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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第三章 初任務編
52/103

第五十話 ―修羅の時間・森のボロ小屋―

第五十話目です。


今回はチアーラ視点となります。

 私はロザリアと共に、ラプラド王国の南方に位置する森に来ていた。

 森の中には一つだけ、ボロ小屋があり、私たちは少し離れた場所からその小屋の様子を伺っている。

その小屋の中では男たちが酒を飲みながら騒いでいる。


「毎回のことですが、殆どの輩がこの小屋を拠点にしていますわね」

「そのために建てた小屋なんだから、その役目をはたしてもらわないと困るわよ」


 国外から入り込んでくる盗賊などは盗んだ物の保管や逃走のために、必ず国外に拠点を構える。

 本来ならその拠点を探すのは骨が折れるのだけど、ラプラド王国は殆どの場合探す手間はかからない。

 何故ならこの小屋はこういう輩を誘い入れるために作ったんだから。


「これを考えた王国の工作部隊は流石としか言えませんわね」

「そうね、私たちでもここまでは思いつかなかったものね」


 この小屋を建てることを提案して作ったのは、王国の工作部隊なのよね。

 私たち"修羅"は良くも悪くも戦力が諜報能力と戦力重視だもの。

 並みよりは絡め手もできるけれど、専門の工作部隊には及ばないのよね。


「そろそろ良いかしら」

「そうですわね」


 そろそろ他の子たちも配置についた頃でしょうし、行動開始と行きましょうか。

 私は首から下げている通信用の魔道具を取り出し、起動した。


「準備は良いかしら?」


 通信用の魔道具を通して、倉庫に向かった"般若(アーシス)"と"羅刹(ブラッド)"、商店街地下に向かった"白狐(モルガナ)"と"絶狐(カイナート)"にそう聞くと、4人とも問題ないと返してくる。

 それじゃあ、始めましょうか。


「さあ、ここからは修羅の時間よ。

不届き者に思い知らせましょう、思う存分――舞いなさい」


 そう声をかけると、4人とも《了解》と返してくる。

 それを確認した私は通信用の魔道具を切り、ボロ小屋を再度視界に収める。

 あの子たちも行動を開始した頃でしょうし、私たちも始めましょうか。


「"狐筆頭"は念のため隠密魔法で姿を隠して周囲を警戒しておきなさい」

「承知いたしましたわ。"絢華様"ご武運を」


 周りの警戒は"狐筆頭(ロザリア)"に任せて、私は男たちが騒いでいるボロ小屋に近づいていく。

 すると、ちょうど良くひとりの男が小屋の扉を開けて出てくる――酔い覚ましに出てきたのかしら?

 一瞬目が合ってしまった。


「あ?なんだおま――」

「【雷電・纏い】――【感電】」

「――ぎゃっ!?」


 騒がれてもあまり問題はないのだけれど、それはそれで少し面倒なのよね。

 私は一瞬だけ雷を纏って男に近づくと同時に男の腹部に手を添えて軽い電気を流し、男を気絶させる。

 気絶させる際に少し声が出てしまったようで、残りの男が6人ぞろぞろと小屋から出てくる。


「お前らアレを使うからそれまで足止めしておけ!」

「変な仮面を付けちゃいるが女ひとりだ、アレを使うまでもねぇだろ」


 ここにいるのは情報によると8人、一人は気絶させたから残りのひとりはまだ小屋の中にいるようね。

 ただ、小屋に残ったひとりが「アレを使う」と妙な事を言っていたし、この6人にあまり時間をかけない方が良いかもしれないわね。

 そんなことを考えていると、男たちは私の周りを囲んでいた。


「人数がいるならあれでいいかしらね――【放電】」

「何言ってやがん――」


 私は自分の周囲に雷を発生させる――少し前に"白蛇(ガーナ)"の【魔力感知・視】の確認のために部屋中に雷を放出したのと同じものだ。

 と言ってもあの時とは違って、人間が気絶する程の雷だけれど。


「ぎゃぁぁ!?」「ぐぁぁ!?」


 私が周囲に雷を放出させると、私を囲んでいた男たちは感電して一気に気絶していく。

 対集団戦、それも囲まれている状態だとやっぱりこれが一番楽なのよね、人間を気絶させる程度の威力なら魔力の消費も少ないから。

 私の周囲には気絶した男たちが倒れていて、"狐筆頭(ロザリア)"にまた『まるで人間スタンガン――いえ、触れなくても良い分もっと凶悪ですわね』なんて言われてしまいそうだわ。

 "スタンガン"の意味は良く分からないのだけれど、あんまり褒められている気はしないのよね。


「こんなこと考えている場合じゃないわね。

残りのひとりも何かする前に気絶させないといけないわね」


 私はボロ小屋に残ったひとりを捕らようと、小屋に近づいていく。

 この男たちが「アレを使う」と言っていたのを聞いて、少し嫌な予感がするのよね……。


――ガァァァァァァ!!!!!


 ボロ小屋の扉を開けて中に入ろうとするとそんな声が聞こえてきた――私が入ろうとしているボロ小屋の裏手から。

 これは人間の声ではないわね、魔物の声――魔獅子(まじし)の声に近いように思うのだけど、何故こんなところに?

 こんなところに獅子はいないはずなのだけれど……。


「とにかく、あの男が魔獅子の餌食になる前に向かわないと――」


――ガァァァ!!!


「なっ!?」


 私が男が魔獅子に殺される前に小屋の中に入ろうとすると、ボロ小屋の壁が破られた。

 私の目の前には盗賊の残りのひとりが立っており、男のすぐそばには自分の目を疑うような姿をした魔物がこちらを見ていた。


「まさか……」


 その魔物の姿は通常存在しないはずの姿をしていた。

 上半身は獅子の身体、下半身は(わし)の身体、尻尾では蛇が顔を覗かせ、獅子の頭と尻尾の蛇がこちらを睨みつけていた。

【人間スタンガン】チアーラの前に現れたのは、とある魔物でした。

通常存在しないはず、と言っていますが一体どういうことなのか…?


★次話は12/05投稿予定です。

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