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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第四章 氾濫編
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第六十五話 ―報告にきたよ―

第六十五話目です。


前話の続き、諸々の報告回です。

 対氾濫用の砦、その一室。

 あたしの目の前にはブラッドのおっちゃんに負けず劣らず筋骨隆々、厳つい顔の男がいる。ガレリア――あたしが用があった、この国ラプラド王国騎士団の団長だ。


「おう、任命式で顔を見たがこうして顔を合わせるのは久しぶりだな”般若“の嬢ちゃん。

今はハンターの待機所に物資を運んでいるはずだが、何かあったか?」

「緊急の報告があってね」


 ガレリア騎士団長とは”般若“の名を貰う前から顔見知りだ。訓練場に通うようになって少しした頃だったかな。騎士達の訓練のために訓練場に来た時に顔を合わせて以来、時間があるときには模擬戦闘をしたりしていた。流石は騎士団長と言うべきかチアーラさんや皆ほどではないけど、今のところあたしは一度も勝ててないいんだよなぁ――しかも”修羅“にはいない「長剣」を使う人だからなかなか良い訓練になったのを覚えてる。


「緊急の報告、ですか…?」


 そう声をかけてきたのは、ガレリア騎士団長のそばに控えていた細身で眼鏡をかけた端整な顔立ちの男だ。彼は騎士団長の補佐を担う”ネス“という男だ。

 最低限の戦闘はできると思うけど、どちらかというとガレリア騎士団長だけで対処ができない書類仕事を手伝ったり、連絡をしたりっていう印象が強い。


「実は――」


 あたしはガレリア騎士団長と補佐であるネスさんに二人のハンターと、そのハンターが持っていた注射器についての話をした。

 この二人は騎士団をまとめる立場だから、例の薬のことも知っている。だからこそか、あたしの話を聞いていくうちにその深刻さが分かるようで、その表情には緊張がうかがえる。


「――ってことで”絢華様“に伝えてある。他の皆にも”絢華様“から連絡がいってるんじゃないかな」

「わかった、手の空いている奴らにハンターの所持品を調べさせる。

多少騒ぎは起こるだろうが毒物を所持しているハンターが見つかったってところで良いだろう、ネス」

「承知いたしました」


 一通り報告が終わるとネスさんはあたしが持っているのと同じ、通信用の魔道具を取り出し連絡を始めた。

 通信用の魔道具はあたし達”修羅“以外だと、騎士団長やその補佐官、宰相に国王陛下であるローベルト様や王妃殿下であるクラウディア様といった、重要な立場にいる人達が持っている。


「現物はあるか?」

「うん、さっきも言った通り使われてないから回収してるよ」

「それならいい」


 あたしが回収した注射器を出すと、ガレリア騎士団長はネスさんに目配せをする。ネスさんもそれに頷いて答えると、部屋の扉がノックされた。どうやらネスさんが手の空いてる人にここに人を寄越すように連絡したんだろう。


「入れ」

「失礼いたします!」


 部屋に入ってきた騎士は綿が入った布が敷き詰められた木箱を持っているから、それに入れろってことかな。軽く蹴り飛ばしても壊れなかったし簡単に壊れるような物じゃないとは思ってたけど……うん、これなら壊れる心配はなさそう。


「これって研究部に持っていくんだよね」

「ああ、そのつもりだ」


 こういう未知の薬を調べるのは、国の研究部ってところなんだけど……なんか引っかかる。別に薬がどうとか、研究部がどうとかじゃない。なんか忘れてる気がするような……?

 気のせいかな……。


「では、失礼いたします!」

「おう」


 と、考えごとをしている間に諸々の話が終わったらしい。

 あたし達に挨拶をして、注射器を入れた箱を持った騎士はこの部屋を後にした。


「そういや、嬢ちゃんに絡んだっていう二人のハンター(馬鹿)はどうした?」

「またま居合わせた”スモーカー“っていう灰色の髪のおじさんハンターに、騎士に引き渡すように言ってあるよ」

「そうか、そいつらの取り調べは氾濫が終わってからになりそうだな」

「氾濫前に色々やる事あるもんね」


 ハンター二人に対して、あたしに絡んだ事とあの注射器を持っていたことについての取り調べがあるんだけど、ハンター達の所持品の調査に氾濫に対しての準備、それなりにやることがあるからガレリア騎士団長の言うように取り調べは氾濫が終わった後になる。

 ああ、さっき気になってたのが何か分かった。取り調べだ。あたしはガレリア騎士団長に思いついたことを伝える。


「二人の取り調べなんだけど他のハンターにも話を聞くと思うんだけど……特に”カリナ“ってハンターに話を聞くと良いかも」

「カリナってーと確か……」

「ユーグレティア共和国支部所属の金等級(ゴールドランク)ハンターですね」


 ”ユーグレティア共和国“支部のハンター協会所属、それはあたしに絡んできたアランとゴルの所属している支部でもある。とはいえ同じ支部の所属ってだけなら、他のハンターもいるんだけど、この女性は他のハンターとは少し違うところがある。


「あと、ユーグレティア共和国支部の元職員だったはずだからね」

「なるほど、こいつぁ話を聞かにゃならねぇな」

「でしょ?」


 あたしが二人に話を聞くことをすすめた理由を話すと、ガレリア騎士団長も納得したように笑みを浮かべた。まあ守秘義務もあるだろうから話せないこともあるだろうけど、そこは偉い人が”エミリア神聖法国“に話を通すでしょ――主にやり取りするのはガレリア騎士団長だし。


「あたしからの報告は以上かな」

「了解だ。ハンターの所持品調査とその二人のハンターの取り調べは任せておけ」

「何か手伝う事ある?」

「いや、大丈夫だ。嬢ちゃんらは氾濫に備えて休んどいてくれ」

「ん、分かった。皆にも伝えておくよ」


 ”修羅“は国王直属の部隊ではあるんだけど、この氾濫の対処に限ってはガレリア騎士団長の指揮下に入る。そうじゃないと指示がバラバラになって混乱が生じるんだって。

 そういうわけで、手が必要なら手伝いたいと思ったんだけど、必要なかったみたい。ガレリア騎士団長の実力はあたしも――それこそ”修羅“の皆も――分かってるし任せても大丈夫だと思う。


 色々報告も終わったし、邪魔になっても悪いからそろそろお暇しようかな。

諸々報告の際にさらっと二人のハンターの名前や情報を出すアーシスでした。


★次話は02/20投稿予定です。

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