第六話 ―訓練記録03―
第六話目です。
カイナート兄ちゃんによる戦闘訓練の開始です。
次の日、今日は昨日やった木の実の訓練をしながら身体の使い方と素手での戦い方をカイナート兄ちゃんから教えてもらう。
因みにカイナート兄ちゃんは武器の扱いが苦手らしく、武器の使い方はブラッドのおっちゃんに教えてもらうことになっている。
初めは木の実の訓練はなしで、基本的なことを教えてもらった。
まず殴ったり蹴ったりするときの力の乗せ方や最低限の動きでの回避の方法。
無駄な動きをすれば、それだけ次の動作が遅れたり体勢を崩しやすくなるので、それをできるだけ無くすためだ。
次は相手を投げたり組み付いたりする、柔術という体術。
柔術は特に組付きはその気になれば相手の関節を外せるらしい。
最後に合気という、力や身体の大きさ関係なく、相手を制する体術。
この体術は身体の小さいあたしにとっては知っていて損はない。
しばらくその動きを反復練習し、まずは身体と頭で覚える。
ある程度身についたころから、木の実の訓練も再開となった。
今もカイナート兄ちゃんが木の実を投げたところだった。
「数は8、全部掴んだ」
「正解。うん、動きに無駄がなくなってきたね」
この訓練のおかげで木の実を掴むのが楽になってきた。
兄ちゃんも言っている通り無駄な動きが減り、次の木の実を掴む時の動きが早くなってきている。
これによって余裕も生まれ、視野も広く保てていると思う。
「そろそろ組手を始めようか」
「組手?」
「うん、簡単に言えば僕相手に、実践形式で訓練てもらう。
もちろん僕も攻撃や受け流しもするし、その最中に木の実も投げる」
「わかった」
●
反復練習から組手に変わった途端に、簡単に対処できなくなった。
意識しなきゃいけないことが一気に複雑になった。
組手に集中しすぎると、木の実が投げられたことにも気づけない。
「一つのことに意識を集中しすぎない!」
かといって、木の実を投げるタイミングを気にしすぎると、兄ちゃんの動きをとらえきれない。
「木の実は視界の端に収めるだけ!」
木の実の数を数えるところまでできる時もあるが、兄ちゃんの攻撃を捌くのに手一杯になる。
もし、無視して掴み取ろうとした瞬間に兄ちゃんの攻撃が飛んでくる。
「戦っている相手から意識を外さない!」
そんな風にダメ出しや攻撃を受けつつ、休む暇もなく組手をつづけた。
●
なんとか兄ちゃんの相手をしながら、投げられた木の実を数えるところまでは出来るようになってきたのだが、木の実を掴むことができていない。
(今の休憩のうちにどうすれば良いか考えよう)
まず、あたしは兄ちゃんの相手と木の実を掴むこと、その2つの行動をやらなければならない。
考えてみると、兄ちゃんもあたしの相手と木の実を投げることの2つの行動をやっているはず。
(兄ちゃんはどっちを優先させてるんだ…?)
よくよく思い返してみると、兄ちゃんはどちらかを優先していたのではなかった。
木の実を投げる時、攻撃や回避などの行動と同時あるいは流れ作業のようにやっていた
しかもあたしが見た限り、それぞれの動きの邪魔をしないようにだ。
(どっちかを優先じゃなくて同時か…)
そう考えると今までのやり方を続けても無駄だ。
兄ちゃんがやっているように同時か、あるい流れ作業のようにやる必要がある。
(そんな事できるのか…?)
「そろそろ再開するよ」
「わかった」
休憩は終わりのようで、また組手が再開される。
どうやって同時あるいは流れ作業で行えば良いかまでは考えられなかった。
(とりあえず兄ちゃんの動きを見ながら考えるしかない…)
●
「ハッ!」
「――ふっ」
カイナート兄ちゃんに向けて拳と蹴りを連続で叩きこむが、ことごとく受け流される。
数発打ち込んだところで、屈むと同時に足払いをかける。
「よっ」
が、軽くジャンプして避けられる。
それと同時に空中で体勢と整えたカイナート兄ちゃんが横なぎの蹴りを向けてくる。
「なんで空中でそんな体勢整えられんの!」
「そりゃ、鍛えているからね」
身体を後ろに反らして避ける。
そして手を地面について身体を反らした勢いで下から兄ちゃんの顎に向けて蹴り上げる。
「そぉい!」
「おっと」
――が、これも簡単に避けられる。
と同時に兄ちゃんは木の実を上に放り投げた。
「ほらっ」
「このタイミングか!」
今のあたしは逆立ちしている状態。
兄ちゃんは既にこちらに攻撃しようと向かってきている。
(まずは体勢を整えないとまずい…!)
柔術と合気を教えてもらってまずは体術を習得しました。
そして相手の動きから自分の動きを直すアーシス。
観察眼って結構大事なので、こういう訓練の時から養うことは大事ですね。
というか戦闘しながら木の実も気にしなきゃいけないとか無理じゃね...?
★次話は04/25投稿予定です。