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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第四章 氾濫編
73/103

第七十話 ―予兆―

第七十話目です。



 脅し――いや、良心で手伝ってくれたスモーカーのおじさんとカリナさんやそれを見ていっしょに手伝ってくれたハンター達のおかげで、時間をとられた割に早めに終わった。

 で、今はやることも終わってあたし達”修羅“用の天幕に戻ってきた。今は騎士達によってハンター達の所品を調査してるんだけど、まぁそこは騎士団の仕事だからあたし達は警戒こそするけど待機って感じ。


「って言うことがあったんだけど――姉ちゃんもおっちゃんも笑いすぎ……」


 と昼間あったことをおっちゃんと姉ちゃんに話していくと、次第に二人とも声を上げて笑いだす。

 この天幕は騎士やハンターの待機場所からは離れているから、今は仮面を外している。ガーナは「暇だから寝るわ」と言って、一足先に休んでいる。


「あたしは皆にあの不快感が向けられるのが嫌だっただけなんだか――」


 そう言いながら、姉ちゃんの表情が嬉々としたものに変わっていくのが見えた。

 この後の姉ちゃんの動きを予測したあたしはその場から飛び退き――


「アーちゃん自分らの事考えてくれて嬉しいっスよ~!!」

「――ふみゅっ!?」


 ――たかったけど無理だった。

 あたしがいくら避けようとしても何が何でも抱き着いてくるんだけど、この姉ちゃん。


「抱き着いてくるのやめてって、いつも言ってるでしょ……」

「だってアーちゃん逃げるんスもん!

 それにアーちゃんが可愛いのが悪いっス!!」


 意味がないと分かってるけどせめてもの抵抗で苦情を言うけど、そんな意味の分からない理論で一蹴される。あたしが姉ちゃんの動きに気付くと、姉ちゃんもあたしが気づいたことに気付いて、抱き着いてくる速度上げてくるんだよね。

 いつか絶対避ける。


「もういいや……っていうか、おっちゃんはいつまで笑ってんの!

 姉ちゃんはともかく、おっちゃんだったら問答無用で殴るでしょ!?」

「流石の俺もいきなり殴ったりしねぇよ!?」


 とか言ってるけど自覚ないんだね。

 前におっちゃんってどのくらいの殺気で気づくのかなって面白半分で、ほんの少しだけ殺気を向けて背後から襲い掛かって見たら、問答無用で殴り返されたもん。おっちゃんだったら絶対殴ってた。


「お前こそ初対面の相手を脅すとか馬鹿だろ」

「だからちょっと忠告しただけだって言ってるじゃん」

「相手が怯えてたら脅したようなもんだろうが馬鹿が!」

「なんだと脳筋め!」


 あたしとおっちゃんはそう言い合う。自分でもくだらないと思うけど、ここまできたらあたしも引いてやるもんか。

 最終的にはお互いにひかなくて――


「おう表出ろや、久しぶりにやるぞクソガキ!」

「いいよ、今日こそ一泡吹かせてやるこのクソオヤジ!」


 こういうときは模擬戦――もとい殴り合いに限る。勝った方の主張が正しい。いままで負け越しだけど今日こそ勝つ!

 あれ、あたしやっぱり毒されてる気がする……


「姉ちゃんちょっと離して」

「むぅ、しょうがないっスねぇ……」


 おっちゃんとの言い合いをしている間もずっと抱き着いている姉ちゃんに離してもらうように言うと、姉ちゃんもしぶしぶだけど離してくれた。少し寂しそうな顔をしたけど、今はおっちゃんとの殴り合いが優先だ。


『あっ……』


 ん?姉ちゃんなんか言っ――


「ぶべっ!?」「ふぎゅっ!?」


 姉ちゃんが何か言ったような気がしたと思った瞬間、頭にとてつもない衝撃を受けた。

 ぬぐぅぅ……この衝撃には覚えがある。チアーラさんの拳骨だ。


「何を騒いでいるのかしら――二人共、正座」

「「はい!」」


 そう言ってくるチアーラさんにあたしもおっちゃんも素直に正座する。

 今まで何度も見たことあるけど、笑顔なのに圧がすごい……黒いオーラが見える気がするよ……


「いつもくだらないことで騒がないようにと言っているわよね?」

「「はい、ごめんなさい……」」


 というわけで、今みたいに殴り合いで決めようとしてるところをチアーラさんに見つかるとこうやって拳骨で止められる。

 普段は優しいんだけど、あたし達が言い合ってたり訓練以外で殴り合いをしようとするとすごく怖いんだよね……こういう時のチアーラさんの言うことは絶対なんだよ……


「そんなに体力が有り余ってるなら、明日思う存分発散しなさい」


 あれ、いつもと違う、いつもだったら長々と説教されるのに。

 ――って


「明日?」

「ってことは――」

「氾濫開始の予兆が見られたわ、明日の日の出頃に始まるわよ。アーシスは初めてだから、そろそろあの子(カイナート)も戻って来るでしょうから、最終確認をするわよ」


 予め氾濫での自分の配置や役割は聞いていたけど、前日ということでもう一度確認するようだ。皆は何回も経験してるけど、あたしにとっては初めてだからチアーラさんも気を遣ってくれたみたい。

 それはそれとして、今日はお説教が長くならなくて良かっ――


「そうそう、お説教は最終確認の後にするわよ。良いわねアーシス、ブラッド?」

「「はい……」」


 やっぱりお説教はされるみたい。お説教で最終確認の内容がトばないかちょっと心配だなぁ……

 あ、寝てるところ悪いけどガーナも起こさないと、氾濫中もあたしと一緒に行動するわけだし。

ブラッド相手に口が悪くなるアーシスでした。

なお他のメンバーには殆ど口が悪くことは無いんだとか。


★次話は03/15投稿予定です。

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