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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第一章 守るための力
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第五話 ―訓練記録02―

第五話目です。

引き続き訓練のお話になります。

訓練場には武器が乗せられた台と二人の男の姿があった。

一人はカイナート兄ちゃんで、長身で細身の身体、目にかかるくらいの黒髪で優そうな顔つきをしている。

話し方も丁寧で、呼び方でわかる通りあたしにとっては兄ちゃんみたいなものかな。

もう一人はブラッドといって、カイナート兄ちゃんよりもさらに背が高く、筋骨隆々のムキムキな男。

話し方は雑に聞こえるけれど実はめちゃくちゃ良い人。

感覚的には近所のおっちゃんみたいな感じだ。


「それで別の訓練って?」

「戦闘の訓練よ。

 今までの訓練も続けてもらうけどね」


まあ、武器並べられてる時点でそうだよね。

その訓練を始める準備をしているところにこの二人がいると言うことは――


「カイナート兄ちゃんとブラッドのおっちゃんがその訓練をつけてくれるってこと?」

「うん、モルガナはそろそろ仕事で家を空けるけど、変わりに僕らはしばらく仕事が無いからね」

「見たところおめぇもある程度身体が出来上がったみてぇだからな。

 そろそろ戦闘訓練初めても問題ねぇだろうってことだ」


あたしが聞くと二人はうなずきながらがそう答えた。


「ただ、おめぇの場合、ちょっと問題が一つあるんだよ」

「問題?」


ブラッドから言われた問題だが、正直検討がつかない。

身体が小さいとかだろうか、でもそれならそもそも訓練をするという話にはならないはず。


「アーシスちゃん左目見えてないでしょ?

片目だけだと距離感も違ううえに体勢も崩しやすいし、何より視野も必然的に狭くなるからね。」

「つまりおめぇはまず、体幹を鍛える必要がある。

 誰でも必要なことだが、おめぇの場合は猶更だ。」


日常生活とか走ったり筋トレしたりするときはもう慣れたので問題はないのだが、戦闘訓練となるとそれらの行動に比べて片目という弊害が大きいと言うことだ。

それをできるだけ軽減するために鍛える必要があるのだろう。


「じゃあこれからしばらくは体幹トレーニングをするよ。

 内容は――」



体幹トレーニングはそれほどキツくはなかった。

いや楽というわけではないけれど、体づくりの訓練よりはかなり楽だった。

何より、筋肉がついていたのもあってかポーションが必要ないのが良かった。


「うん。体幹も強くなってきたし次の訓練に移ろうか。

 分かってると思うけど、体幹も含めて今までの訓練は空いてる時間で続けるようにね」

「わかった」


せっかく諸々身についてきたのに、訓練をやめて成果がなくなっても嫌だし。

というかもはや、訓練をしないと落ち着かない。


「訓練と言ってもそんなに厳しいことはしないよ。」

「それで、何を――っ!」


訓練の内容を聞こうとした瞬間、カイナート兄ちゃんが小さい何かを投げてくる。

放り投げただけのようで、早くはないが複数個飛んでくる。


「うおっ」


パシパシッパシッ――コツン


「木の実…?」


投げられたのは4個の木の実。

3つまではつかみとったが、最後の1つは取り逃して頭に軽くぶつかった。


「僕が投げた木の実は何個?」

「え、4個…?」

「正解。掴み取れたのは?」

「3個」

「先の3個とるのに少し重心がブレてたよ。

 それが無ければ4個目も取れてたはずだよ」


いきなりなんなんだ…

もしかしてこれが訓練なのだろうか?


「これから僕は身体の使い方や素手での戦い方を教えるけど、今やった事も同時にやってもらう。

 投げるときは合図は出さない。地面に木の実が落ちた時点で失敗だよ」

「ねえ、それ難しくない…?」

「うん、だから気を抜かないようにね?」


そんな良い笑顔で返されたら何も言えないんだけど。

常に複数のことに意識向けてやらないといけないわけで――

めちゃくちゃ精神的に疲れそう…考えただけでも疲れてきた…


「とりあえず今日は、今やった木の実の訓練だけをやろうか。

 身体の使い方は明日から教えるから、今日中に慣れてね?」

「えっ…」


驚いている暇もなく、再びカイナート兄ちゃんから木の実が投げられる。

今回はさっきよりも数が多い。


(右に3つ、正面に一つ、左に2つ――)


飛んできた木の実は合計6つだ。

右、右、正面、右の順番に先に飛んできた物から掴み取る。


(あとは左の2つ――見失った…!)


右と正面の木の実をとっている間に左に飛んで行った木の実が死角に入って見失ってしまった。

左目が見えない分、左側にある物は簡単に見失ってしまう。

結果――


「数は6つ、つかめたのは4つ。左に飛んでったのは見失って取れなかった…」

「数は正解。今ので分かったと思うけど、アーシスちゃんは左側の視界が必然的に狭くなる。

物理的に視界が狭いのは仕方無いけど、視野は広く保つこと」

「わかった」

「じゃあ続けていくよ」


その後は休憩なしにひたすら、数えて掴んで、数えて掴んでを繰り返した。


カイナート兄ちゃんとブラッドのおっちゃんの登場です。

基本笑顔の優しそうな兄ちゃんですが、訓練となると笑顔で厳しくしてきます。

肉体的なダメージがない分まだマシ...?


次話は04/20投稿予定です。

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