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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第四章 氾濫編
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第六十八話 ―手伝ってくれるよね?―

第六十八話目です。


前話でカリナという女性を疑ってかかったアーシスですが、はたしてアーシスに対する返答は?

 さて、目の前の二人はあたしになんて返答してくるのかな。


「っご――ごめんなさいっ!!!」

「「……は?」」


 あたしが短剣を向けているカリナは、唐突に土下座をしながらそう謝ってきた。思ってもない行動にあたしだけじゃなく、ガーナまで呆けたような声を出していた。

 って言うかスモーカーのおじさんも、彼女が何をしたのか分かったのか呆れたように頭を抱えてる。


「……とりあえず、話を聞くよ」


 カリナさんに向けた短剣を腰の鞘に戻しながら、あたしはそう言った。

 彼女の行動とスモーカーのおじさんの反応でで毒気を抜かれたあたしは、一旦短剣を引っ込めて話を聞くことにした。


「――というわけです。本当にごめんなさい……」


 曰く、彼女の魔法は解析魔法であっているらしく、強そうな人を見ると好奇心が抑えられずに解析魔法を使ってしまうらしい。

 んなアホな…と思いたいけど、二人の様子を見た感じ嘘を言っているとも思えない――敵意に近い物であっただけで、完全な敵意ではなかったし。

 いや、でもなぁ…


「彼女たちは大丈夫よ”般若“」


 カリナさん達のことをどうしようか考えていると、後ろからそんな言葉がかけられた。

 この声はチアーラさん?


「む……”絢華様“がそう言うなら、分かった。そういうわけで、理由は分かったからもう良いよ」


 あたしにだって敵意や殺意なんかは向けられればわかるけど隠されてしまっては分からないんだけど、”修羅“の皆――特にチアーラさんは簡単に見抜ける。

 だから、チアーラさんが言うなら信用できるし、安心できる。


 あたしが二人にそう伝えると、スモーカーのおじさんは安心したように息を吐き、カリナさんの表情も明るいものに変わった。

 その反応を見てあたしも、本気で悪いと思ってたんだなぁって分かる


「解決したようで良かったわ」

「んじゃ、あたし達は行くね」


 そう言ってその場を後に――


「その前に、いいか?」

「…なに?」


 仕様と思ったんだけど、スモーカーのおじさんに呼び止められた。

 別にわざわざ話すような事ないと思うんだけどなぁ。


「お前――いや、お前たちは何者だ?

この砦から出てきたのを見るとこの国の関係者だろうが、騎士には見えない。それに俺たちの名前も――」


 あぁ、そういうことね。

 正体ね……別に隠さないといけないわけじゃないんだけど、わざわざ自分から言うのもなぁ。

 はぁ……なんかもう、嫌とかどうとかじゃなくて単純に面倒になってきた。

 こんな(子供みたいな)見た目のあたしよりチアーラさんが言った方がこの二人も納得しやすいだろうに、何も言わずに笑顔であたしの事見てるしこれ絶対あたしの反応見て楽しんでるよね?

 どうせ噂くらいは知ってるだろうし、もう適当でいいや。


「何者……黒衣に仮面、噂くらいには聞いたことがあるんじゃないの?」

「実在してたのか…」


 あたしがそう言うと、スモーカーのおじさんは驚いたような表情を浮かべた。

 呟いた内容を聞く感じ、どうやら噂くらいには知っているみたいだけど、そんな驚くような――いや、噂だと思ってたのが実在するって言われたら、そりゃ驚くか。


「で、あたし達はハンター達の情報を頭に入れているから、二人の名前を知っているだけ」

「あぁ、なるほどな…」


 このおじさんもそこまで言われて理解したらしい。納得はしてないみたいだけど。

 もう良いだろうし、あたしも自分の作業に――そうだ、ちょっと良い事思いついた。


「ねぇ”絢華様“この人解析魔法使えるみたいだし、さっき報告した()()見てもらえないかな?」

「アレ?――そういうことね、そうね良い考えね」

「あ、でも”エミリア神聖法国“に話を通さなきゃいけないよね」

「そこはガレリアに何とかさせるわよ」


 アレっていうのは、あたしがハンターから回収した薬のことだ。

 ラプラド王国には研究とか薬の分析とかをする研究部があるんだけど、そこには解析魔法を使える人がいない――そもそも解析魔法は希少魔法だから使える人が全然いない。

 各国で薬を使った者の遺体を調べているらしいんだけど、今のとこ何も分かってないらしいし、未知の薬の分析には時間がかかるんだけど、解析魔法が使えれば薬の効果が分かるかもしれないということだ。


「あ、あの、なんの話ですか…?」


 あたしとチアーラさんが相談していると、自分の話をしていることを察したのかカリナさんがそう尋ねてきた。


「ちょっとお姉さんにお願いしたいことがあってね」

「お願いしたいこと…?」

「うん。でもまだ決まったわけじゃないから」

「そうね、おそらく氾濫が終わってからになるかしら。今は詳細が決まっていないから話すことはできないけれど、決まったら正式に依頼をさせてもらうことになると思うわ」

「わ、わかりました……」


 あたしとチアーラさんにそう言われて、カリナさんも隣にいるスモーカーのおじさんも困惑したような表情を浮かべてるけど、詳細聞かされずに依頼するかもって言われても困るよね。

 とはいえ、これは金等級(ゴールドランク)ハンターのカリナさんへの依頼をするってことになるから、ハンター協会を管理している”エミリア神聖法国“にも確認をとらないといけない。だから今は何か依頼をするかもね、ってことを伝えることしかできないんだよね。


「あなた達に伝えるのは決まってからとして、私はこの件をガレリアに伝えてくるわね」


 未だ二人は困惑してるけど、早いとこガレリア騎士団長と”エミリア神聖法国“に了承を得る必要があるので、チアーラさんはこの場を後にして砦の中に入っていった。

 依頼を受けるかどうかは彼女次第だけど、依頼の場にあたしも立ち会えばカリナさんも快く受けてくれると思う――まぁ、脅し同然だけど。

 とにかく、この二人の用も他にないみたいだし、今度こそもう良いよね?


「じゃあ、あたしも作業に戻ろうかな」


 いきなりのことで呆けている二人のことは放って作業に戻ろう。結構時間取られちゃったから急がないと。

 ん、待てよ?そもそも時間取られたのってあのアランとゴルのせいもあるけど、この二人に引き留められたせいでもあるよね……?


「ねぇ、あたしもまだ仕事があるんだけど結構時間とられちゃって――」


 これからあたしが言おうとしてることを察したのかな、二人とも何とも言えない表情になってる。でもあたしが気にすることでもないよね?


「手伝ってくれるよね?」

「お、おう……」「う、うん……」

「ありがと!」


 自分のことながら脅しと変わらないんだけど、この二人に時間をとられたのも事実だからね。

 二人とも了承してるし、手伝ってもらうことにしよう。二人の表情は嫌そうに見えるけど気のせいだよね、二人とも良心で手伝ってくれるんだもんね!


 あれ、あたしなんか皆に毒されてない……?

 ガーナも目を逸らしてるけど……いや、気のせいだよね。気のせいに違いない!

疑ってかかったのと反転、さらっと脅しにかかるアーシス。

そして最終的にお仕事を善意(ここ大事)で手伝ってもらったアーシスでした。


★次話は03/05投稿予定です。

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