているうちにおっちゃんが接近している。
次は上からの切り下ろし――受け止めれば確実につぶれて終わりだ。
「ふっ――くっ…!」
上から迫る攻撃を棍で左に受け流し、おっちゃんの両剣はそのまま地面にぶつかる。
その衝撃でおっちゃんは少し体制を崩した。
(ここ!)
受け流した体勢から、棍を身体の後ろから回して棍を右に持ってくる。
そして体勢の崩れたおっちゃんに上から棍を振り下ろ――したところでおっちゃんが口角を上げる。
(誘われた…!!)
「そら!」
おっちゃんは両剣を振り上げ、あたしが振り下ろす棍がはじき返された。
そしておっちゃんはあたしの腕を掴み――
「そぉい!!!!」
「うおわぁぁぁ!!!!!」
あたしはぶん投げられた。
上下左右方向感覚がわからないまま地面に落ちることになったが、ギリギリのところで受け身を取ることができた。
すぐにでも体勢を整えたいが、おっちゃんにぶん投げられた衝撃で反応が遅れてしまう。
「おら、立て直しが遅ぇぞ」
なんとか体勢を整えた――と思った頃にはおっちゃんがあたしの首元に刃を突き付けていた。
「あれは無理でしょ…方向感覚なくなったんだけど」
今回の模擬戦闘は完全にあたしの負けで終わった。
(おっちゃんの誘いに乗っちゃったのが敗因だなぁ)
●
「おめぇは分かりやすいブラフにかかりすぎだ」
「うっ」
さっきの模擬戦闘でおっちゃんが体勢を崩したように見えたのは、あたしに攻撃させるためのブラフ。
油断して打ち込んできたところに、カウンターで返されたわけだ。
「それと、先のことも考えて動くようにしろ」
「先のこと?」
「ああ。自分がこう動いたら相手はどう動くか、そん時自分が次どんな動きをするか。
もし相手がこう動いたら、自分はどう動くべきかってのを常に考えんだよ」
「おっちゃんの言うことは分かるけど、言われてすぐできるものじゃないでしょ」
「だから訓練してるんじゃねぇか」
(つまり、繰り返しやって覚えろってことね…)
またひたすら模擬戦闘をすると考えただけで疲れてくるな…
とはいえこういう事は繰り返さないと身につかないことはカイナート兄ちゃんの訓練で分かっている。
(兄ちゃんにも散々組手やらされたしなぁ…)
「よし!おっちゃんもっかい!」
今はひたすら訓練するのみ。
そうして再度おっちゃんとの模擬戦闘に臨む。
パワーがあるってそれだけで強いですね。
真向から受け止めたらそのまま力で吹き飛ばされました。
これで壊れない武器もすごいけど怪我していないアーシスもすごいよね...
★次話は05/05投稿予定です。